7-4 勿忘の君
誰かの死を隠そうとするのは、どんな時だろうか。
まず真っ先に思い当たるのは、自らの手で殺した場合――殺人の隠蔽だ。
それ以外だと、隠した当人に何らかの利益がある場合か。
「
こればっかりは本人の口から聞かなくてはわからない気がしていて、あまり深く考える気も無かった。
本人から聞くしかないが、きっと
「真実を語らせようにも、
「『
自分には、まともな友人が少ないような気がして、割りと大きめの溜め息が出た。
「これじゃ、打つ手なし…………なんてことも無いんだよねー。
その中から、ガチャガチャとした四角い箱のようなものを取り出した。何かの装置のようだった。
「さすが
そのリュックと中身は
もし持っていなかったら、ここへ来るのはまた後日だっただろう。
「意識を失った
装置には小さいモニターがあって、黒い画面に波形のようなものが映し出されている。ツマミをいじると形が少しずつ変わっていく。
「
記憶を食べる空魚――その名は
危険性空魚と呼ばれる空魚達の、有する危険性は様々だ。
姿形は、そこら辺にウヨウヨ居る空魚と大差無く、ごく最近まで存在が認識されていなかった。
偶然、
実際に記憶を食べているのかどうかは、
欠損部分を見つけたとしても、記憶は脳内で時系列的に綺麗に配置されているわけではない(らしい)ので、何に関する記憶が無くなっているのかまでは分からない。
しかも食事の間隔は数週間置きだとか。
ただこれはあまり救いになる情報ではない。
「大食感じゃないとはいえ……群れるのは問題なんだよな」
1匹の食べる量が最大で半日程度の記憶量だとしても、それが数千も居たら話が違う。下手をすれば数年レベルで記憶が無くなる。
……とは言え、
もし万が一、下之宮市内で襲われる可能性があるとすれば――そう、この場所。
市の中心から最も遠い辺境の
「
何かちょっと危うい記憶に触れたような気がして、少し固まってしまった。
「え、えっと……設定値は、こんな感じだったかな」
この装置で、意識を失った
波形の調整を終え、擬似脳波を発生させるスイッチを入れる。
ブーンと低い低周波が鳴る。
「――この論文が面白い! 凄い! って俺に勧めてくれたのは、
装置を見下ろしながら数歩、
「だから
結果としてこの場で命を落とすことはなかったとはいえ……その考察を読み落とすような
何かそこに、
「……来た」
光る
その
あまり怖いものが無い
「群れると……こうなるのか。流石にちょっと気持ち悪いな」
数百か、あるいは数千か……数える気が失せるほどの大群だ。
低周波を鳴らす装置へ目掛けて、その大群が緩やかに近付いて行く。
「ははっ……久しぶりの食事とでも思ったかい? 申し訳ないね」
その様子を見て、スンと鼻を鳴らす。
「やっぱり。ここで
「記憶からも、その人の匂いがするもんなんだな……」
そして、そのまま頭から丸呑みした。
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