005
5-1 市内環状線
また
――――ハイパーループから降りた
その中で気になる点を見付けた。
発生日時順で1番目、つまり死亡順でいうと3番目……その犠牲者の名前。
「
この名前、知っている。
いや、知らない筈がない。
実質的には
生前の最終的なライセンスはクラス3Bだったが、在学中にクラス4へ到達することは間違いないと思われていた。
留年していきなり下の学年に友達など出来るわけもなく、ポツンとしていた
出身地が同じだとかで、2人はやたら仲が良く見えたが「四六時中くっついて来られちゃってさぁ……私以外の人間とも、ちょっとは関わった方が良いと思うんだよ。だから、な?」とか
三回生にもなって、ろくすっぽ学友を作ろうとしない
取り足りていない単位は無かったが、せっかくなので、興味を持ちつつもコマが被って諦めた幾つかの講義を
国防やら自衛やら戦略やら戦術やら、そっち方面にばかりに偏った思考の、本来の同輩とは違い、
古風な宗教にも入っているらしく、自然に対してなど独特な感性を持っていた。
本人は、親から強制的に入信させられていて嫌だとは言いつつも、染み付いているようだった。
古風であるが故に縛られることも多くて、それがたまに辛い時もあるとか、たまに愚痴を零していた。
詳細までは聞きはしなかったが、
ざっくり言ってしまえば
「精神を病んで退学したって、
天才中の天才達と比較して自暴自棄になったのだと。
共に過ごしたのは僅かな期間であったが、
そうは言っても、
「それにしたって……」
まさか事故死していたとは。
だとすると何故、
もやもやした気分のまま、
ツーツーツートントントンツーツーツー
ツーツーツートントントンツーツーツー
ツーツーツートントントンツーツーツー
突然の着信は、正しく救難信号。
朝より少し長めのそれはメッセージではなく音声着信。
タブレットを取り出し、応答する。
「どうした?
「出た、遅い! どうしたじゃないよ、
「アンタ、まさかハイパーループなんか使ってた? しかもどれだけ乗っているつもりよ!」
どれだけ乗っている――その意味が
事実こうして、2駅分しか移動していない。
「……え? どういう……」
事態を飲み込めず曖昧な返事をする。
「チッ……んー、いや! 悪い。アンタばっか責めても仕方ない。ウチも迂闊だった! ……そりゃそうだよ、あの
いつになく緊迫したトーンと勢いで発せられた
ここまで来てようやく、
「は? 嘘だろ……に、2時間? そんなに経って――」
たった2駅の移動にそんな時間かかるわけがない。
「多分だけど……寝ていたんじゃないか?
環状線に終着駅は無く、日中は延々と周回する。
1周するのにかかる時間は約1時間。乗り過ごしても1時間後には同じ駅に戻ってくる。
つまり
「そんな……一瞬、目を瞑っただけだったのに」
「使用者の感覚すら誤認させるんだろ。『
事象操作として、これから起きるものを回避するのは、それほど難しいことではない。
しかし今、注目すべきはそこではない。
「誰かさんの『
考えられないくらい寝過ごしたのが『
「まさか……」
「ああ。だがきっと、その想定よりもっと悪いぞ。
その
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