偽名殺人鬼始めました。

小鳥居。

抹殺の任務

―真冬の夜中2時。冷たい風が高層ビル郡をすり抜けて音を立てて吹いている。そんな中私は何をしているかって?

…つい先日、身バレをしかけて始末書を殴り書きをしている私。""高校3年生である私は本職の暗部組織「パートナー」の組員であることがバレかけたワケ。暗部であることは隠すのが絶対条件で、Aクリエイトという派遣会社としてパートナーは運営している。一応こう見えても国から補助金が出ている。まぁ人を消したりとか、隠蔽とかが任務で表には絶対に出せないけれど…。

そして、私自身は根暗でオタクでロクでもない人間だ。こんな社会なんてクソ喰らえって思っているから今こんなことをしているし、学生でもある。もう一つ理由があるとすれば、社会人としての立場を取ると「パートナー」としては学生としての潜入調査もできないため。もちろん童顔に見えてかつ、身長の小さな私が任命されたワケ。

ついでもう一つ。私は全てにおいてで生きている。夜舟やふねゆかりという名前で。偽名のおかげか、実名なんてとうの昔に忘れてしまった。もちろん他の名前もあるけど、ここで言うと、ややこしくなるので割愛で。


―あと、私は学生生活を決して満喫したいわけじゃない。むしろこんな生活は早くおさらばしてデスゲームに専念したいけれど、まあこんな顔じゃ当分無理だろうなぁ。

ともかく、始末書かつ受付案内をするのは久しぶりで、なかなか体が動かせずに苛つきが出てきた。

…という時に訪問者が来たようで、なかなか面倒だけれども、報酬がいいから任務を受けてしまうワケだ。

「はい。どうぞ。」

「こちらAクリエイトでよろしかったでしょうか?」

「ええ。中に入られてどうぞ。」

「お邪魔しま…って、なかなか若い子じゃないか。キミに要はないよ。他の人に変わってくれるかい?」

50代半ばで白髪交じりの中年男性だった。よく私はタメ口で話しかけられるくらいには若く見られるのは先程言ったはずだが、いい加減見た目で判断するのはやめていただきたいもの。イラッとしつつ笑顔で対処をするのが、いつものことだ。

そしてだが、この男の顔を私は一方的に知っている。それはと思う。

「いきなりタメ口ですか、私であってますよ。Aクリエイトの者なので。」

「キミに任務ができるとは到底思えないから他の人を呼んでほしいわけなんだけど。年下ってなったらタメ口にでもなるさ。キミ、高校生くらいじゃないか。」

「一般企業の場合、第一印象で仕事は決まると言っても過言ではないかもしれませんが…。そもそも今は夜中の2時です。他の者は任務の真っ最中で、今の私は受付をしているだけなんですがね。」

「…。高校生なのは認めるのか。」

「一応です。肩書は大事なので、これ以上疑うなら、私はあなたをころす予定ですが。どうでしょう?」

と微笑みながら、猛毒の入ったペン型の注射器を取り出した。…もちろん死にはしないけど、脅すにはちょうどいい。

ころすってそれで…。分かった。信用しよう。」

「では名前と依頼をどうぞ?」

「俺の名前は山田風行やまだかざゆきだ。簡潔に言おう、そのペンを他のものに使っていただきたくてね。」

「誰にこのペンを"書いて"ほしいですかね。」

「S高等学校の教師である、佐々木優香ささきゆうかをそのペンで奈落に沈めてほしいわけだ。」

なるほど。恐らくだけど、私怨辺りだろう。もちろん理由も聞いておかないと…ね。

「承知致しました。が、ペンで佐々木さんを"書く"の理由をお伺いしても宜しくて?」

「どうも裏の金を使って何かを企んでいるらしい。」

「私もで生きてる人間なのに私のことは信用するのですね?」

とまたしても微笑んでしまった。

「あとですが、アナタは解雇できるレベルの立ち位置の方ではなくて?」

「…ふむ。よく分かっているな。解雇しようとしたら訴えると言い出すものでな、詰まる所、俺の信用問題になりかねない。」

表出したら信用が失墜する…つまり教育委員会事務局としては佐々木優香という膿を取って早く綺麗になりたいワケか。

なかなか闇深いけど、暗部ならまだこれはマシな案件だろう。

「信用の担保ですか。まぁ妥当でしょうか。理由としては納得いたしました。それではどの流れで佐々木さんを"書かせる"か軽い流れを紹介しましょう。もちろん個人情報をもらった以上、支払いになりますのでご了承下さい。」

私はサッと説明同意書や、個人情報の保護の同意書、本契約書などを机から出した。

「本格的だな。」

「ままごと程度と思うのならぜひ帰ってもらっていいですが…。とりあえず流れとしては組員を数名S高等学校に教師として派遣し、スパイ活動をしてもらいます。実態が掴め次第、山田様にご連絡し、本当にこのペンで"書く"かを決めてもらいます。」

「了解した。金銭は用意している。」

「では手始めに10万円。頂戴いたしますので。」

山田とやらは紺色のバックから札束を出してこういった。

「はいよ、キミ。丁度だ。あとせめて名前くらい教えてくれてもね。」

「こちら控えです。あと名前は仮に言ったとしても偽名ですし信じないでしょう?」

と笑顔で礼をした。

「どこまでが、本当なのかわからないな。じゃあ始末を頼むよ。」

と苦笑いされつつ、山田はAクリエイトを去っていった。

私は気づいた。この人は…。


―私はとある人に電話をした。

Prrr…

「こちら夜舟。まさかのが来た。スパイ活動はどうです?佐々木さん?」

「自殺願望でもあるのかしら。私が脅したらそちらに行くことは分かっていたけれど、どう処理しようかしら。」


―微笑みながら始末を考えている佐々木さんはとても怖かった。

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偽名殺人鬼始めました。 小鳥居。 @takayarn82

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