第3話 ナギサ・コウサカ大尉の"いいわけ"



 …よう、ウィラ。ナギだ、久しぶり…ビデオレターなんてあれだな、学生時代のを思い出すよな?HAHAHA!


 あたしさ、お前に伝えたいことがあって柄にもなく、一人でビデオカメラに向かって話しかけている。なんかおかしいだろ?


 まるで寂しいアラサー女だぜ?HAHAHA!


 最近どうなんだ?


 あたしはまだ何とか生きてる。カスガとカザミも相変わらず、仲良くやってるよ…お前には悪いけど、いい加減諦めていい男を捕まえて結婚しろよ?…って、あたしも人のこと言えないよな?HAHAHA!


 …さて、前置きはここまでにしようか。


 お前がこのビデオレターを観ているときはそうだな…あたしは戦地の露と消えた、あるいはジョニーの凱旋だろうな。


 あたしさ、死ぬのは怖くないんだ…本当だぜ?


 死に損なう事の方がよっぽど怖いんだよ…だってさ、かつてのあたしじゃないあたしになっちゃうんだぜ?


 お前はきっと変わらず接してくれるだろうけど…見えないところで泣いているかもしれない。


 想像するだけでさ、あたしとお前は無力感に苛まれるだろ?


 …そうなってまでもさ、あたしは生きたくないんだよ。


 わがままなんだろうけどさ…学生時代にわがまま放題やってきたあたしらだろ?


 何を今更って話さ。だから、あたしがジョニーになったらさ、カスガとカザミには介錯を頼んでいる…もし、そうなった時は…お前は怒るし、きっと悲しむ…けど、あいつらを恨まないで欲しい。


 あたしのくだらない武人のプライド、意地だけどさ…どうかあたしの尊厳、意思を尊重して欲しい…頼む、これだけは譲れない。


 …お前を置いてきぼりにするあたしの事を許さなくてもいい、だけどわかって欲しい…。


 はい、これがあたしの"いいわけ"だ。


 それともう一つだけ…このビデオレターを観て、カスガとカザミが生き残っていたらさ…どうか、あいつらの世話も頼むよ。


 ………以上。ウィラ、愛してる───。


 

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