第二十三話
第四関門の日程が、クロシマの口から告げられた。
一気に、緊張が全身を伝った。
あと三日。
廣哉と自転車で通った道路をなぞっていく。
空しさはすぐに、必ず全ての試験をクリアしたいという思いに塗り替えられていった。
絶対に、廣哉を《天国》に連れて行く。
あと二日。
本能が緊張を取り払おうとしているのか、思わず、部屋をうろうろする。
気付くと、外は暗くなっていた。
絶対に、廣哉を《天国》に連れて行く。
あと一日。
緊張のせいか、いるだけで疲労を覚える。
どうにかしてしまいそうだ。
絶対に、廣哉を《天国》に連れて行く。
「これから月本様に行って戴く、第四関門の内容は――」
今までとは別の公園で、クロシマは口を開いた。
「すごろくです」
「すごろく……?」
「この試験では、行動力や人間性、運が求められます。では、ルールを説明致します」
ナンパ。宝探し。鬼ごっこ。そして今回は、すごろく。
「この辺りは二十箇所の公園が数百メートル間隔で存在します。それ等をすごろくの〝マス〟とし、この公園はその〝スタート地点〟です。試験開始と同時に機械の画面上にルーレットが表示されるので、ルーレットが止まった数字の分、移動して戴きます。ルーレットが止まると、そのマスの場所が画面の地図上に表示され、マスに着くと、無作為に〝指令〟が表示されます」
それからクロシマはスーツの内側から小型追跡カメラを取り出し、操作し始めた。
「試験中、月本様に課せられた指令の内容は私の機械にも届くので、私が此方のカメラの映像で月本様の合否を判定致します」
クロシマが手を放すと、カメラが上空へ飛んで行った。
「指令をクリアした後は再びルーレットが作動するので、指定された公園に向かって戴きます。そして、十時間以内に、〝ゴール地点〟である公園に着くと、第四関門突破となります。勿論、ルーレットが止まったマスでなければ指令は発動せず、ゴールもルーレットがゴール地点を指した場合のみ有効になる仕組みになっています。試験を終えた場合は、私が車で向かうので、その場でお待ち下さい」
それからクロシマは俺の左手を取り、機械を操作した。
地図、【10:00:00】というデジタル表記、【START】の文字が表示された。
「ルールは以上です。では、第四関門を開始致します」
クロシマは、俺の機械の画面上の【START】の文字を押した。すると、画面はルーレットに切り替わった。
赤色の【1】と黄色の【2】と青色の【3】が、縦に回転している。
その速度は弱まっていき、【2】で停まった。
地図に戻った画面には、【2nd spaces】という文字を指す矢印の下には【00.78km】と表示されている。
俺は公園を出た。カメラが真上を動く。
矢印が指す公園に着いたと同時に、機械は〝ピーッ〟と鳴った。
画面に目をやる。右端から現れた短文が流れていく。
【手助けをする】という文字。
それは左端に消えていき、再び右端から現れる。
手助け……?
困っている人を助けろという事か。俺は公園を出た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます