第12話 けもびとの子供が出来ました
翌朝である。何事もなく朝を迎えた俺をゴーレムが起こす。窓の外から規則正しくコンコン、コン、ココンと慣らすのは用事がある時だ。
俺は起きて玄関から外に出た。ゴーレムが俺を案内してくれたのは魔物、魔獣の山だった……
オイオイ、こんなに居たのか? ざっと見ただけで百体は居るな。俺はレベル14で創造出来る解体ゴーレムを八体創造。
ミコトさんはまだ寝てるからね。地雷で死んだのも多く居て、素材を取れそうにないのは穴を掘って埋めてくれとゴーレムに頼んだ。
解体終了後にまた声をかけてくれと頼みワンルームに戻ると妹さんが布団で上半身を起こしてキョロキョロしている。そして、俺の顔を見てニコーッと笑顔になり、
「パパ、おはよう!」
と大きな声で言った。うん、俺はこの子の父親だーっ!! 俺は大きく心の中で歓喜の声を上げた。
『はいはい、伴侶も居ないくせに子持ちになったマスター。早くもうひと粒の薬を飲ませて上げて下さい』
クッ、俺の歓喜をナビゲーターが潰しにきやがった。だが、俺は負けない。
コップに水を入れてから我が子に薬を飲ませた。すると、また眠そうにしたので、
「まだ寝てていいからな。ゆっくりと休むんだ」
そう声をかけて布団に寝かせてやった。
『ナビゲーター、これでこの子は治るんだよな?』
『はい、起きたら完治してますよ。マスターの作った薬は副作用も出ないので、今、寝てしまったのは疲労が抜けきってないからです。で、この子たちをマスターの子供にするつもりですか?』
『ああ、そうだぞ。まあ、事情を確認して、この子たちが了承するならだけどな』
『まあ、お好きなように…… 子育てを経験してないマスターとミコトさんではかなり大変だと思いますが……』
ふっ、誰だって初めてはあるんだよ。ナビゲーターくんよ。それに何気にミコトさんを含めているけど、もちろん俺が一人で面倒を見るつもりだぞ。
俺は心の中で格好つけてそう言った。
『全く、この世界での生活基盤も出来てないのに、
まあ、全ての人がそうだとは限らないが、目の前で子供が困っていて、助けられる力があるならば助けるのが当然の事だと親に教育はされたな。その教育が間違っているとは俺は思ってない。
大人ならば我慢出来る事でも、子供には辛い事が多いからな。
『まあ、分かりましたよ。それでは姉の方も目覚めた様なのでよく話合いをして下さい。ミコトさんも含めてですよ、もちろん』
「うん? お、起きたか? どうだ、少しは疲れが取れたか?」
俺は姉の方にそう声をかけた。するとベッドからミコトさんも起きてくる。おや? 昨日みたいに険しい目つきじゃないな? 何か心境の変化でもあったのかな。まあ穏やかな顔だから良いかと思い、俺は
「あの、昨日は泊めて頂いて有難うございました。それに、お薬までいただいて…… 必ず働いてお代をお返ししますので、少しだけ時間を下さい。よろしくお願いします」
そう言って起きるなり土下座する少女に俺は慌てて言った。
「待て待て、土下座なんてするな。それに薬の代金なんて請求したりしないぞ。それよりも何か事情があるんだろ? こんなオッサンでも信用してくれるなら事情を話してみないか? 力になってやれるかも知れないし」
「とんでもないです! これ以上ご迷惑をかける訳にはいきません!」
うーん、この子の言葉遣い…… お貴族様? そうは思うが今さらだと思い俺は口調を変えずに話をする事にした。
「いや、迷惑なんてかかってないぞ。安心してくれ。オッサンは二人を助ける事ができてホッとしたんだ。だから、他にも困っている事があるなら遠慮なく言ってくれよ。俺たちも急ぐ旅をしてる訳じゃないからな」
と同意を得ようとミコトさんを見ると妄想中だった…… し、暫くはソッとしておこう。
(ミコトの妄想)
『ウフフフ、私がママよ。だから安心しなさい。あなた達は私とパパで守るからね。大丈夫よ、パパはとても強いのよ! それにママも! ……そうしてこの子たちの為に仮初の夫婦を演じる事になった私とオッさんの間にやがて愛情が育まれ、そして一線を超える日がっ!? フフフ、フフフ、完璧な作戦だわっ!? そうよ、私がママよ!』
ミコトさんを放置して少女を見ると泣きだしてしまった。
「うわっ、ど、どうした? 何か悪い事をオッサンが言ったか? だったら謝るから泣きやんでくれ!」
俺が慌ててそう言うと首を横に振る少女。
「うえっ、ぐずっ! ち、違うんです! う、嬉しくて…… 今まで妹と二人で逃げてきて、こんなに親身になって言葉をかけてくれる大人の人なんて居なくて…… ぐすっ、ぐすっ、ほ、本当に甘えても良いんですか?」
俺はその言葉に少女の頭に手をやって撫でてやりながら言った。
「ああ、良いんだぞ。今までよく頑張ったな。今からこのオッサンが二人とも助けてやる。だからもう安心するんだ」
『あー…… 遂に言ってしまいましたね、マスター。コレでこの子たちの事は責任を持つ事になりましたよ。最後まで見捨てずにちゃんと面倒を見て上げないとダメですからね』
ナビゲーターからの言葉に俺は当たり前だろと心の中で答えて、少女に聞く。
「落ち着いてからでいいからオッサンとコッチのお姉さんに事情を教えてくれな」
少女はコクコクと頷き、早く泣き止もうと目を擦るがやめさせた。まぶたが腫れるからな。
落ち着いた少女が話を始めた。いや、もう俺の娘と呼ぼう。
「あの、私の名前はユウと言います。妹はレンです。私たち二人は
なるほど、そのザーズとやらは制裁が必要だな。ユウもレンも両親を殺されていたとは…… それでも何とか逃げようとしたのは本当にユウは偉いな。だが、レンが呪いを受けていたのはどうしてだ?
「レンが呪いによって病気になっていたみたいだけどユウは心当たりはあるか?」
「はい。レンに呪いをかけたのはザーズと一緒にいた呪術師です。私は大した魔力もなくて、魔法も生活魔法ぐらいしか出来ないのですが、レンは魔力も多くて攻撃魔法が使えるので呪いをかけられました」
コレで聞く事は他にないかな。そこで俺は本題に入ってみた。
「ユウはどうしたい? ご両親を殺した奴らに復讐したいか? それならそれでオッサンも手助けしてやるぞ」
俺がそう聞くとユウは首を横に振って言った。
「いいえ、私もレンもザーズが憎いですけど、復讐するつもりはありません。関わりなく生きていけたらと思ってます」
「そうか…… コレは提案だけど嫌なら嫌って言ってくれよ。ユウもレンもオッサンの子にならないか? オッサンはこの森を出て、ウ・ルセーヤ国からも遠く離れた国に行って生活しようと思ってるんだ。ユウやレンも一緒に来てくれたら嬉しいんだけどな。もちろん、危険からは親としてオッサンが守るからな」
俺がそう言うとユウはまた泣きながら返事をしてくれた。
「グスッ、ほ、本当にそこまで甘えても良いんですか?」
「ああ、もちろんだ。子供は遠慮なんてするな。ユウもレンもオッサンが面倒を見てやるからな!」
「ちょっ、ちょっと待って。オッさん。必然的に私が母ですよね? ね、ユウちゃん!」
ミコトさんが割り込んできた。だがユウの返事は
「えっ! そんな、お姉さんですよね? ミコトさんみたいな綺麗で若い人を母とは呼べません」
だった。綺麗で若いが効いたのだろう。照れながらミコトさんが
「そ、そうね。私は二人のお姉ちゃんね!!」
と納得した。グッジョブだ、ユウ。これで変な妄想は始まらないと思う。
その後、起きたレンにも確認して、俺が父で、ミコトさんが姉だという事が決まった。
さすが異世界だ、結婚すらしてないのに可愛い子供が二人もできたぞ。
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