第16話 再会した同郷人たち
今からだと遅いだろうなぁ…… どうしようかな? とりあえずスピードを落とそうっと。
ノロノロ運転に変えて門まで行く時間を引き伸ばしていたら、門から馬に乗った四人の人物が現れた。その後ろには騎兵さんか凡そ五十ほどズラリと……
うーん、ヤバい…… 敵認定されてるな。俺がそう考えていたら不安そうな声でユウとレンが、
「パパ……」
って言うから俺は安心させる為に笑顔で言った。
「大丈夫だぞ、パパに任せとけ!」
そして俺は車を止めて一人だけ降りた。それを見た先頭の三人が馬を走らせてくる。
うん? 見たことある顔が三つだな。一緒にこの世界に来た若者たちじゃないか。一人足りないけど。すると、一番前を走ってくる青年が声をかけてきた。
「おーいオッサン、無事だったんですか! 中にはミコトさんもいるんですか?」
うわ、心配してくれてるよ。って、ホントは分かってたんだよ、オッサンも。ミコトさんと二人で連れ出される時に四人とも俺たち二人を心配そうに見てたことは覚えてるからね。
いや、決してあの時はこの二人が俺たちよりギャラが多かったら困るって顔をしてるな! なんて思ってなかったからね…… ホントだよ!
『いえ、マスター。既にそう思っていたと告白してるのと同義です。絶対にそう考えていたんですね』
いらねえ突っ込みをするな、ナビゲーターよ。あの時は確かにそう思ってたよ……
まあとりあえずは俺は返事をかえすことにしたよ。
「おう! 何とか生き延びてたよ! ミコトさんもちゃんと居るぞ。俺の子も一緒にな!」
「なっ!? オッサン、早すぎじゃないですか? ミコトさんとの間に子供が出来たんですか?」
青年が盛大な勘違いを盛大な声で言う。後ろからついてきてた少女二人がピタリと止まりヒソヒソと話をしだす。車の中ではミコトさんの妄想が始まっている…… 修羅場だ。
「サクラ、あのおっちゃんミコトさんと…… ゴニョゴニョ……」
「ナツキ、失礼だよ。人の好みは千差万別…… ゴニョゴニョ……」
『ウフフフ、若者たちが知らない間に年上の男女はその劣情に溺れて…… あんな事やこんな事があって女のお腹の中には知らぬ間に新たな命が誕生……』
誕生してないからね、ミコトさん。それに少女二人も真に受けない。オッサンは欲情に溺れて女性とナニをしてないから。その時に騎士さんを引き連れてダンディな男性が青年に追いついてきた。
「ショウ殿、まさかこちらは?」
「公爵、そうです。俺たちと別の部屋に連れ行かれた人です。どうやら何とか処刑の森を抜けてきたようです」
「おお! あの森を抜けて来られるとは! 私はこの公爵領を治めているスティーブという。あなた達を歓迎しよう。だが先ずはその変なゴーレムについて教えてもらえないか」
まさかの公爵様ご本人だよ。そうか、見たことない人にしてみたら車はゴーレムだと思うか。俺はとりあえず挨拶からする事にした。その前に車の中の三人を呼んで外に降りてもらう。
「はじめまして、そちらのショウくんと同郷でオッサンといいます。こちらは同じくミコトさん。そして、この二人の
「ほう? 機械とは? 残念ながらその言葉に聞き覚えが無いのだ。魔道具のような物なのか?」
公爵様の言葉で俺は失敗したと悟った。そうか、機械が無いのかこの世界。それにしても魔道具って何だ? 逆にオッサンが聞きたいぞ。だが、公爵様の言葉にショウが頷いて返事をした。
「そうですね、動力は違いますが魔道具と考えてもらったら良いと思います」
そうか、魔道具になるのか、自動車。
『まあ全く違いますけど、そう言っておくほうがこの世界の人は理解しやすいので良いでしょう』
お、ナビゲーターもその説明で良いって言ってるよ。
「動力が違うのか。
買取るつもりだったようです。まあ、もう一台作ればいいから買取って貰っても大丈夫だけど、そうだよな。ガソリンとオイルはこの世界には無いよな。
『こちら世界仕様の物もマスターなら作れますよ。魔力が余分にいりますけど』
作れるんかい! それなら早くそう言えよ。いや、待てよ…… 魔力が余分にいるって言ったな。どれぐらいいるんだ?
『大した事はありません。エンジン部分と燃料タンク部分の改造用に500ほど余分にいるだけです』
500かぁ。それなら大丈夫だな。後でショウを通じて打診してみよう。
「こんな場所で立ち話もなんだな。我が屋敷に招待しよう。その乗り物に乗ってついてきてくれ。馬よりもゆっくりと走れるんだろう?」
公爵様がそう聞いてきたので俺は頷いた。そして、俺たちはまた車に乗り込み公爵様やショウたちの後ろからついていく事になった。
町に入る前に公爵様が安全なものだと保証してくれたのですんなり町に入る事が出来た。この公爵領はこの町が領都で、進行方向に向かって領地になってるそうだ。俺が車で通ってきた場所は国の直轄地になるらしい。公爵様の屋敷でそう教えてくれた。
「よくぞ無事だったな。先ずはこの国の者として詫びよう。召喚しておいてこんな扱いをしてしまって申し訳ない。謝ってすむ事ではないが……」
「いやいや、無事でしたし、公爵様が俺とミコトさんを放り出した訳じゃないので、気にしないで下さい」
「うむ、そう言って貰えるならば有り難い。しかしどのようにしてあの森を抜けたのだ? Bランクの冒険者でも一人二人では危険だと言われる森なのだが?」
そこにナビゲーターから忠告がきた。
『この町に永住するならマスターの職について教えても大丈夫ですが、そうじゃないならば職については秘匿しておく事をオススメします』
何やかや言ってナビゲーターの指示通りにしておいた方が良いんだろうな。それに、ここはまだ俺たちを召喚したウ・ルセーヤ国内だし。俺たちはこの国を出るつもりだしな。
「申し訳ありません、公爵。それについてはお教えできません。俺たちは四人でこの国を出ていくつもりですし」
「むっ、そうか…… それもそうだな。私も知らない方が良いのだろう。わかった」
ホッ、物分りのいい人で良かったよ。ミコトさんとユウとレンはサクラちゃんとナツキちゃんの二人と和気あいあいと話をしている。
俺の横にはショウが座っていた。
「オッサン、この国を出るんですか? そうか…… 俺たちはあの王女とかは信用できないけど生きる
そこで俺は気になっていたことを聞いてみた。
「たしかもう一人居たよな? 彼はどうしたんだい?」
そしたら王都に残って騎士団と一緒にレベルアップをしながら国の情報を集めているんだそうだ。そこで公爵様が言った。
「カイリ殿もこちらに呼ぶ手はずは整えた。既に騎士団長宛に手紙を出しているからショウ殿たちがこの国を出られるならば直ぐに動く事が出来るが? どうするかね」
この公爵様は本当にいい人みたいだな。こりゃ車を売っても大丈夫だな。後で本当に打診してみよう。
こうして、公爵様のお屋敷で相談しながらも俺は
いや、再会を喜べよって? だってこの国に来るまでは見知らぬ人だったからそんなに感慨深いものもなくてさ……
その日は公爵様のお屋敷に泊めていただく事になった。で、俺の部屋に何故かみんなが集まっている。うん、作戦会議っていうけど君たちは好きなように動いていいんだよ? オッサンたちも好きに動くんだから。
「オッサン、先ずはこちらの状況を説明させてください」
ショウくんは真面目だねぇ。こんなオッサンに丁寧語は必要ないって言ったのに。ナツキちゃんを見習いなさい。
「ショウ、オッサンも良いって言ってるんだからもっとくだけた口調でいいんじゃない? オッサン、居心地悪そうだよ?」
「ナツキ、そんな訳にもいかないだろ? オッサンは年上の方だし、公爵が言ってた俺たちでも危険な森を抜けてきたほどの人だぞ。ちゃんと敬意を払わないと」
うん、初めて会った時の「オイオイ、俺が勇者だって?」って言葉の印象が強くて違和感が半端ないな。まあでもコレが本来のショウくんなら俺が慣れるしかないよな。でも、ほんとこの子たちはどうするのかな?
「俺やミコトさんは公爵様にも言ったようにこの国を出ていくつもりだけど、四人、今は三人だけどこの国にずっと居るのかい?」
「そこなんですよ、オッサン。俺たちもこの国を出たいんですけど、公爵には世話になったし何かしら出来るんならしてあげたいとは思ってるんです。カイリも先手を打ってこっちに呼んでくれてるみたいだし……」
「なるほどなぁ…… 公爵様が言うには今までに狩りをしてもらった事で十分にお釣りが来るとは言ってたけど……」
そこにサクラちゃんから耳寄りな情報が入る。
「兄さんはマリアちゃんと離れたくないだけでしょ?」
なにーっ! 既にこの世界で意中の人ができてるのか!? さすがにイケメンは違うな。
「なっ!? ち、違っ、違うぞ、サクラ。そりゃ、マリアさんに何かあったら何をおいても何とかするつもりはあるけど」
そんな馬鹿な事を思っていたらナビゲーターからの情報が入った。
『まあ私としてはこの方たちもこの国を出る事をオススメしますけどね。このままこの国に居たらいくら優秀なステータスでも洗脳されてしまいますから……』
オイオイ、穏やかじゃない情報だな!?
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