第二十二話

 制限時間は、残り一時間を切った。

赤ロボットは残り一体。

黄色ロボットは残り二体。


 絶対に、全てのロボットを見付けて、捕まえてやる。

辺りを見渡しながら歩く。

 

 民家の建つ十数メートル先の角から、黄色ロボットが現れた。

その姿は俺を感知し、間の角に消えた。

急いで後を追う。


 角を曲がると、黄色ロボットの姿があった。

それに向かって、走る。

逃がすか……。


 距離は何とか、少しずつ縮んでいく。

飛び蹴りをし、黄色ロボットは倒れた。

タッチパネルに手を伸ばす。

残すは、赤ロボットと黄色ロボット、一体ずつとなった。

 

 ロボットは、何処だ……。

【00:43:28】

【00:43:27】

【00:43:26】


 走りながら、ロボットを探し回る。

何処だ……。何処だ……。何処だ……。

やはり、ロボットの数が減っていく分、見付けるのも困難になっている。

【00:31:19】

【00:31:18】

【00:31:17】

何処だ……。何処だ……。何処だ……。


 角を曲がると、数十メートル先に黄色ロボットがいた。

すぐに、追い掛ける。


 俺を感知した黄色ロボットは角を曲がる。

絶対に捕まえる……。

黄色ロボットは次々と角を曲がっていく。

絶対に捕まえる……。


 角を曲がろうとする黄色ロボットに、飛び蹴りをした。

ブロック塀に強く押し付けられ、走行を再開しようとするその躰を掴んだ。

そして、タッチパネルに手を当てる。

〝シューン〟という音と共に、黄色ロボットの動きは止まった。

あとは、赤ロボット一体。

 

 赤ロボットは何処だ……。

住宅地を探し回る。

【00:23:13】

【00:23:12】

【00:23:11】

赤ロボットは何処だ……。

 

 絶対に、赤ロボットを捕まえる。

絶対に、クリアする。

絶対に、廣哉を《天国》に連れて行く。

【00:19:28】

【00:19:27】

【00:19:26】

 

 絶対に見付ける……。

絶対に捕まえる……。

赤ロボットは何処だ……。

【00:11:54】

【00:11:53】

【00:11:52】


 走りながら、赤ロボットを探し回る。

【00:07:39】

【00:07:38】

【00:07:37】

赤ロボットは何処だ……。

赤ロボットは何処だ……。

赤ロボットは何処だ……。


 何処だ……。何処だ……。何処だ……。

赤ロボットは何処だ……。

赤ロボットは何処だ……。

赤ロボットは何処だ……。

【00:04:17】

【00:04:16】

【00:04:15】

滞りなく動くデジタル表記に因って、焦燥と苛立ちを覚える。

赤ロボットは何処だ……。

赤ロボットは何処だ……。

赤ロボットは何処だ……。


 絶対に捕まえる……。

【00:03:29】

【00:03:28】

【00:03:27】

赤ロボットは何処だ……。

赤ロボットは何処だ……。

赤ロボットは何処だ……。

出て来い……。

出て来い……。

出て来い……。


 絶対に捕まえる……。

【00:02:16】

【00:02:15】

【00:02:14】

赤ロボットは何処だ……。

赤ロボットは何処だ……。

赤ロボットは何処だ……。

出て来い……。

出て来い……。

出て来い……。


 絶対に捕まえる……。

【00:01:09】

【00:01:08】

【00:01:07】

赤ロボットは何処だ……。

赤ロボットは何処だ……。

赤ロボットは何処だ……。

出て来い……。

出て来い……。

出て来い……。


 角を曲がると、数メートル先の民家の前を通る赤ロボットの姿があった。

それを、追う。

絶対に捕まえる。

絶対にクリアする。

絶対に廣哉を《天国》に連れて行く。


 赤ロボットは真っ直ぐに走る。

【00:00:35】

【00:00:34】

【00:00:33】

絶対に、こいつを捕まえる。


 距離は縮んでいく。

逃がすか……。

絶対に捕まえる。

絶対にクリアする。

絶対に廣哉を《天国》に連れて行く。


 少しずつ縮んだ距離はもう、一メートルもなくなった。

俺は、赤ロボットの躰に向かって飛び蹴りした。


 そして、アスファルトに倒れ、もがく様に足を動かす赤ロボットに手を伸ばす。

手形に手を合わせ、〝ピューン〟という音と共に画面は真っ暗になり、〝シューン〟という音と共に赤ロボットは動かなくなった。

赤い四角形の横の【4/5】の表記は【5/5】に変わり、残り時間は【00:00:06】の状態で停まって点滅した。


 第三関門クリア。

良かった……。

空に向かって、息を吐く。


 成功報酬として十五枚の二十万円カードを受け取り、手の甲に刻まれた三つ目の星マークを眺める。

試験は、あと二つ。

待ってろよ、廣哉。

必ず、《天国》に連れて行くから。

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