いいわけじみた恋して

青時雨

いいわけじみた恋して

恋に気づく時って人それぞれだよね。

ときめいて気づくとか、嫉妬して気づくってのも聞くし。

憧れが恋に変わったりするっていうのも素敵だよね。

けど俺の場合はなんかちょっと、不思議って言うか?

自分にいいわけしてる時点で、それって恋じゃん!ってなって気づいたんだよね。

つまりいいわけしてて恋する気持ちに気づいたんだ。



どういうことかって言うと、なんか、いつの間にかいいわけしてるのよ。自分に。

好きな子って認識はなかったの、友達なの、俺の中では。

教室で時計が見たいからそっちを見てるだけで、あの子を見てるわけじゃないとか。

出かけようって言われた場所が面白そうだっただけで、あの子に誘われたから嬉しいと思ったわけじゃないとか。

まだそんなに遅い時間じゃないし、もう少し電話しててもいいかなとか。

今考えればわかりきった恋の芽生えだったけど、いいわけしてた俺は気づかなかったみたい。

これってもう好きってことなんじゃないの?って思ってさ。


けど、認めてからが大変だよ。

あの子から好きって言ってくれたならよかったけど、あの子の気持ちがわからなくて毎日やきもきしてる。

自分の気持ちに気づいてからは、上手くいいわけが出来なくって。

恋に気づいたからこそ、自分の気持ちにいいわけしてごまかして、好きって気持ちがあふれないようにしたいのにさ。

なんか上手くいかないね、恋心って。

俺と出かけてくれるのも、目が合うのも、電話をかけてくれるのもさ…



俺のことが好きだから?

ねぇ、教えてよ



その答えが知りたくて知りたくて仕方ないよ。

…知りたかったらやっぱり俺から言わなきゃだめだよね。



「どうしたの?」


「俺さ、いいわけじみた恋をしたんだよね」


「なにそれ、相変わらず面白いよね。どういうことか教えてくれない?」


「君のことが好きってこと」


「ならいいわけじみた恋をしてもいいよ、私も」



いいわけみたいな君の告白に、思わず笑っちゃった。

その日の夜電話でちゃんと〝好き〟って言ってくれたけどね。

素直じゃない君の素直な告白、凄く嬉しかったよ。

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