第8話 ジョブ士農工商、農の検証
俺とミコトさんがレベルアップに勤しむこと、早くも二週間が過ぎた。
何気にオッサンである俺のレベルは15になり、ミコトさんのレベルも11になっている。
既に二人ともこの結界周辺の魔物、魔獣ならばまず負ける事は無くなった。
ミコトさんは相変わらず
二人ともレベル10になった時には称号なんていう項目が増えていた。二人してその称号にガックリ来たのは言うまでもない……
名前:オッサン
性別:男
年齢:五十才
称号:
体力:1,110
魔力:730
武器:無銘の大小【魔砥ぎ】(+120)
防具:羽織袴草鞋(+30)
攻撃:380(+120)
防御:230(+30)
名前:ミコト・カツラギ
性別:女
年齢:二十四才
称号:
体力:280
魔力:270
武器:ドイツ製牛刀【魔砥ぎ】(+60)
防具:料理研究家エプロン(+12)
攻撃:125(+50)
防御:98(+12)
お互いにステータスを確認出来るようにしてたのが
オッサンである俺はまだ見られても我慢出来るが、ミコトさんは称号が生えてきた時に俺に必死で、
「ちっ! 違いますからっ! 違いますからねっ!? オッさん!」
と言い訳をしてきた。勿論オッサンな俺はウンウン、分かってるよという風に頷いたのだが、それが更に良くなかったらしい。三日ほどミコトさんは落ち込み、無気力な状態になってしまった。
それでも、食事だけは作ってくれたが。
「さてと、それじゃあ俺の職を確かめる為に変更してみるよ、ミコトさん」
「はい、オッさん。昨夜いってた様に農を選択ですね」
「うん、それじゃやるよ。農を選択!」
今日は俺の職の選択を変える事によって、能力も変わるのかの確認だ。ミコトさんの場合は選択制じゃなく、料理研究家であり発明師でもあるそうだから、その能力は変化しない。
だけど、俺の場合は選択制なので、それによって能力が変わるのかの検証をしておこうって話になったんだ。
えっ!? 二週間もあったのに確認して無かったのかって? ナビゲーターに聞けよって? 俺はできる限りナビゲーターの世話にはなりたく無いから、自分で確認するつもりだ。
期間が伸びたのはレベルアップを優先したからで、決して忘れてた訳じゃないからな。
名前:オッサン
性別:男
年齢:五十才
称号:
体力:1,800
魔力:500
武器:スキ鍬(+60)
防具:作務衣(+20)
攻撃:290(+60)
防御:175(+20)
ああ、やっぱり変わってるな。スキルまで変わったな。まあそれは当たり前か……
けど意外に攻撃も防御も高いと思ったらスキルを見て納得してしまった。【害獣(虫)駆除】ね…… 地球だと、害獣はネズミ、イノシシ、シカ、サル、ウサギ、イタチ、モグラ、ヘビなんかが有名だけど、この世界だとどうなんだろう? 害虫はイモムシ系やら、アブラムシ系やらか…… この世界の害虫って見たくないなぁ……
「凄い! オッさん、ここに野チシャとか、セロリとか、芋(じゃがいも系)があります。拠点に植えてみません?」
おう、それもそうだ。どこまで使えるか検討しよう。
「そうだね、ミコトさん。先ずは土魔法でこの辺りを少し耕してみるよ」
俺はそう言って二人のワンルームから少し離れた場所で、八メートル✕八メートルの広さをイメージして土魔法を使用してみた。
【土魔法、
おおっ! イメージ通りに耕すことが出来てる。何て便利なんだ。ちゃんと魔力も消費されてるが。けど今の広さで消費魔力が25か。よし、それじゃ今度は
【土魔法、
すっ、素晴らしい!! 俺が鍬持って作ったらこんなに真っ直ぐに高さも揃った
「凄いです! オッさん。こんなキレイな畑は見たことないです。さっそく芋から植えて見ますね」
ミコトさんはそう言うと種芋をカットして、適当に植えようとする。すると、俺の中の農民の血が騒ぐ。
「ちょっと、待てーいっ!!」
「キャッ、な、何ですか、オッさん?」
叫んでしまった……
「いや叫んでゴメンよ、ミコトさん。その職を【農】にしたからか、適当に植えるのが許せないという感情が湧き上がってきてね…… 今から畝に植える場所を示すようにするから、切った種芋をその印の場所に置いてもらえるかな?」
「そうなんですね! 農になったら農業に妥協できなくなるオッさん! 素敵です!!」
いや、そんな大層なモノじゃないですよ、ミコトさん。そして、俺は三十センチ間隔で印が入るように土魔法を使用した。
な、何でこれが一番消費魔力が高いんだ? 畝立てが消費魔力30だったし、低いだろうと思ったんだが、60も消費してるよ。
『お答えしましょう、マスター。細かい作業となりますので、魔力操作に慣れてないマスターは余分な魔力を消費してしまっているんです。魔力操作の上手な人ならば、消費魔力は15ぐらいでしょうね』
そうか…… 魔法を使うのは
『残念ですが、マスターの職は魔法に特化してる訳ではないので、操作を上手くするのは繰り返し魔法を使用して感覚を掴むしかありません。頑張って下さい』
コツとか無いのかよ。魔法に特化してたらコツなんかも初めから分かるって事なんだな。まあ、無いものはしょうがないと諦めるとしよう。
そして、俺は見た…… ミコトさんが切り口を上にして種芋を置いているのを……
「ちっがーうっ!! 芽が上になるように置いて下さい!!」
ああ、また叫んでしまった…… ゴメンよ、ミコトさんと心の中で謝る俺。
「キャッ、ご、ごめんなさい。そうなんですね。『ああ、妥協を許さないあの叫び! 素敵だわ! ワイルドオジサンがそのまま、手取り足取り腰取りで私を指導して、そして、遂にはイケナイ場所に手が伸びて……』ハッ! えっ、えっとどうして芽を上にするんですか?『危うく妄想に
「ミコトさん、芋の芽は上に向かって伸びて茎と葉を出します。下向きに植えてしまうと茎が下に向かって伸びてから上に向かう事になるから成長阻害になってしまうんだよ」
と知ったふうに言ってるが、コレは本当。勿論、オッサンの知識としてあるもので、職が【農】だから分かった訳じゃないよ。死んだ婆ちゃんが畑をしていて、子供の頃に手伝ってたからその時に教えてもらった。
「あ、そうなんですね。この芽からまた芋がなるのかと思ってました……」
「まあ、確かにそう考えてしまう人もいるよね。でも、植物である限り光合成が必要だから、土から茎を伸ばして、葉をだすからね。それじゃちゃちゃっと植えようか。手で植えてみたいんでしょ?」
「はい、私、泥遊びが子供の頃から大好きなんです! 海に行っても砂浜で一日中遊んでたから友人に呆れられてしまって……」
おっと! オッサンの頭の中にビキニ姿のミコトさんが出てきてしまったぞ。
『マスター、
何でお前にそれが分かるんだよ?
『私は宇宙的に見ても
説明になってないわ!
そんのバカ話をしながらも手は動かしていた俺。種芋が全て植わったので、次なるは植物魔法の出番だ。
「ミコトさん、ちょっと植物魔法を使ってみるよ」
「はい! オッさん!」
【植物魔法、成長促進】
ウオッ! ま、魔力をごっそりと持って行かれた感覚が……
『マスター、馬鹿ですか? 植えた種芋のすべてに魔法をかけたらそうなりますよ? 十二歳児でも分かる理屈です』
クソッ、相変わらず俺の失敗には
しかし、消費魔力200かよ…… 一つ二つだけをイメージして使えば良かったな…… 反省。
けれども確認したら、今植えたばかりの種芋から茎が伸びて葉が出て、八センチ〜十センチほどになっている。
「うわー! 凄いですね、毎日今の魔法を使えば二日三日で収穫出来るんじゃないですか?」
ミコトさん、確かにそうだけど、俺の魔力が持ちません。俺はその事を説明した。
「でも、この拠点もあと二週間ほどで出ていくから、それまでには収穫出来るようにして下さいね」
ニッコリ笑顔でそう言うミコトさんの目は包丁を砥いでいる時と同じだったので、俺は首を縦にブンブン振って頷いたのだった……
怖ぇーよ、この娘……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます