第9話 ジョブ士農工商、工の検証


 さて、農の検証をしてから四日目になる。今日まで成長促進を使い、芋は花を咲かせた。花はそれなりにキレイで、地球のじゃがいもの花に良く似ている。ミコトさんもキレイですねーと言って喜んでいた。


 勿論、それだけをしていた訳ではなくて、レベリングもちょこちょこと行い、今は俺がレベル18で、ミコトさんはレベル13になっている。そして、ナビゲーターからの提案で、今日はレベリングを休んで職、こうの本格的な検証をする事になった。


 これまでに作ったのは建屋のみ。公衆トイレとワンルームのくり抜き建屋だ。

 で、建設はもちろんだが、こうに含まれるのだが、それだけではなくもっと幅広いのだとナビゲーターは言うのだ。


『マスター、考えてみて下さい。地球で工業といえば鉄工、木工が頭に浮かびますが、化学薬品工業なんて事も言いましたよね? そう、化学薬品です。ただ、石油製品はこの世界では広めて欲しくないのでそれは無しにして下さいね。代わりの素材がこの世界にありますので、それを有効活用しましょう。それだけじゃないですよ、マスター。薬なんかもこうに含まれますので、こうの職は幅広い活躍を期待できるのです』


 久しぶりに真面目に語ったな、ナビゲーター。


『私はいつも真面目です、マスター』


 その突っ込みが無ければ良かったんだけどな。


 武士からこうを選択すると何気に最強なんですけど…… ひょっとして武士より強くね? 武器が石頭セットハンマーって…… いや正しくは石頭せっとうハンマーだっていうのはオッサン知ってるよ。でも現場の職人さんたちはセットハンマーって言ってるから、それが反映されたのかな?



名前:オッサン

性別:男

年齢:五十才

職業ジョブ:士農【工選択中】商

技能スキル:鉄工・木工・工業全般・素材認識・各種配合生成(制限有り)・建設(制限有り)・掘削・切削・加工・工具制作(制限有り)・車制作(制限有り)

位階レベル:18

称号:おっぱい星人マザコン

体力:1,670

魔力:2,840

武器:石頭セットハンマー2.5kg(+190)

防具:作業着、不織布ツナギ(+90)

攻撃:380(+190)

防御:255(+90)


 魔力も極端に増えたな。


「オッさん! 何ですか、このデタラメな強さは!?」


 ミコトさんも俺の能力値を見て驚いている。いや、俺が知りたい、ナビえもーん?


『マスター、攻撃スキルを持たないこうは純粋な強さを言うならば武士にボロ負けです。但し、マスターのジョブ【士農工商】の場合は違います。以前にも言いましたが、違う職になっていてもスキルの使用は可能だとお教えしました。今のマスターはこうを選択してますが、戦闘時に武士スキルを使用可能なんです!! 素晴らしい! 但し、(制限有り)ではありますが。武器がハンマーですので飛燕や一刀必殺、居合、槍無双など使えないスキルもありますのでご注意を』


 って、それじゃ必殺技が使用出来ないって事だよな? まあ、見切や瞬歩は使用できるのか。それなら魔物や魔獣が相手でも何とかなるか……


「オッさん、車制作がスキルに有りますよ! 遂に車が作れるようになったんですね!」


 ん? おおっ、本当だ。スキルをちゃんと見てなかった。でも待てよ、コレも(制限有り)になってるぞ?


『気付かれましたか、マスター。他のスキルにも(制限有り)の表示が出ていると思いますが、それらはレベル制限になります。現在のレベルで作れる物が限られるという事です。制作可能な物を知りたければ脳内で車制作を選んで見て下さい』


 俺は言われたとおりに脳内で車制作を選んでみた。すると、制作可能な車種が脳内に現れた。



【車制作】

レベル1

 ミニカー(セダンタイプのみ)

 消費魔力2

レベル2

 ミニカー(バンタイプ追加)

 消費魔力2

レベル3

 ミニカー(働く車シリーズ追加)

 消費魔力3

レベル4

 ミニカー(走り屋仕様追加)

 消費魔力3

レベル5

 ミニカー(軍事用追加)

 消費魔力5


 ちょっと待てーいっ!! レベル5まで見たら全部ミニカーやないかいっ!!


『ハアー、マスター、最後までちゃんと見て下さいよ。段々とレベルアップしてますから……』


 本当か? 本当なんだな? 少し疑いながらも続きを見てみる俺。



【車制作】

レベル6

 チョロQ

 消費魔力5

レベル7

 ミニ四駆

 消費魔力7

レベル8

 幼児用三輪車

 消費魔力10

レベル9

 幼児用自転車(補助輪付)

 消費魔力12

レベル10

 三歳〜六歳用電動自動車(満充電で三十分可動)

 消費魔力15



 俺は期待に満ちた眼差しを向けているミコトさんが怖かった…… コレ絶対にアカンやつだと思う。ナビゲーターを信じた俺が馬鹿だったのか……

 だが、一縷いちるの望みをかけて俺は最後まで見る事にした。



【車制作】

レベル11

 キックスケーター(耐荷重80kg)

 消費魔力15

レベル12

 ママチャリ

 消費魔力18

レベル13

 マウンテンバイク(自転車)

 消費魔力25

レベル14

 ロードバイク(自転車)

 消費魔力25

レベル15

 電動アシスト自転車

 消費魔力50

レベル16

 原動機付自転車(50cc〜100cc)

 消費魔力75〜125

レベル17

 バイク(100cc以上)

 消費魔力150〜1,800(排気量による)

レベル18

 オート三輪(二人乗り、荷台付ホロ無し)

 消費魔力1,000


 おっ、おおー…… ギリギリじゃねぇか…… しかもオート三輪って、いつの時代だよ。オッサンである俺でも幼少の頃に一台見たかな〜ぐらいの古さだよ。

 まあ、車には違いないが…… それでも排気量で言うなら200ccぐらいだったような…… バイクの方が馬力あるよな。荷物が積めるのが強みか? あ、小回りも効くし、悪路にもそれなりに強いか…… 確かそうだったと思う。


「オッさん、どうでした? 車、作れるんですか? 私、ミニバンが好きなんですけど、どうですか?」


 ミコトさんがキラキラした目で俺に聞いてくる。俺は恐怖心を抑えて真実を告げようとしたら、ナビゲーターが先に言いやがった!


『ミコトさん、残念ですがミニバンなんて夢のまた夢です。ミニカーでならマスターも作れますが……』


 ってオイッ! そこで言葉をやめたら俺がミニカーしか作れないってミコトさんが思うだろうが!


「えっ!? ミニカー…… ミニカーってアレですよね、地球では玩具メーカーのタムヤが有名な…… そうですか、ミニカーですか……」


 ヤッヤバい! ミコトさんの目が! 俺は大慌てでレベル11から作れる物を発表した。


「待て、待ってくれ! ミコトさん。確かに現代車はまだ無理だけど、レベル11からは大人が利用出来る車を作れるようになってるんだ。オートバイも作れるし、今のレベル18だとミコトさんは知らないだろうけど、オート三輪っていう古い車を制作出来る!!」


 よ、良かった、間に合った…… ミコトさんの目が元のキラキラに変わったよ。


「えっ!? オートバイ! 私、大型の限定解除免許を持ってるから、オートバイ欲しいです! ハーレムデイビットソンが良いです!!」


 力いっぱいにミコトさんがそう宣言したけど、バイクは中免しか持ってない俺。それに、この世界では道らしい道があるかどうか分からないからオフロードバイクの方が良いと思うんだが……


 だけど試しに出してみるのも良いかと思い、俺はハーレムデイビットソン社の【イビルエンジェル】という名のアメリカンバイク(1,200cc)を制作してみた。


 グオっ! 上限いっぱいの1,800の魔力を持って行かれたぞ! まあ、まだ1,040あるから大丈夫だけど。


「キャーッ!!【イビルエンジェル】!! オッさん! 有難う!! 私、この娘をいつか必ず買おうと思って仕事を頑張ってたのっ!! もう私のモノにして良い? 良いよね! 返せって言われても返さないからっ!!」


 はいはい、好きにしなさい。オッサンはバイクにそこまで思い入れが無いからね。って、早速またがって動かそうとしてるよ、ダメだよ、ミコトさん。


「待った! ミコトさん! まだダメだよ。拠点を移動する時に出して上げるから、それまではお預けだ。こんな道らしい道が無い場所では運転したら怪我をするよ」


 俺が年上の威厳を総動員して注意したら、さすがにミコトさんも分かってくれた。良かった、目が逝かなくて…… ホッとしたよ。


「あっ、はい…… そうですよね、スミマセン。嬉しくてつい……」


 って、そう言えば燃料はどうしたら良いんだ?


『マスター…… 馬鹿でしょ? ご自分のスキルに各種配合生成があるでしょうに…… 少し考えれば分かりますよね? あと、ちなみにですけど、マスターが制作したこのオートバイはガソリンやオイルが必要なのは当たり前ですが、排気機能は地球よりも進んでいて、マフラーから出るのは二酸化炭素と窒素と酸素のみです』


 クッ、好き放題いいやがって…… だが、確かにあるから反論出来ないぞ。確認したらガソリンもオイルもレベル3とレベル4で生成可能だった。素材がスライムなのは謎だったが…… まあ、素材無しで魔力を消費しても生成できるみたいだから、その点は深く考えないようにしよう。

 しかし、この高性能マフラーをもしも地球で販売出来たら億万長者も夢じゃないなと思ったよ。


こうのスキルは膨大にありますから、まだまだ私は消える事はできませんね……』


 ナビゲーターのその小さなつぶやきは俺にもミコトさんにも聞こえてなかった。

 

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