Ⅲ
………はぁ、気が重いわ
「お父様、絶対怒ってるもの……」
「そうですかねぇ?」
「そうよ!!だって、2の鐘が鳴ってから暫く経っているのよ?!」
普段、朝食は2の鐘がなった頃に食べ始める。つまり、ティナリアは大幅に遅刻しているのだ。
「まぁ仕方ないですよぉ。諦めてくださぁい」
自然と足取りも重くなる。と同時にレネが背中を押す。
「そもそも、旦那様は怒らないと思われますが…」
「何か言った?」
「いいえ〜」
レネの呟きは小さすぎて、ティナリアの耳には届かなかった。
「遅いぞ」
「…申し訳ございません、お父様」
………怒ってる、やはり怒ってるわ!!!
できることなら今すぐにでも部屋に戻りたいティナリアだった。まぁそうなるのも仕方ない。たとえどれほど顔が整っていようと、眉間に深いしわをつくりニコリともしない人とは一緒に食事などしたくないであろう。
「何故遅れた?」
「…色々、ありまして」
「……………そうか」
静かなダイニングに響く、感情の籠らない低い声。淡々とした話し方。まるで機械だ。
………まぁ、いつものことよね。お父様が私に無関心なのも、深く追求なさらないのも…息が詰まるような空間で、食事をするのも。
ある意味、日常。だが、それが貴族だとしても普通ではないことは、ティナリアも理解していた。
理解していたが、どうにかできることではない。
そう思うのも仕方がない。
………原因は、私なのでしょう?
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