17話 誰にも見つからない
利玖が駆けつけた時、ライブ会場はすでに無人になっていた。
中に入って確かめるまでもない。外からでも、講義室の窓から残らず明かりが消えて、人が出入りしている様子がない事がわかった。
スイッチを切り替えたみたいに、味気ない共用施設としての外観に戻った講義棟を、利玖は呆然と見上げた。
やがて、利玖は少しずつあとずさり始めた。そうすれば、まだどこかに明かりのある区画を見つけられるかもしれない、とでもいう風に。
いくらも後退しないうちに、腰が硬い物にぶつかる。
さらに後方の、二メートルほど下の地面に作られた駐輪場に降りる階段の手すりだった。ひどく錆び付いているので、これを掴んで昇降する学生はほとんどいない。
ぶつかって、そこで止まったまま、しばらく利玖はぼうっとしていたが、やがて、今着ている服が遥の物である事を思い出すと、ふらりと体を起こして歩き始めた。
どこに向かっているのか、初めは自分でもわからなかった。
前方に高いグリーンのネットが見えてきて、どうやら野球場に行こうとしているらしい、と推測する。
利用者の多い施設が集まっている区画を避けて作られた野球場は、ナイタでもやっていない限り、夜はほぼ完全な暗闇だ。下手に場内を荒らすと
あそこで、隅の方にうずくまってじっとしていたら、夜明けが来たって誰にも見つからないだろう。
何しろ自分は小さいのだから。
良縁にめぐり会うまじないをかけてくれた、優しい潮蕊の夫婦神。
夜道を一人で戻るのを最後まで心配してくれた、遥と汐子。
もし間に合わなくても、ライブに行きたいと思ってくれただけで十分だと、笑っていた史岐。
今日一日を思い返せば、自分を気遣い、親切にしてくれた人達の顔ばかり頭に浮かぶ。
それだけに、宇宙の
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