第3話 ジョブについて
はい、脳内アナウンスが仕事をしてくれましたよ。
『それでは説明を開始いたします。現状この場所を中心に半径二百メートルの範囲は初心者結界を張っており、安全です。それではジョブ士農工商についてお知らせ致します。概ね、マスターの思っている通りです。以上』
いや、説明になってねぇーよ!
「いえ、あの、オッサン。私が言いたいのですけど……」
あ、声に出てた? ごめんね、ミコトさん。そこで俺はミコトさんに聞いてみた。
「あのさ、俺の頭の中でアナウンスする奴が居るんだけど、ミコトさんにも居るのかな?」
そう聞いた途端に危ない人を見る目で俺を見て五歩ほど後ずさるミコトさん。待って、違うから、可怪しくなってないから。
「いえ、私の頭の中にはアナウンスする人は居りませんけど……」
だから、それ以上後ずさらないでー。その時に俺のアナウンスがハアーとため息を吐き、言った。
『全く、しょうがないですね。ファンタジー世界に来た事は理解してるくせに初心者ナビゲーターは信じられませんか?』
「えっ!? 何、何ですか、今の声は? オッサンですか?」
おお、優秀じゃないか。ちゃんとミコトさんにも声が届けられるんじゃないか。最初からそうしてくれたら俺も疑われずに済んだのに。
『マスター、私はジョブ士農工商に基づく初心者ナビゲーターです。本来ならば他のジョブの者に説明する必要が無いんですよ』
今、気がついた。コイツ、俺と会話をしてるって事は、俺が五月蝿いって言ってたのにも関わらずにワザと同じ質問を繰り返してやがったな。
『おや、気づきましたか? まあ、気づくのは遅いですが』
クッ、初心者を脱するまでは世話になろう…… だが、覚えておけ! 俺は最速で初心者を脱してやるからな!
『まあ、無理でしょうけど了解しました。そちらの料理研究家さんもコレでマスターが可怪しな人じゃ無いと理解しましたか?』
「あ、あ、はい。理解しました」
『それは
「あ、はい、よろしくお願いします」
『貴女のジョブ、料理研究家、発明師はそのまま地球での仕事が関わってます。残念ながら戦闘職ではないので体力も魔力も初期値は低いですが、レベルを上げるとそれなりに上がっていきますので、頑張って下さい。料理研究家は食についてのスペシャリストです。貴女に分からない食材はありません。そして、解体もそこら辺の狩人よりも早く、正確に、なおかつキレイにこなす事が可能です。発明師は細工師でもあり、素材があれば貴女が地球で作っていた物や、コチラで閃いた物を作る事が可能です。閃いた物に必要な素材も分かります。スキル道具箱にはその為の道具と調理道具一式が入っております。素材収納は料理素材、発明素材の両方を入れておけます。中の素材が腐る事は一切ありません。また、料理し終えた素材も入れることが可能です。コレからの生活にご活用下さい』
「はい、分かりました。説明を有難う」
『どういたしまして。では、マスターの士農工商についてご説明しましょう。士は先程変更してもらったのでわかると思いますが、武士です。農は農業に特化してますが、植物魔法と土魔法を使用できます。植物魔法の中には水魔法、火魔法、風魔法が含まれます。工は工業を意味し、この世界では木工師、鍛冶師、錬金術師などが当てはまりますが、マスターの工はそれに留まりません。地球での工を具現化可能です。商はそのまま商人です。アイテムボックス、鑑定、交渉など、
長い長い説明が終わっても俺の理解度はそれほど進んではいないが、それでもかなり良いジョブなのは分かった。それはミコトさんにも分かったようで、
「オッサン、よろしくお願いします」
と頭を下げている。だが、俺としては料理なんか出来ないから、是非ともミコトさんに同行してもらいたい。獲物は俺が狩るから、どうかよろしくお願いしますと頭を下げて頼んだ。
それから小一時間ほど結界内部を
季節感ゼロの食材の宝庫に歓声を上げながらそれらを採取するミコトさん。
「オッサン、ここは凄いです! コレだけあれば二人ならひと
それなら良かったです。オッサンも人並みに食欲はあるから安心したよ。
で、ここで問題が発覚した…… トイレ問題だ…… そろそろミコトさんも我慢の限界なんだろう。足をモジモジさせている。俺も小がしたい。が、食材にかけてしまったらと思うと……
何て思っているとナビゲーターから情報が届く。
『マスター、先程も言いましたが、武士の状態でも工のスキルを使用可能です。今すぐ検索してみてください。女性のお漏らしに興奮する性質をお持ちならば、後二十分ほどで興奮する事が出来ますが……』
俺はオッサンだが、そんな性癖は持ってないわっ! しかもこのナビゲーター、意地の悪い事にミコトさんにも聞こえるように言ってやがる…… 安心してください、ミコトさん。既に脳内検索は終わってますよ。
【
公園などでお馴染みの公衆トイレが現れた。俺とミコトさんはそそくさと中に入る。ちゃんと男女別だからな。
そして、ひと足早く外に出た俺はフラフラとなり倒れた。意識が無くなる寸前にナビゲーターの声が、
『あっ、忘れてました。
はっ、早く言えよなー……
良い匂いがする。とても美味しそうな匂いだ。そう言えば腹が減ったな…… って、俺は意識を失って……
ガバッと飛び起きると辺りは薄暗いが、焚き火が側にあり、少し離れた場所ではミコトさんが地球でうちの商会に卸してくれてた簡易かまどを使用して料理を作っていた。
「オッサン、目が覚めました? ビックリしましたよ、トイレから出たら倒れてたから。ナビゲーターさんから教えて貰いましたけど、ちゃんと職を変更しないとダメですよ。でも、トイレについては本当に助かりました。有難うございます」
あの野郎…… 自分が言うのを忘れていた事をミコトさんに伝えてないな…… こうなったら一刻も早くおさらば出来るように、本当に早く初心者を脱しようと心に誓った。
「あ! それと私もですけど、オッサンもレベルアップしたそうです。ステータスの確認をしておいて下さいね」
そうかスキルを使用したからレベルアップしたんだな。よし、お言葉に甘えてご飯が出来る前にステータスを確認してみよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます