第13話 町に向かおう
俺とミコトさん、そしてユウとレンは野営場所でもう一泊して体を休めた。ユウもレンもかなり疲れているみたいだったからな。
一泊してすっかり元気になったようなので今日から町に向かって出発するよと伝えるとユウがこの近辺の町だと
「何だとーっ、そんな町には寄る必要は無いな。なーに、それなら
「で、でもパパ。
すっかり俺を親として見てくれてるユウの言葉に俺は父としての威厳を込めて言った。
「フフフ、ユウよ。パパに任せるんだ。ニ百キロが五百キロだろうと大丈夫だ!」
『まあ大丈夫でしょうね。車があるんですから。それで森を抜けたら車を出してババーン! どうだ、パパは凄いだろう! をやりたいんですよね?』
ナビゲーターからそう突っ込みが入った。
そ、そうだよ、それをやりたいんだよ! 悪いか? 俺がそう返事をしたら何故かユウから質問がきた。
「パパ、変な声が聞こえたんだけど車って何? 馬車とは違うの?」
ノー! な、何で?
『二人はマスターの子供になったのですから私の声が届くようにするのは当然の事ですよ。はじめまして、ユウさん、レンさん。私はマスターの
「パパのジョブってナビゲーター? がいるの? ナビゲーターって案内人って事だよね?」
『はい、そうです。ユウさん。私はマスターがスムーズに
「うん、大丈夫」
ユウの返事と共にユウとレンの能力値が俺にも見えるようになった。
ん? 待てよ…… という事は俺の能力値もユウやレンに見えるという事に…… オイ、コラ、ナビゲーター! 称号は見せるなよ!
『残念ですがマスター、その情報は遅すぎました。全て、ユウさんとレンさんに見えてます。もちろん、ミコトさんのものも……』
「ウソー! ナビさん、何をしちゃってくれてろのよー!」
俺とミコトさんからの突っ込みも何のそので
『私は物事を隠す方がよろしくないと思いましたので』
シレッとそう答えやがったよ……
名前:ユウ
性別:女
年齢:十一才
称号:ー
体力:110
魔力:30
武器:ー
防具:ー
攻撃:45
防御:40
名前:レン
性別:女
年齢:八才
称号:ー
体力:30
魔力:300
武器:ー
防具:ー
攻撃:10
防御:13
俺はもう既に気持ちを切り替えてユウとレンの能力値を確認している。ユウは剣士か。武士なら教えてやれたけどなぁ。
『マスター、ユウさんはまだ成長途中ですので、刀を用いた剣術を教えるのは有効です。レンさんも妖術師とはいえ自衛手段を持つのは良い事だと思いますが』
おお、そうなんだな。それじゃ、二人が望むなら一緒に刀を振るのを日課にしよう。
「うん、パパ。教えてね」
オッサンは張り切っちゃうよ。職を
どうやら俺やミコトさんの称号を見てもちゃんと慕ってくれるようなので安心したよ。さあ、準備も出来たし出発だ。俺はゴーレムを二体残してユウとレンを運んで貰う事にした。他のゴーレムは取り敢えずアイテムボックスに入って貰う。俺の魔力で創られたゴーレムは簡単に入れるようだ。
歩くこと二時間、遂に俺たちは森を抜けた。
で、そこに飛んで火にいる夏の虫が待っていたのだった。
「グエーヘッヘッヘッ、わしの言った通りじゃったろう、ザーズよ」
「フンッ! まさかお前のヤマカンが当たるとはな、グレベズよ」
「わしのはヤマカンじゃ無いと何度も言っておろうがっ! このボケがっ!」
「今回は
目の前では漫才を繰り返しているが、そうかコイツラが俺の娘二人をいじめたやつらか。
俺は問答無用で二人を植物魔法で縛り上げた。
「グアッ、な、何じゃ、この
「グレベズ、早く何とかしろ! ええい、それにお前たち、ボサッと見てないであの男をさっさと始末しないか! 女の方は生かしておくんだぞっ!!」
あー、うるさい、口も塞いでおくか。
「もごーっ、もがっ、もがっ!!」
塞いでもうるさいな。そう思っていたら傭兵らしき男たちが前に出てきた。俺の横に並び立とうと前に出ようとするミコトさんを手で制して俺は言った。
「で、あんたらは馬鹿な主に従ってここで俺を攻撃してくるのかい?」
「クッフッフッ、大した自信だが俺たちは雇われの身でな。命令に従わないと報酬が貰えないんだ。だから抵抗せずに死んでくれると有り難いんだがな、オッサン」
「オッさんの名前を知ってるなんて!? 情報が漏れてますよ、オッさん!」
いや、絶対に違うからね、ミコトさん。ほら、言った傭兵がポカンとした顔をしてるから。
気を取り直して俺はゴーレムにユウとレンに目隠しを頼んだ。そして傭兵五人に殺気を飛ばした。
「ムッ、この威圧…… どうやらただのオッサンじゃねぇようだな…… まあ良い、ここで死ぬことに変わりはないんだからなぁ!」
と威勢のいい事を言った奴が後ろに飛び下がると同時に後ろの四人が前に出てきて俺に襲い掛かる。けれども連携らしい連携もなく……
四人ともあっさりと俺にヤられた。弱い、弱いぞ。こんな弱くて護衛傭兵として雇われてたのか?
あっさりと四人をヤッた俺を見て威勢の良かった兄ちゃんが言う。
「なっ!? 中々やるじゃねぇか…… 今日のところは勘弁してやるよ! 次に会った時はこうはいかねぇからなっ! 覚えとけよっ!」
言うだけ言ってバッと後ろを向いて逃げ出そうとした兄ちゃんの後頭部に俺が投げた
さてと、あとはコイツら二人だが……
『マスター、奴隷商人はともかく呪術師はそのままで対処する事をオススメします。口を自由にしたと同時に呪術を放ってきますので』
俺はナビゲーターに分かったと返事をして呪術師の首を刎ねた。横で見ていたザーズが小を漏らす。
俺はザーズの口を自由にしてやる。
「ヒッヒイッ! き、貴様、ウ・ルセーヤ国御用達奴隷商人であるこのザーズ様に手を出して無事に済むと思うなよ! 貴様は死ぬまで王国から追われる事になるぞ! い、今なら勘弁してやるから、この拘束を解いて私を自由にするんだ!」
小便漏らしながら言われてもなぁ。それに、コイツはユウとレンの両親の仇だ。俺はユックリとザーズの眉間に刀を突き刺した。そう、ユックリとだ。
「ウギャーッ! 痛い! 止めろ! やめろー! いや、止めて下さい! ギャーッ! 止めてーっ!」
うるせぇな。静かに死ねよ。俺は更に突き刺す速度を落とそうとした時に俺の腰に何かがぶつかった。視線を落とすとユウが俺にしがみついていた。
「パパ、もういいの、もう止めて。苦しませる必要は無いの……」
涙目でそういうユウに俺は自分を恥じた。そうだな、俺が間違っていたよ、ユウ。こんなやり方をしたってユウとレンの両親が生き返る訳じゃない。俺はユウの目を手で覆い、一気に刀を突き刺した。
「グギャッ!」
その言葉を最後にザーズは死んだ。俺はアイテムボックスからゴーレムを二体呼んで死体を森の奥に放置してきてくれと頼んだ。
そして、ユウとレンの方に向かって頭を下げた。
「怖い思いをさせたな、ゴメンな」
だが、俺の言葉に二人は首をフルフルと横に振り、
「パパ、有難う」
って礼を言ってくれた。で、その後にミコトさんから、
「私には謝罪が無いのですが……」
と言われたが、いや、普段オークやミノタウロスを狩ってる時のあなたの方が十倍は恐ろしいですからと心の中で反論しつつ、
「ああ、ミコトさんも悪かったね。人が人を殺す場面なんて見せてしまって」
と謝ると、違います! と反論された。えっ? 違うの?
「私だってこの娘たちの姉として、あのカス共に一矢報いたかったんですからね!」
はい、すみませんでした。次回は無いでしょうけど、次回から気をつけます。
俺がそう謝罪する事で事なきを得た。ゴーレムたちが戻ってきたので俺はいよいよ車を出す事にした。
結局は悪路走行車を選んだ。軽の乗用車でも良かったのだが、見える範囲の道は良くてもこの先は分からないのでそう決めた。で、ミコトさんは当然の如くイビルエンジェルを俺に要求し、仕方なく俺も出した。道が悪くなったらこっちに乗るように厳命したけどね。
さあ、色々あったけど町に向かおう!
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