9-7 砕け波の恋物語 漆
警察などにも依頼したが、最終的には索敵能力を詰め合わせた
発見場所は、下之宮市の辺境にある、通称『
空魚からの通信で場所は分かった。しかし
発見した方法も、
匿名で警察へ通報し、後は任せるしかなかった。
到着した時、
靄のように揺らめいて真っ白な死神のように不気味だったらしい。
◆◆◆◆◆◆
名前もよく覚えていないが……2つ、絶対に犯してはならない禁忌があると聞かされていた。
同性愛と自死――
厳しい教えも
それでも、この2つだけは……絶対に許されない。許してもらえない。
だから
「わ……私のせいで……あの子は――」
禁忌の1つを犯す原因となったのが、もう1つの禁忌を犯していたから。
そんなこと、絶対に
高所から転落して――と父親に伝えた時、最初に出てきた言葉が「それは、間違いなく事故ですか?」だった。
――事故であると明確にわかっているなら、病院へ行けます。が、もし少しでもそうではない可能性があるのなら、私達家族はその人に会えません――――
実の娘に向かってその人と表現した。
瞬間、分かり合えないと思ってしまった。
『それが親の言うセリフか』と突っかかることも出来ない。
学園の理事会でも、宗教団体との揉め事は極力避けるべきとされている。特に由緒正しき大宗教とは。
しかし事実として、
家族と縁が切られるだろう。まるで他人のように呼ばれるだろう。もう二度と顔を見ることも出来ないだろう。
最悪、人として扱われないかもしれない。
それでも。それでも良いと思っていたのだろう――
「ああ……なんてことを! 私は! 私は……!」
その覚悟を甘く見ていた。踏みにじった。
憤りに任せてガラスのテーブルを拳で叩くと、ヒビが入り、蜘蛛の巣上に拡がった。
――その蜘蛛の巣の中心はあの日、
あと少し押し込んだら木っ端微塵に砕けてしまいそうなテーブルに、ギリギリのチカラを掛けて、ゆっくりと体を起こす。
「……私が――なんとかしなくちゃ。あの子の……
壊れていく世界なら、
ある目的のため密かに研究を続け、大切に育てたてきた
――ガラスのテーブルが粉々に砕け散った。
◆◆◆◆◆◆
自殺でないなら、墜落事故死したことにする。
しかし
ならば何かに襲わたことにする。
しかし、有する
ならば未知の空魚を使う。
ならば
「あの4体の、どれかか――いや、隠密性や、墜落事故の偽装に向いているのは……この2体のどちらかだな」
検体番号26……
「ごめんな、お前をこんなことに使うつもりは微塵もなかったんだ……全部、私が悪い。全然、私のせいだ……ごめん」
キュイイイイ……
細い鳴き声を残して、巨体が闇夜に溶け込んでいく。
その夜、初めての墜落事故犠牲者が出た。
クラス4の
――そして、集中治療室に入ってから、10日後……
気が狂いそうなくらいの怒り。ぶつけようのない怒り。
気が狂わないように
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます