9-3 砕け波の恋物語 参
「寒くない?」
「……うん。
「お、おい、さわさわするなよ」
「えへへ、くすぐったいのー?」
2人は肌と肌で触れ合う。
お互いの一番柔らかいところと、温かいところを、まさぐり尽くして少しだけ疲れた。
「ねぇ。なゆ」
「なに?
天井を見据えたまま、今までよりちょっとだけ強く
「……ど、どうしたの」
「うん。なゆ? 私達――って普通じゃないのかな」
「んー……そういう質問って私のがしそうだけど――どうしたの? 何かあった?」
「私、
「昔――っていうと、学生の頃? 高校?」
「そう、その頃」
同性愛への世間の理解は、ずっと行ったり来たりだった。
ある時代においては進んでカミングアウトするものでは無いとされたり、嫌悪の対象であったり。
またある時代においては逆に政府が同性婚を認めたり、差別発言をした者が激しく糾弾されたり。
そんな時代感に振り回され続けてきた。
そしてこの時代――
表立っては同性婚などの法整備が完璧になされているのにも関わらず。
「……どっかの大国のとある州が、同性婚撤廃の条例制定した頃だね」
「よく覚えているね。ってか、その頃、何歳だった?」
「ううん、
「なるほど」
未だ
「その州法の余波は大きくてさ、こっちでも大規模なデモがあったりしたんだ……で、私、その頃……今より世間知らずというか怖いもの知らずというか、でさ――『同性婚って、何がそんなに変なの?』って、普通に発言しちゃってたんだよね」
「……今より」
「そこじゃないのよ、今の会話のポイントは」
「うん、ごめんごめん」
言いながら、
「……それで、色々聞こえてきちゃったんだ? あることないこと」
「まあ……その頃から私、自覚あったし……あることあることなんだけど」
「――他人の声なんて、どうでも良くない?」
「なゆなら、そう言うと思ったけど……でも私は、未だに心のどこかで、なゆに自分と同じこちら側へ来て欲しくはないって感情もあるんだ。『こんな可愛い子が、酷い言葉に晒されるのは見たくない』って」
「――何、それ」
「……やっ――な、に……すん」
一言一言発する度に、敏感に反応する
「ちょ、ちょっと――」
「ぷはっ――ふふん、お仕置です!」
勢いよく吸い上げてから、解き放つ。
「――あ、やぁっ! お、お仕置?」
豊かな乳房が波のように
「
「え! ……ひ、ひゃ」
「いっつも、私がやられているからね。攻守交替だよ」
「悪かった、悪かった! 私が、悪かった……もう言わ、言わない――」
「……うん。言わないで。私は、私の感覚を疑ったりしてないし、別に
「……だから、そんな悲しいこと言わないで? 確かに、昔の
「……あ、ありがとう……でも、ちょ――
「悲しいことは半分こ、楽しいことは4倍」
「ど……どういう計、算? ていうか、今……私、泣くとこじゃない?」
「泣かせないよ。泣かせるわけないじゃん、私が着いていて」
「泣く、の意味が――違っ……ん!」
2人の夜は、まだ始まったばかりらしかった。
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