第二十七話

 11マス目の公園に着くと、機械は〝ピーッ〟と鳴った。

【SPECIAL CHALLENGE】という大きな文字が、点滅しながら流れ出た。

スペシャルチャレンジとは、一体何なんだ……。

それから画面上には、別の文字が流れ出た。


 【30分以内に自分と同じ誕生日の人物と同意の上で握手をすると3マス進める】

自分と同じ誕生日の人物と握手。

自分の誕生日である十二月十九日は数週間前だったと気付いた。

 

 「えっ、九月ですけど……。何でですか……」

「いや、ちょっと……」

また駄目か。

俺と同じ誕生日の人物はいないのか……。手当たり次第、通行人に誕生日を訊いていく。

完全にヤバい奴だが、そうも云っていられない。

 

 「ちょっと、いいかな」

「何」と、男は立ち止まった。

逆立った金髪。

黒い肌。

じゃらじゃらと沢山着けられたネックレスとブレスレット。

赤いアロハシャツとデニムの短パン姿の屈強な躰。

相手を間違えたかと思ったが、男はかなり間抜けそうな顔をしている。


 「変な事訊くけど、誕生日っていつ……?」

「は? 何云ってんの」

「いや……、とにかく、教えてくれよ」

「意味解んねぇんだけど」

「頼む、教えてくれよ」

「何何、何なの?」

「教えてくれよ、頼むから」

「毎週日曜だよ、俺の誕生日は。毎週日曜」

やはり相手を間違えたらしい。

だが、こいつが俺と同じ誕生日の可能性はある。

「教えてくれよ、いつなんだよ、誕生日」

「っせぇーなぁっ! 十二月だよ、十二月っ!」

「何日っ!?」

「十八だよっ! それがどうしたんだよっ!」

その時、機械が〝ピッピー〟と鳴った。ボーナスチャレンジの時間が終わったらしい。


 ルーレットは【2】で停まった。

 

 13マス目の公園に着くと、機械は〝ピーッ〟と鳴った。

【人とじゃんけんで3勝する】の文字。

 

 「よっしゃあ! 勝ったぁ!」

少年はいちいちはしゃいだり悔しがる。

「これで、二勝二敗。次で決着だねっ!」

少年は息を強く吹きながらストレッチを始める。

「じゃんけんぽんっ!」

俺がチョキで、少年がパー。よし、三勝だ。少年は奇声を発しながら頭を搔きむしった。

何故、何も賭けていない、見ず知らずの男に突然持ち掛けられたじゃんけんにそれ程熱を出せるのだろう。


 ルーレットは【1】で停まった。


 それから、【1マス戻る】という指令と【1】で停まるルーレットに因って、14マス目と13マス目の公園を二往復する羽目になった後、ルーレットが【2】で停まり、ループから抜け出せた。

残り時間は、四時間を切っている。

 

 16マス目の公園着くと、機械は〝ピーッ〟と鳴った。

【手助けをしてもらう】の文字。

手助けを、してもらう……?

困っている人を演じろという事か。

何に困っている設定にしよう。

どうすれば手助けをしてもらえるだろうか。

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