「冷やしたタオルお持ちしますねぇ。少々お待ち下さぁい」

ティナリアが泣き止んだのを見計らって、レネが出ていく。

「本当に、レネが……」

ティナリアはハッとした。

………レネが生きていて、火事でなくなったはずの邸もなんともない…。まさか……時間が、巻き戻っている?

さすがにないだろう、とは思う。けれど、そうでなければ今の状況が説明できない。

そういえば、と思い、ティナリアは全身が映る鏡の前に立つ。

予想通り、と言うべきか。やはり身体は小さくなっていた。

………今の私は、何歳なのだろう。レネが戻ってきたら聞いてみようかな。

ぐぅ〜〜

「……そういえば、朝食を食べていなかったわね…」

誰もいないのがせめてもの救いだ。恥ずかしすぎる。

「あらぁ?随分と大きいお腹の虫ですねぇ〜」

「レ、レネ!?」

レネはクスクス笑っている。

「聞いていたのね…!」

ティナリアの頬が赤らむ。

「怒らないでくださいよぉ、不可抗力です。それよりも、朝食お持ちしましょうかぁ?」

………そうしてもらえたら、助かるけれど…

「お父様がいるでしょう?…ダイニングに行くわ。支度をお願い」

「あぁ〜。………旦那様も難儀ですねぇ。」

「?レネ、何か言った?」

「いいえ〜何もぉ。ささ、早く支度しちゃいましょぉ」

あ、先に目を冷やしてくださいねぇ、と濡れたタオルを渡す。







「そういえばレネ、私は何歳で、今はいつなのかしら?」

「……侍医を呼んで来ますので少々お待ちをぉ」

「頭を打ったわけではないわよ?!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る