第4話 大出世
「!! こ、これは!」
世間では休日にあたる日、彼は
彼は迷うことなく仕事用のスマホを手に取った。
「もしもし、私だ。休み中すまないが大至急『Ryugo』という絵師について調べて欲しい。特に今の勤務状況は念入りにな。私の構想の中にあるピースにピタリとはまる逸材だ!
急がないと持っていかれるぞ! 10年……いや30年に1人、いるかいないかの才能だぞ! 今すぐ調べてくれ!」
◇◇◇
「? 何だこれ?」
「? エンペラー、ゲームス……? まさか、あのエンペラーゲームス!?」
エンペラーゲームス……「
その名の通り日本のソシャゲ市場では売り上げ2年連続1位の、まさに「ソシャゲ界に君臨する
そのエンペラーゲームスよりメールが送られていた。内容は自称エンペラーゲームスの社長からの「ぜひとも君が欲しい! わが社に来てくれないだろうか!?」という熱烈なラブコールだった。
「とりあえず会って話そう」とメールを打ったところ「ぜひともそうしたい」と返事が来て、後日会社の社長室に招かれることとなった。
ちなみに
メールが届いてから5日後……
都内有数の一等地、そこにエンペラーゲームスの本社はあった。地元ではまず見ない高さのビルにひるむ。
「『Ryugo』です。社長さんからご用件をいただき参りました」
「ああ『Ryugo』さんですね、話はお聞きしています。こちらを首に下げてお入りください」
とはいえビビりっぱなしではいられない。守衛に話しかけて
「あなたが『Ryugo』さんですね? 社長がお待ちです。ついてきてください」
「おお! 君が噂の『Ryugo』君か! いやぁ会いたかったよ!」
中にいた30代かそこらの、この規模のゲーム会社社長としては非常に若い方に入る男が
いかつい腕時計こそしてなかったが、スーツも靴もネクタイに至るまで1流の仕立てで、いかにも「頂点にいる」人間の姿だった。
「今回わざわざ君を呼んだのは他でもない、次期プロジェクトのためだ。実を言うとだな、私の構想にある次回プロジェクトのキャラが、まさに君の描いた絵そのものなんだ。
私は君の事をぜひとも欲しい! 君にはプロジェクトのチーフグラフィッカーの地位を用意しよう。どうだ、やってくれるか?」
今まで背景ばかり描いていた自分が急にチーフグラフィッカーの大役に!? 信じられないようなオファーだった。
「実を言いますと今まではグラフィッカーをやってたんですが、背景やモブキャラばっかりで主役キャラの絵なんてやった事ないですし不安なんです。
そんな私にチーフデザイナーなんていう大役が務まるかどうか不安で……」
「なぁに安心しろ。社内には教育機関があるから、みっちり教育を受けた後での仕事だから大丈夫だろう。あとは報酬だ。いくら欲しい? 言い値で言って構わんぞ」
言い値でいい。その言葉を聞いて
「1000万は欲しいです」
「よし分かった1000万だな。いいだろう。よろしく頼むぞ」
そう言ってエンペラーゲームス社長はスッと右手を出す。
再就職した際の諸々の手続きを経て数日後。
「こ、こんな豪華な設備、本当に俺が使って良い物なんですか?」
「当然だ。君にはそれだけの価値があるからこそ、用意したんだ。それと、しばらくは研修だな。1ヶ月もしたらチーフグラフィッカーとして動けるようしっかりと教育するからついてきてくれ」
「は、はい!」
丸山ゲームスでは社員の誰からもバカにされ疎まれていたのに、今では誰もが自分の事を特別な存在として見てくれるため、仕事はキツイが随分と居心地のいい場所だった。
「やぁ
エンペラーゲームス社長が様子を見に来た。彼にとってどうやら
「結構充実していますね。昔は今ほど絵が上手くなかったんでリテイクを何度も出されてたりしましたね」
「なるほど。お前ほどの絵をリテイクとは相当な贅沢だな。まぁいい、何かあったら遠慮なく私に言ってくれたまえ」
- 1ヶ月後 -
給料日になり、
「あれ……?」
給料として1000万が口座に入ってる。
どうやら社長は「月給」1000万と勘違いしているらしい……「
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