第34話 模擬試合
翌日である。俺は恥ずかしそうにしているミコトからのキスでスッキリと目が覚めた。
「おはよう、ミコト」
「○○○、おはようございます」
顔を真っ赤にして俺の名前を言うミコト。そう言えば昨日の夜にメイドさんには朝まで部屋に入らないようにお願いしていたな。今はミコトと二人きりか…… 朝から元気になった俺のマグナムが押し倒せと主張してくるが、何とか理性で制御する。
『ハアハア、く、来るかしら? 来るわよね? 私ったら昨夜はあんなに乱れてしまったけど、はしたない女だと思われたかしら? でも、でも、とっても良かったんだもん…… 朝から欲しいなんて言葉に出しては言えないけど……』
げっ、限界だぁーっ! 俺の理性は何処かに飛んでいった。毎回、気づいてたけど、ナビゲーターの奴、俺に聞こえるようにミコトの妄想を垂れ流してやがるな。
頭の片隅でそう思いながらも朝から二回戦もやってしまった…… 反省。
すっかり冷めてしまった朝食を食べながら俺はミコトの予定を聞いた。既にメイドさんも部屋に居る。
「オッさん、彼女たちのバイクを作って貰えますか? それで講習を始めたいと思います」
「分かった。それぞれの希望を聞いて出すようにするよ。それと、子供たちにポケバイを出してやろうかと思うんだけど、どうかな?」
もちろん、安全を考慮してポケバイは最高時速十五キロしか出ないようにするつもりだ。ヘルメット、各種プロテクターもちゃんと作る。
「まあ、それは良いですね! 子供たちも喜びます!」
ミコトも賛成してくれたので、それも作る事にした。朝食を食べ終えた俺たちは庭に出た。すっかり教習所のようなコースが出来てしまった庭は土魔法が得意な使用人さんたちを駆使して、ミコトの指導によって作られたそうだ。
今日はその隣に俺の言う通りに平坦なコースを作って貰った。コースの両端はクッション材を作って並べた。こっちは子供たち用のコースだ。
今日はユウとレンもお勉強を休みにして来て貰っている。
先ずは奥様方のバイクを希望を聞いて出していく。皆様、アメリカンが良いとの事で、俺が
何故か? アユミちゃん、キョウカちゃん、トオルくんまで居て、バイクカタログを見ている……
ま、まあ良いか、ここは日本じゃないしな。
みんなが決めたバイクを作り、次は子供たちの決めたポケバイを出す。バイクの方はミコトに任せて、俺は子供たちを見る。ショウくんとサクラちゃんが助っ人として来てくれた。各種プロテクターを着けさせて、取りあえず身体能力の高いユウに教えて乗らせてみた。
おお! さすが我が子だ。直ぐにバランスを取ってコースを軽快に走り出した。っても時速十五キロだけどね。
次々と子供たちに教えていき、コースを二周したら交代だ。みんなの笑顔が弾けていた。
奥様方の方をチラッと見ると、アチラは鬼教官が顕現していたのでそれ以上は見ないようにする……
午前中いっぱいを使って子供たちを見てやり、ポケバイはそれぞれにプレゼントした。ちゃんと自分で管理するんだぞと伝えたらみんながハイと返事をしてくれる。
ユウとレンのは俺のアイテムボックスに入れておく。
そして、昼食を食べ終え遂にこの時がやって来た。
「オッサン殿、カイリ殿、よろしく頼む」
そう、王配殿下との模擬試合だ。面倒だからモアル様と名前呼びしよう。
「モアル様、どちらと先に対戦しますか?」
俺がそう聞くと、モアル様は
「先ずは我が息子、メドシとカイリ殿との試合を見たいな」
そんな事を言い出した。それを聞いてなかったのだろう。王太子殿下のメドシ様が驚いて言う。
「父上、そのような話は聞いておりませんがっ!?」
「今、言っただろう」
あ、モアル様は人の話を聞かない人だ…… メドシ様、諦めましょう。
「僕はいいっすよ」
さすがカイリくんだ。
「うむ、メドシよ。カイリ殿もああ言っておる。ここは胸を借りるつもりでお相手していただくのだ」
ハア〜と一つため息を吐いてメドシ様も気持ちを切り替えたようだ。
「分かりました、父上。カイリ殿、よろしくお願いします。木剣で良いですか?」
「いや、真剣にするっす。良いですよね、王配様?」
カイリくーん、王配殿下だよ。それか名前呼びでモアル様だよ、王配様って…… まあ、良いか。
「うむ、もちろんだとも。カイリ殿はその腰に帯びている剣で良いのかな?」
「はい、コレでいいっす」
カイリくんの返事にメドシ様が心配そうに言う。
「ですが、私の剣は宝剣ですよ、本当に大丈夫ですか、カイリ殿?」
「大丈夫っす。王太子様の剣の腕は分かったっす」
油断はしてない。本当に分かった様子でカイリくんはそう返事をした。その返事にメドシ様も少しだけ気分を害されたようだ。
「後で剣の質で負けたなんて言わないで下さいね」
そう言って腰の剣を抜いて構えるメドシ様。カイリくんも剣を抜いた。
「オッサン殿、始まりの合図を頼めるか?」
モアル様に言われたので、俺は素直に頷いた。
「分かりました。双方、準備は良いか? 良いな、それでは…… 始め!!」
俺の言葉と同時にメドシ様が瞬速でカイリくんの眼前に迫り剣を振った。が、既にカイリくんはそこには居ない。カイリくんはメドシ様の左横に移動している。そのまま剣を振ればカイリくんの勝ちだが、そうはせずにメドシ様に声をかけた。
「踏込みはいいっす。でも剣を振る速さが足りてないっすね」
横から聞こえたカイリくんの声の方向に剣を振るメドシ様。だが、またもやカイリくんにはその剣はかすりもしない。
「聞こえてから動いているのじゃダメっす。気配を読み取る必要があるっす」
今度は真後ろから声をかけるカイリくん。そのカイリくんの動きが見えてるのは俺と…… モアル様も見えてるようだ。やっぱりこの人は強いようだな。
「クッ! ならばコレならどうだっ!!」
そう言ってメドシ様は剣から斬撃を飛ばした。おっ、俺の風斬りに似てるけど、練度が低いな。アレじゃ、俺の風斬りを見切るカイリくんには当たらない。
案の定、カイリくんは尽く躱してみせる。
「なっ!? 私の斬風撃が当たらないだとっ!?」
メドシ様は驚愕しているけど、どちらかと言うと宝剣の力に頼りすぎてる感じがあるな。アレじゃカイリくんにはまだまだ及ばないな。そう思っていたら、カイリくんはスルッとメドシ様の懐に入り、その剣をメドシ様の首すじに当てた。
「王太子様、その剣の力に頼りすぎっす。ご自身の練度をもっと上げないと強敵には通用しなくなるっすよ」
カイリくんのその言葉にメドシ様は剣を落とし、素直に負けを認めた。
「完敗だ、カイリ殿。私は国では父ともう一人の人物以外に負けた事は無かったが、どうやらそれもこの宝剣の力によるものだったようだ…… これから自分自身の力をもっと付けていこうと思う。それまで、この宝剣は母に預かってもらう事にするよ」
そう言って剣を拾い、鞘におさめてモアル様の元にいくメドシ様。モアル様はメドシ様に声をかけられた。
「潔く負けを認めたな、メドシよ。それで良い。その剣は私から女王陛下に返しておこう。カイリ殿、愚息を教え、導いていただき感謝する!」
そう言って頭を下げた後にモアル様はにこやかに言った。
「それでは、次は私と手合わせ願いたい、カイリ殿。息子の仇も討たねばならぬので、本気で行かせていただく!」
いや、満面の笑みで言うなんて怖いですから…… ほら、カイリくんの顔も引きつってるし……
「わっ、分かったっす。お相手、お願いするっす!」
半ばヤケクソ気味にそう返事をしたカイリくんを見たモアル様は、俺に開始の合図をという。
「分かりました、それでは…… 始めっ!!」
勝負は一瞬でついた…… 俺が辛うじてモアル様の動きが見えたかな? カイリくんは見えなかっただろうな。
俺の始めの言葉と同時にメドシ様と同じく瞬速でカイリくんの眼前に行ったモアル様は、剣を小さく、鋭く振ってカイリくんの剣を弾き飛ばし、そのままカイリくんの喉元に剣先を突きつけていた。
一瞬あとにそうと悟ったカイリくんは、
「まっ! 参りましたーっすーっ!!」
と叫んでいた。
「フフフ、さすがは剣帝のジョブである。私の剣で得物が斬られないように自分で手から飛ばしたのは見事である。だが、その後の手を考えておられなかったようだ、そこは今一つであったな」
「いや、考えてたっすよ。飛び下がって、間合いを取ろうとしたっすけど、間に合わなかったっす……」
カイリくんはそう言って後ろに下がった。そして、俺に
「オッサン、仇を討って欲しいっす」
そう言ってきた。うーん…… 正直いって俺も自信が無いよ、カイリくん。だけど、まあ動きは見えてたから、出来るだけはやってみるよ。
「では、オッサン殿、頼めるかな?」
そうモアル様に声をかけられたので、俺は前に出た。そこに、ナビゲーターからの指示? が届いた。
『馬鹿ですか、マスター。商人のままじゃなく、武士に変更してください。全く…… 武士になってたならあの程度の動きなら容易く見切ってますよ。何度も言うようですが、
そ、そうだったよ…… 俺って物覚え悪いのな…… ひょっとして健忘症か? いや、まだまだ俺は若い! まだ健忘症じゃない筈だっ!
うっかりサンなだけだ! だけだよな……?
ちょっと不安になりながら俺は
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