5-4 ズルいやり方
「……どっひゃあ…………キツいわ、こりゃ」
「ヤバいな、捌ききれない」
右手で左肩を抑える
「完全にキレさせてしまったみたいだね……
這いつくばった体勢から身体を起こしつつ
目の前では
再生も完了し、自切した触手はもうどれだか分からない。
「ごめんね、
3人と
そこから
長い触手を、天に向かって更に伸ばし、上空で折り返して垂直に直線的な弾道で地を撃ち抜く。
地面を深く抉った触手は、また空に戻って装填される。
まともに受ければ圧死、粉砕死。
かすっても大きなダメージは免れない。
触手が空を目指した瞬間、
その屋上から
冷却型の温度操作系
効果対象範囲内の動かない物の表面に、髪の毛1本分程度の薄い氷の膜を貼る。それだけ、だが……この氷は当然ながら、ただの氷ではない。
『
1枚1枚が強化ガラス程度の強度を持っているのでそれだけでもとてつもない十分な防御力を誇る。
しかし万が一、外部からの衝撃を受けて表面(第1層目)の氷膜が破られるようなことがあれば、その衝撃によって過冷却状態の
つまり自動修復機能を有した防御壁。生半可な攻撃では破られない――筈だった。
「絶対防御の
膝に手を置く
攻撃の手数と、1発1発の威力、そして速度。そのどれもが想定以上に桁違い。
自動修復で新しい氷膜の層が生成される速度より、表面が破壊されていく速度が上回っていた。
初撃は
「そりゃあ次はもっと強く来るよね……」
わざとらしく目の上に左手の平をかざしながら見上げる
視線の先には、先程よりも更に高く掲げられた触手。本数も増えているような気がする。
「あ……あとさ、
自分たちは捌き切れるから、周囲の建物を守ってくれと。
確かに3人とも直撃は避けたものの、無数の触手が振り下ろされることで生まれた馬鹿げた規模の
次も同じように直撃を避けられるか――3人とも自信は無かった。それでも。
「いや、
「……で、でも!」
「大丈夫大丈夫、俺ら、まだまだ爪隠しているから」
「
「
別の屋上に居る
「
「今、その話題、必要かな」
「必要有るから言っているの! 僕も、防御系
「……休学してたからとかじゃないの?」
「それもあるけど、課外活動のポイントをほとんど持ってないからなんだよ!
捕獲していない。討伐していない。正しくは捕獲できていない。討伐できていない。
もっと言えば危険性空魚に出会えてすらいない。
――『
捕獲や討伐は危険度の高い活動なので、上級生が担当することが慣例。勿論、危険度の低い課外活動もあるが、それはそれで下級生に譲るのが慣例なのだ。
本人の意思や実力とは無関係に。それ程までに制御不能で、強力なのだ。
かと言って下級生のポイントを横取りするような真似もできない。
だからポイントが獲得できない。
だから
しかしそれでも|詳細な効果までは把握出来ていないから、ポイント0の理由と
それだけの実力があるならその分働けという持たざる者からの理不尽な嫉妬も多分に含まれているのは言うまでもない。
「本当は、何か理由があるのかもしれない。でも、それならちゃんと反論すべきなんだよ。ただじっと黙っていたって何も伝わらないんだから!」
過去の自分を
「僕でさえ、『火のない所に煙は立たぬ』って思ってしまいそうだよ」
「声を上げなければ認めたことになるなんて、酷い曲解じゃない?」
「この引率も、僕達に実戦の場を与えることより、
「い、いくら何でもそれは言い過ぎだよ!
「でも……! 現実として、先輩は今ここに居ないじゃないか!」
意識的に意識しないようにしていた、
ギリギリのシチュエーションに置いて、心の向きのバラツキは致命的な穴になる。
「いや、先に行くと言い出したのは自分達だ……それも違うか、あれは僕の独断だ」
そして敢えて自分のミスであることを強調した。
「ここに、
限界の状況で、心をバラつかせないためには人柱が必要だ。その役を暗に引き受けた。
『相変わらずズルいやり方だな』と
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