5-3 返したいもの
熱い。
熱い……でも暖かい。
この暖かさは知ってる……
回復系の
傷を追っても炎と共に再生する、輪廻転生を司る伝説の不死鳥のように、真紅の炎が対象者のダメージを癒す。
まあ即死からの蘇生は効果の対象外だとしても、このチカラが手の内にあると、戦略戦術には大きなアドバンテージだ。
生半可な兵法使いが
ただ、それも今回みたいな
と言うか、そもそも『
そう、必要になる筈じゃなかったんだ。
これは俺の油断が原因。
右肩に何かが触れるまで、全く気配を感じなかったのは確かだ。
でも触れた瞬間から回避出来るレベルの攻撃だった。
ちょっと負傷はしただろうが、切り落とされるようなことにはならなかっだろう。
危険が伴うと分かっていた今回の調査で、しかも『敵』の存在が見え始めてきたあのタイミングで――
気が逸れていた。気を抜いていた。気が緩んでいた。
まさか、
とんでもない体たらく。信じられない。
兄が死んだ場所だから? 関係無い。
今は今のことに集中すべきだろう?
俺はいつも肝心な時にヘマをする。
生半可な兵法使いは俺自身のことなんじゃないか……いつもいつも
俺は
初めて出会った頃もそうだ。
アイツがいなけりゃ今の俺は無い。
母と共に移り住んだあの田舎で、荒んで……でも悪くなり切れない――『
下らない話もたくさん聞いてくれたし、いつも笑いかけてくれた。
だいぶ尖んがった見た目とは裏腹に聡明で、清流の源泉のような心の持ち主。近くに居るだけで、俺の心は浄化された。
正しく不死鳥のように再生した。
俺は貰ってばかり。
何も返せていない。何も、未だ。
だから俺はこんなとこで寝てる場合じゃないんだ。
腕をもがれてリタイアなんかしてやるものか。
アイツに返したいものは、片手じゃ抱えきれない。この右腕には、まだまだ頑張って貰わなきゃならないんだ。
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