5-5 井の中の蛙は光を嫌う

 思い返せば、判断ミスだったと思える要素はいくつかある。――いや、の間違いだ。


 場の空気に流されて冷静な判断をしなかった。


 自分の判断ミスが招いた窮地なのに、まるでそれを救いに来たヒーローのようなこの振る舞い。

 課外活動の調査とはいえ、一部隊。その隊長は自分だった。心のどこかで『困ったら塒ヶ森とやもり先輩』とか甘えていたのかも知れない。


 まったく……子供じゃあるまいし。もっとしっかりしなくちゃダメだろう。


 杉田すぎたさんが居たから最悪は免れたにしても厳木きゅうらぎが重傷を負い、小撫こなで羽咋はくいも傷だらけだ。

 酒梨さなせさんと心春こはちゃんは、変にギスギスした関係を引きづって欲しくないな……。


 ――はぁ。


 黄金世代だとか、首席だとか、未来のクラス4だとか、色々チヤホヤされて、何を浮き足立っているんだ。井の中の蛙も良いとこだ。


 こんなんじゃ両親あの人達に合わせる顔がない。

 ……まぁ、きっと会ってくれないだろうけど。でもいつか認めてもらえると信じている。


 だから。


 だから、こんな所で足踏みしてる場合じゃない。


 塒ヶ森とやもり先輩ももしかしたら、あちらはあちらで何かトラブルに巻き込まれているのかもしれない。

 待っていたらジリ貧だ。全滅は避けられない。


「僕が、やるしかない」


 倒せる算段なんかこれっぽっちも無いけど。

 小撫こなで無限連鎖爆破カオスアドラヌスを退ける強度と知能。

 攻撃力は心春こはちゃんの薄氷ウスラヒの防御力さえも凌ぐ。

 そんなバケモノ相手に僕ができることは――


「『光を避ける者シェリダー』、起動ブート


 出し惜しみをしている場合じゃない。

 僕がどう思われたって良いんだ。

 皆を守るんだ。ここから生きて帰るんだ。


 ……なんだ? キィキィキィキィ煩いな。


 捻じ曲がった者クラーケン様よ、もしかして僕が怖いのかい? それは仕方の無いことだ。

 本質を知らされていなくても僕の算術アリスマは、皆と感じるらしい。


 さあ、今からキミは捕食者じゃない。だ。

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