第6話 ウ・ルセーヤ国では
「ラーム姫様、仰せの通り二名を処刑の森に送り出しました」
「まあ、ダイアン、ご苦労様。今回の四人の方々は素晴らしい力をお持ちだわ! 今回こそあの忌まわしき帝国を潰せるわね」
「ハイ、ラーム姫様。人道的支援だと称して魔族にまで支援する帝国は一刻も早く潰さなければなりません!!」
「ウフフフ、そうねダイアン。貴方も頼りにしているわよ。さて、私はお父様にご報告してくるわ。その間、貴方は四人の英雄様を歓待してあげてちょうだい。お父様へのご報告が終わったら私も顔を出すから」
「ハイ! ラーム姫様の仰せの通りに!!」
部屋を出ていくダイアンに視線を送りながら、ダイアンが居なくなってからラームは独り言を呟き出す。
「コチラは順調ですわ、@?j/神様。ええ、勿論ですわ、あの四人は用事が済めば@?j/神様に捧げる事を誓いますわ! 私の忠誠心と共に……」
独り言では無かったようだ……
ラームはそれから国王である父の執務室に
召喚された若者四人は城の大広間での歓迎パーティーを受けていた。
「あなたが剣帝様ですね! 私はルメリア侯爵家の長女でアイリスと申します。まだお決まりで無いなら私と婚約を!」
「ちょっとお待ち下さいませ! 剣帝様、私はクライス伯爵家の次女でセイラと申します。そこの貧乳よりも私のような者の方がお好みでしょう? どうか、私と婚約を!」
カイリは
そこに救世主が現れた!
「まあ! 皆様、何ですの? はしたない、英雄様たちがお困りですわ! 早くお下がりなさい!」
報告を終えたラームが部屋に入るなりそう言うと、皆がサァーッと潮が引くように下がったのだ。四人はホッとした顔をしている。
「我が国の貴族が大変失礼致しましたわ、英雄様たちのご気分を害したならば、私が代表として頭を下げます。申し訳ございませんでした」
ラームがそう言って頭を下げるとカイリが慌てて否定する。
「おっ、王女様は悪くないっす。ただ、あんな風に言い寄られた事が無かったので戸惑っていただけっす。だから、謝らないで欲しいっす」
「カイリ様、お優しいお言葉を有難うございます。他の皆様も大丈夫でしたか?」
ラームがカイリの言葉に返事をしながら三人を気遣うと、三人とも大丈夫だと返事をした。それを聞いてから貴族子女に向き直りラームが言う。
「英雄様たちはコレから我が国にお力を貸して頂くのです、皆様のご迷惑になるような行為は禁止致します。もちろん、英雄様たちが望むならば止めは致しませんが、コチラからの行為は許しません。皆さん、よろしいですね?」
王女殿下の言葉に素直に頷く貴族子女の面々。そして、歓迎パーティーは再開された。今度は押し寄せて来る者はおらず、みんなが静かに四人に質問をしている。
「まあ、それではショウ様とサクラ様はご
公爵家の三女だというマリアが雰囲気の似ているショウとサクラの関係を聞いてそう褒める。
「いえ、これで中々のお
ショウも公爵家のご令嬢相手に丁寧な口調を心がけているようだ。王女様にはほぼタメ口だったが…… どうやら公爵家のご令嬢はショウの好みの顔立ちとスタイルらしい。
「まあ、とてもそんなふうには見えませんわ。サクラ様、もしもよろしかったら
そう問われたサクラも、このご令嬢の優しい雰囲気が好ましいのか、微笑みながら返事をする。
「兄の言う通り、自覚あるお
その光景を見ながらラームは顔は微笑みながらも内心では舌打ちをしていた。
『チッ、マリアったら余計な事を……
そんな内心を隠しながらラームはナツキに声をかけた。
「ナツキ様はサクラ様とはどんなご関係ですの?」
問われたナツキはあっけらかんと答える。
「ん? サクラとカイリは同級生で、ショウは元彼だよ」
「あの、モトカレとはどういう意味なんでしょうか?」
ラームは意味が分からなかった単語について聞いてみた。
「あ、ああ。そうか。えっとね、私たちが居た星だと結婚前に彼氏、彼女となってお付合いをするの。婚約者みたいな重い関係じゃなくてね。で、お互いに合わないなぁとか、どっちかが合わないって思ったら別れるの。関係を解消するって言うのかな? でも、別れたからって喧嘩して別れたりしたんじゃ無ければ友達としてのお付合いは続いたりするの? 分かるかな? コッチの世界の事は知らないけど、そんな関係って無さそうだもんね」
ラームは何となくニュアンスは分かったので、頷いて分かったと示した。
「それではショウ様とは今はお友達という事ですのね?」
「うん、そうだよ。ショウとはお友達」
『それならば私の入り込む余地は有りそうね。いえ、ショウ様よりはカイリ様の方が堕としやすいかしら? そうね、カイリ様から@?j/神様の信者になって貰いましょう。ウフフフ、カイリ様は
心の中で今後の計画をたてるラーム。しかし、物事は計画通りにならない事をラームは知る事になる…… それはまた、先の話になるが。
そんなラームにマリアが声をかけてきた。
「ローラお姉様、ショウ様とサクラ様をうちの屋敷にご招待してもよろしいでしょうか? うちの領地で狩りが盛んだとお話をしたら、是非ともお邪魔したいと仰っているのだけど、ダメでしょうか?」
「まあ、ショウ様、サクラ様、狩りにご興味がお有りですの? それならば先ずは王都近くでレベルを上げられてからの方がよろしいかと思いますが?」
ラームはマリアには返事をせずにショウとサクラに直接そう言う。しかし、ショウはこの機会にマリアとお近づきになりたいと思っていたので、ラームの提案を断る事しか考えてなかった。
「いや、どうせならばなるべく早くこの国の役に立ちたいと思うから、最初から早くレベルを上げられるように、マリア嬢の領地にお邪魔させて貰おうと思う。その方がこの国の為になると俺は思うが、どうだ?」
マリアには丁寧語で、ラームにはタメ口になる態度の違いに周りの貴族の子女たちはざわつくが、ショウは気にしてないようだ。
そして、ショウの言葉にナツキも飛びつく。
「あっ、それなら私も行きたーい! いいかな、マリアちゃん?」
コチラは安定のタメ口だ。
「はい、勿論ですわ。ナツキ様」
ここで引き止めても良い結果にならないと思ったラームは仕方なく了承する事に。そして、カイリの方を見て聞いた。
「カイリ様も行かれますか?」
しかし、カイリは首を横に振って行かないと返事をした。
「自分は王宮の騎士団さんに鍛えて貰うっす。いいっすか、ラーム様?」
カイリの返事にホッとするラーム。
「まあ、勿論ですわ、カイリ様。それでは、ショウ様、サクラ様、ナツキ様はセーヤ公爵領で実地訓練を、カイリ様は王宮で騎士団と共に訓練をするという事でよろしいでしょうか?」
ラームの問いかけに四人は頷いた。そして、明日は一日をユックリと過ごして、三人は明後日、公爵領に出発する事に決まった。
その夜、ショウの部屋に集まる四人。
「カイリ、大丈夫だとは思うけど気をつけるんだぞ。出来たらお前にも一緒に来て欲しかったんだが……」
「ショウさん、大丈夫っすよ。自分も無茶はしないっす。あの王女様やこの国の事を確りと調べて見るっすよ」
「あのオジサンとミコトさんがどうなったのかは私たちの方で公爵様に探りを入れてみるわ。だから、カイリくんはこの国の情報を集めるだけにしてよ」
ナツキが少し心配そうに念を押す。
「ミコトさんもあのオジサンも無事だと良いんだけど…… でも、召喚されるって本当にあるのね。みんながお芝居してるのは分かったから私も驚きを必死に隠してたけど、地球にはもう戻れないのかしら? 兄さんはどう思う?」
「わからないな…… その情報も公爵様にそれとなく探りを入れてみる事にしよう。マリア嬢は何も知らない感じだったから、信用しても大丈夫だとは思うが、コレからは今まで以上に慎重に行動しよう」
四人の話合いは遅くまで続いたようだ……
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