【KAC20237】僕はいいわけばかりするから

天雪桃那花(あまゆきもなか)

浮気なカノジョ

 君と僕

 恋人になったのは

 中学生のころ


 うきうきとした

 輝いてた

 付き合い出したころ


 世界は明るく

 君と僕の周りには

 淡い美しい色があった


 時は残酷だ

 互いの愛に永遠などあるものか


 いいや、僕には一方通行の愛があるから

 たちが悪いのだ


 いまはなに色?


 ねえ

 嘘はなに色をしてる?


 透明、灰色?

 君の心にある時は無色透明で、

 外の世界に出た時は灰色なんだろう


 嘘を嘘で隠して塗りつぶす

 灰色は重なり重なって

 かぎりなく黒に近く染まっていくのだろう


 僕と君の部屋に

 たくさんたくさん嘘が散らばって


 いいわけが

 ベッドにキッチンにリビングに

 とっ散らかっていた


 夜は一人――

 僕の心に、僕の家に、

 君はいつから住んでいるのだろう


 君はさ、たとえば気まぐれな猫みたい

 すみかと好きな相手をあちこち持ち合わせて


 それから、たとえば

 渡り鳥みたいに寄る場所があって


 自由奔放で、

 驚くほど自分の声に欲望に忠実で、

 我がまま、なカノジョ


 彼女は僕に嘘をつかない

 いいわけもしない

 浮気をしても、無邪気

 僕が訊ねても包み隠さず、浮気を認める

 ――正直だ、残酷なほどに


 僕は彼女に嘘をつく

 いいわけをする

 浮気をしない僕は、彼女といるために、

 自分の心にいいわけばかりをする。

 彼女に問われても、

 僕は君が他の男をいっとき愛しても、平気だと嘘を吐く

 ――嘘つきだ、偽りと我慢ばかり


 君は僕から離れない

 僕が君から離れないのを知っている


 浮気なカノジョ

 無邪気なカノジョ


 いいわけは積もり積もって

 部屋と僕の心に

 しらずしらずのうちに


 愛しいも喜びも

 覆って隠してしまった


 一緒にいたい

 一緒にいたくない


 僕は君のなに?


 「好きな人」


 僕はなんばんめ?

 聞かないのは知りたくないから

 聞かないのは知っているから


 僕は君が好きだから 許す

 僕は君が大好きだから 別れない


 好きだから

 好きだから

 そんな

 いいわけ

 また、重ねてる


 部屋は灰色で

 君はだれ色?


 僕は君色と灰褐色に染まる

 明日は黒い闇色に

 いっそ塗られてしまえばいいんだ

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