第2話 外れジョブ二名
名前:ミコト・カツラギ
性別:女
年齢:二十四才
体力:40
魔力:30
武器:無し(+0)
防具:無し(+0)
攻撃:20(+0)
防御:10(+0)
「まあ、何ですの? このジョブは? 知ってまして、ダイアン?」
「いえ、ラーム姫様、私も知りません。が、体力、魔力が共に低く役に立ちそうに無いかと……」
「そのようね…… カツラギさん、あなたはコチラにお立ち下さい」
そう言って葛城さんを四人組と別の場所に立たせる王女様。
そして、遂に俺にご指名がきた。
「さあ、最後はあなたですわ。よろしくお願いします」
言われて俺は拒否しようかと思ったが、厳ついダイアンさんに早くしろみたいな感じで睨まれたので、仕方なくガラス玉の前に進み出て手を置いた。
名前:オッサン
性別:男
年齢:五十才
体力:50
魔力:50
武器:無し(+0)
防具:無し(+0)
攻撃:30(+0)
防御:30(+0)
「まあ! あなたもですの? 知らないジョブですわ? どなたかご存知かしら?」
四人組にそう尋ねる王女役。けれども四人組も全員が首を横に振った。そして、葛城さんも……
えっ!? みんな知らないの? 嘘だろ? 士農工商だよ、武士、農業、工業、商業という
オッサンである俺は若者みんなが知らない事にショックを受けている。そこにカイリという若者がトドメをさした。
「何て読むんすか? シノウコウショウ? ああ、死のう交渉の当て字っすか。死ぬために交渉する仕事っすね!」
それを真に受ける王女役。
「まあ! 何て不吉な! あなたもコチラにお願いしますわ。いえ、ダイアン、このお二人は何時ものようにお願いしますわ」
「ハッ、ラーム姫様の仰せのとおりに! 我について参れ、そこの二名!」
で、俺は葛城さんと共に厳ついダイアンさんについていく事になった。
そうか、コレで別室で
ダイアンさんについて行きながら葛城さんと話をしようと思い、話しかけてみた。
「いやー、凄い役者さんたちが揃ってたんですね。俺なんてテレビとか見ないから全然分からなかったけど、葛城さんはご存知の役者さんがいましたか?」
オッサンの俺はやっと思い出したんだ。この人は本当にうちの会社にお金をガッポガッポと稼がせてくれてる葛城さん本人なんだと。
そう、社長が言ってた言葉を思い出したんだ。
「○○さん、葛城美琴さんは若くて美人で料理上手で素晴らしい方なんですよ。でも、男性にはあまり興味が無いようで、私がお誘いしても
オッサンの俺よりも二十も年下の社長はそう言って笑ってたっけ。その時に一つ教えて上げれば良かったなぁ。銀座のクラブでモテるのはお金を払ってるからだよって…… 今からでも遅くないな、会社に戻ったら教えて上げよう。
そんな事を呑気に思っていたら、葛城さんが戸惑いながら俺に言ってきたんだ。
「あの…… オッサンさん。コレって撮影とかじゃなくて現実に起こっている事だと思うんですけど……」
葛城さんが俺にそう言ってきた時にダイアンさんがある部屋の扉を開けた。
「さあ、二人はこの扉に入るのだ。おっと、忘れていた。レイアは居るか?」
ダイアンさんの呼びかけにさっきまで確かに居なかったメイド喫茶で働ける服装をした女性が居た…… いや、居なかったよね、何処から現れたんだ? ハッ、そうか、ココはカラクリ屋敷なんだな。
「ダイアン様、コチラに何時ものように準備をしております」
「ウム、ご苦労。では二人にはコレを渡そう。何とか頑張って生き延びてくれ。健闘を祈る」
そう言うと、俺と葛城さんにズタ袋のような物を渡して背中を押して部屋に入れた。
部屋? いや、森なんですけど? って振り返ると扉が無い?
「ウェッ! 葛城さん、扉が無くなってるよ! 凄いマジックだね! でもココは何処なんだろうね?」
俺の言葉に葛城さんはこの人は何を言ってるんだという目線で喋り出した。
「オッサンさん、さっきも言いかけたんですけど、コレは現実に起こっている事です。私たちは地球じゃない違う世界に巻き込まれて召喚されたんだと思います」
うん、オッサンも薄々は気がついてたよ。この髪が少し薄くなってきた頭でね……
だってさっきから脳内で変なアナウンスが聞こえてるんだよ……
『フィールドに出たのを確認しました。現在、商人となっております。至急、武士への変更を推奨します』
ってね。いや、ちょっと不親切だよね。変更しろって言われても如何やればいいか分からないんだが……
「あの、それでオッサンさん」
「いや、オッサンで良いからね、葛城さん。サンさんって二つ続くと変な感じだからさ」
「あっ、はい。名前が本当にオッサンなのには驚きましたけど、ではオッサンと呼ばせて貰います。私の事もミコトと呼んで下さい。それで、一つお聞きしたいのですが、士農工商って何ですか?」
俺は微に入り細を穿ってミコトさんに説明をしたよ。最後に、
「小学校の社会科で習わなかった?」
って聞くと、
「先生の説明では江戸時代には武士と農民、それ以外の職の人を町民とひと括りにしていたというのを聞いたのですが……」
うそーん? そうなの? 士農工商ってもう学校で教えてないの? それじゃ若い子は知らないよね。そうかぁ、コレがジェネレーションギャップっていうやつか…… 俺もオッサンになる筈だよな……
ええい、脳内アナウンス、
『ステータスと脳内で唱えて画面を表示してください。ジョブの士農工商の士を強くイメージすると変更できます』
おっ! 説明が出たよ。言ってみるもんだね。
「あの、それでオッサン。多分ですけど私たちは役立たずとして放り出されたんだと思います。コレからどうしましょうか?」
あら、ミコトさんがちょっと気弱そうにそう聞いてきたよ。オッサン、若い子に頼られるなら張り切っちゃうよ!
「そうだね、ミコトさん。先ずは町を目指そうか。その前に、ここで自分の能力について良く確認しておこうよ。それと、もらったズタ袋に何が入ってるか見てみようか」
俺が具体的な提案をするとホッとした顔をしたミコトさん。うん、このオッサンに任せなさい。
で、俺がステータスって脳内で唱えたらさっき映ってた画面が見えるからと教えてお互いに十分ほど能力とズタ袋を確認していた。
脳内アナウンス、五月蝿い。
『武士に変更されました。装備も変更しますか? 今なら武士の初級装備が揃っておりますが?』
うーん、今は能力の確認をしてるんだけど、変更しないとまた延々と同じ質問をしてきそうだから変更するって思ったら、アラ不思議?
オッサンの服が一瞬で江戸時代になっちゃったよ…… 腰には大小が揃ってるし…… 何か感覚が鋭敏になってる気もするよ。俺の隣でミコトさんがビックリしてるけど、オッサンもビックリしてるからね。
『装備変更完了しました。これにより武士の体力、魔力、攻撃、防御となります』
名前:オッサン
性別:男
年齢:五十才
体力:380
魔力:200
武器:無銘の大小(+60)
防具:羽織袴草鞋(+30)
攻撃:130(+60)
防御:70(+30)
うん、何か強そう……
「オッ、オッサン、それって……」
はい、説明しないとね…… って俺にも良く分かって無いんだけどね……
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