第14話 セーヤ公爵領にて

 セーヤ公爵領にてショウとサクラ、ナツキは順調にレベルを上げていた。三人とも既にレベルは14にまでなっている。



名前:ショウ・ジンミョウジ

性別:男

年齢:二十才

職業ジョブ魔極まきょく

技能スキル:全魔法・杖術・極解

位階レベル:14

体力:690

魔力:5,800

武器:魔樹杖(+35)

防具:魔闘ローブ(+60)

攻撃:272(+35)

防御:320(+60)



名前:ナツキ・カン

性別:女

年齢:十八才

職業ジョブ:拳闘王

技能スキル:破壊・秘孔・発勁・棒術

位階レベル:14

体力:2,890

魔力:700

武器:竜牙レプリカ(+200)

防具:闘着(+55)

攻撃:530(+200)

防御:455(+55)



名前:サクラ・ジンミョウジ

性別:女

年齢:十八才

職業ジョブ:神聖乙女

技能スキル:癒し・浄化・回復・治癒・神聖術

位階レベル:14

体力:185

魔力:2,200

武器:聖メイス(+80)

防具:聖ローブ(+80)

攻撃:200(+80)

防御:300(+80)



 その能力値はまさに英雄と言ってもいい数値だが、称号が増えたりスキルが増えたりする事は無かった。そんな物なんだろうと当人たちも思っていた。


 そして、今日も狩りを終えて公爵家に戻ってきた三人はいつものように夕食を公爵夫妻とその子供たちと一緒にとる。


「ショウ殿、今日はどうだったかな?」


「はい、今日も順調に狩る事が出来ました。感謝します、公爵」


「ハッハッハッ、感謝するのはこちらの方だよ。お陰で我が領地は近年まれに見る肉祭りになっているのだから。ここまで多く狩って貰えて本当に助かってるんだ。領民たちもとても喜んでいるしね。それに、サクラ殿が主要な場所に神聖術で結界を張ってくれたお陰でこれまで魔物や魔獣にいつ襲われるかと不安だった場所が安全な場所に変わったのも本当に有り難いことだ。ナツキ殿は領都で女性や子供に簡単ながらも有効な護身術を教えてもらっているしね」


 セーヤ公爵は現在の国王の弟であるが、兄とは性格が合わずに、公爵の地位を授かった時に領地運営に専念したいと願った。兄である国王も弟とは合わないと思っていたのでこれ幸いとその願いを叶え、王都に来る必要はないとまで言い切った。実際はそうはいかずに、貴族会議などには参加しなければならないので、一年に数回だけ王都には行くのだが、それ以外は本当に領地からは出ない生活をしていた。


 但し王家の動向を探る必要がある為に、息子は騎士団に入り、長女、次女はそれぞれ仲の良い侯爵家へと嫁がせ情報を貰っている。

 三女のマリアはそろそろ婚期である十六才になるが、これといった相手が見つからずにいた。すると、英雄たちを召喚しそのお披露目があると聞き未婚の貴族子女が招待される事になり、公爵はマリアに英雄の為人ひととなりを確認するように申し付け、良さそうならば領地に招待して来なさいと言って送り出したのだった。


 英雄三人を連れて帰ってきたマリアは王女からの手紙をあずかっていた。

 手紙を読むとマリアの王宮への出入りを暫くのあいだ禁止すると書かれていた。それを読んで公爵は王女の思惑を少しだけ理解した。ならば、一人だけ残っているカイリ殿が危険だとも考えたのだが、領地に来た三人をよく観察して、考えなしに別れた訳では無いのだとも思っていた。

 問題はいつこの話題を出そうかというタイミングだった。

 

 タイミングを計っているのはショウたちも同じだった。ショウ、サクラ、ナツキも公爵の人柄にふれ信用できると判断をしていた。だが、中々に言い出せないでいる。

 改まって公爵個人に会おうと願うと必ず邪魔をしてくる存在がいたのだ。それはマリア個人に会う時にも一緒に居る侍従長だった。婚約もしてない女性と二人きりになるつもりもショウにはなく、常にサクラ、ナツキも共にいるのたが、それでも仕事ですと言って必ず十メートル以内についてくるのだ。


「しかし公爵、僕たちがこうしてお世話になってるのに魔獣狩りしかしてないのは申し訳なく思ってます。何か他にお手伝いできる事などないでしょうか?」


 ショウは何とか公爵と話合いができるようにと話題を考える。


「いやいや、ショウ殿。先程も言ったが十分すぎるぐらいに我が領地の為になっているよ。だが、そうだな…… もしも良かったら君たちのいた国の技術について聞いてみたいものだ。良ければ後で私の執務室まで来てもらえないかな? そうだな、ショウ殿お一人の方がいいかな。サクラ殿とナツキ殿は良かったらマリアと共にいてやって貰いたいのだが」


 公爵の返事にショウたちは頷いた。これで侍従長はどちらかに張り付く事になる。どちらかが本題に入れると判断したのだ。


 そして夕食を終えた後に公爵は侍従長にマリアたちの方のお茶会の準備を命じ、自分の方にはすぐ側にいた侍女に茶の準備を頼んでショウを連れて執務室に向かった。


「さて、ショウ殿。侍従長は遠ざけたよ。悪かったね、あの者は王家からの間者かんじゃだとは分かっているのだが、辞めさせるとどんな言い掛かりをつけてくるか分からなくてね。仕方なくそのまま雇っているのだよ」


 さっそく公爵から本題に入ってくれたようだ。


「ご配慮、有難うございます、公爵。でも何故俺たち三人をそこまで信用してくださるのですか?」


 ショウの質問に公爵が簡潔に答えた。


「マリアが自然な笑顔を見せているからだよ」


 ショウが驚いた顔をする。


「ハッ? あの、マリアさんが自然な笑顔を見せてるだけで、ですか?」


「ああ、そうか。言ってなかったな。あの子も無意識だからな。マリアは相対した人の本質を見抜く力を持っているのだ。だから、マリアが自然な笑顔を浮かべて君たちと話をしてるのを見ていた私は君たちを信用できるんだよ。まあ、コレはスキルとしては現れてはいないのだが、幼い頃からのマリアの特技だと私たち家族は思っている。だから、我が家の中の王家の間者も全て把握してあるから安心して欲しい。それよりも聞きたい事があるのじゃないかね? 何故、君たちが召喚されたのかなど……」 


「聞けばお答えしてもらえますか?」


 ショウは公爵に問いかける。


「私が知る範囲の事は全て答えよう。コレは私の名、スティーブ・セーヤにかけて誓おう」


 公爵の返事を聞いてショウは満足したようだ。さっそく質問を始めた。


「俺たちが召喚された訳も聞きたいのですが、それよりも、俺たち四人の他に二人が巻き込まれたような形で召喚され、役に立たないと言われて別室に連れて行かれてから姿を見ていません。彼ら二人がどうなったのか、公爵はご存知ありませんか?」


 ショウは先ずはオッサンとミコトの事を確認した。


「うん、大変な事だ、それは! 早く救助に向かわねばならぬが、あそこは並の人間では入っていけぬ…… っと、答えになっておらぬな。恐らくは正しいと思うのだが、転移室というのがあってな。王族や貴族などで、おおやけに処刑するのが望ましくない場合にその転移室にいれて王家が【処刑の森】と呼んでいる場所に転移させるのだよ。恐らく二人ともそこに送られたのだと思う……」


「なっ! それでは二人は……」


「うむ、どのようなジョブを授かっていてもレベル1では弱い…… 例え君たちであってもレベル1の時に送られれば死は確実な場所なのだ…… 恐らくはもう……」


 公爵の返事にショウは絶句する。あの二人は偶々たまたま、自分たち四人の近くに居たから巻き込まれただけなのだろうが、それでも巻き込んでしまったと四人ともが責任を感じていた。だが、公爵の言うとおりだと既に手遅れだという事になる。


「クソッ! あの時に様子見などせずに直ぐに動いていれば…… 今からでも遅くはない! レベルも上がったし、助けに向かえば助けられるかも!」


 ショウの言葉に公爵が残念そうに言う。


「ショウ殿…… 転移室から送られる場所は確かに【処刑の森】になるのだが、その場所はランダムで、二人が送られた場所に行ける確率はかなり低いのだ…… それにそんな事を申し込んでも王女は許可を出さないだろうと思う…… 私としてはレベル20まで上げてから、処刑の森でのレベルアップをしたいと申し込むのが妥当だと判断するが…… だが、それでは二人の生存は絶望的だな……」


 公爵の言葉にショウはキレた。


「何故! 何故、俺たちはこの国に召喚されたっ! 俺たちが召喚されなければあの二人も巻き込まれる事は無かった筈だっ! 理由を言え! 公爵!!」


 キレたショウを見ても公爵は冷静なままだった。いや、むしろその顔は嬉しそうだ。


「我が国の我が血と同じ血が流れる者が大変な事をしでかしてしまった…… その事については素直に詫びよう。すまなかった。だが、落ち着いて欲しい。私は生存は絶望的だとは言ったが二人が死んだという確証もないのも確かだ。私が入手した情報によると、女性の方は確かに戦闘に向いてないジョブだと聞いたが、少し年を取っているとはいえ、男性の方は誰も聞いた事がないジョブだったと聞いている。ならばその男性次第では二人とも生きている可能性はあるとも思っているのだ」


 既にオッサンもミコトも森を出ている事を知らないショウと公爵はお互いに見当外れな会話をしているのだが、その事を知らないのだからしょうがない。更に公爵は言葉を続けた。


「それと、君たちが召喚された理由についてだが、私も現時点では憶測の域を出ないのだが…… どうも王家は現在の神殿、教会関係をくつがえすつもりがあるようだ。その為に強い力を持つ君たちを召喚して、純人族以外は滅ぼそうとしているように考えている。愚かな考えなのだがね。だが、それは王家だけでなく後ろに何かしらの存在が居るとも思われるのだ…… だから私は君たちが表面上は王女に従うフリをしてくれたのをとても嬉しく思っているのだ。私としては王家の馬鹿な考えを阻止したいと考えてこれまで色々な手を打っていたのだが、召喚された者たちがもしも王家に賛同してしまったらと気が気じゃなかったのだよ…… 本当に有難う」


 そこまで話を聞いてショウも冷静さを取り戻したようだ。


「いえ、取り乱してスミマセンでした、公爵。もちろん、俺たちはそんな虐殺に力を貸すつもりはありません。だが、先ずは同郷の二人を何とか助けたいのです…… 俺たちの国のことわざに急がば回れというのがあります。さきほど、公爵が仰ったように、先ずはレベルを20まで上げて、それから王女にレベルアップの為に処刑の森に入りたいと申し込んでみます」


「うん、とてもいいことわざだね。是非ともそうして欲しい。そして、好都合な事に我が領地から処刑の森は王都から行くよりも近いのだ。だから、一人王都に残っているカイリ殿にもこの情報を伝えても構わないかね? カイリ殿もレベルが20になったらこっちに来てもらおうじゃないか。あの森はレベル20でも危険な場所だというのに変わりはないからな。四人そろっての方が良いと思う」


 カイリが王都で巧みに王女の誘いを躱しながら、騎士団と訓練を続け、既にレベル18にまでなっているのはまだ知らない二人はその後も話合いを続け、大まかな段取りを決めたのだった。


 

 その話合いの十日後、セーヤ公爵領に近づく怪しいゴーレムがいると報告されるのだが……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る