4-5 捻じ曲がった者
「……ぐ、うぅうう…………!」
地面を雑に転がったものが何なのか、一瞬誰も理解出来なかった。
本来の持ち主である
「――と、
倒れそうになる
何が起きたか分からない。何をされたかわからない。
混乱し取り乱しそうになりながらも、即座に切断部の
「
その
一瞬で、
放射状に散って、少なくとも20メートル以上の距離を確保した。
「
「何なになに!」
「
腕が転がって来た方向、地面に落ちる血の跡――それらと照らし合わせても、
しかし。
「……何も居ない」
何も見えない。何も感じない。
そんな空間に赤い血糊が不自然な形で、不自然に浮いている。
そしてヌルっと動く。
「鋏? いや……鉤爪の付いた、触手か?」
「『私、
「
その呼びかけに反応するようにズズズズっと何も無い空間が歪み、ぼんやりとシルエットが浮かんでくる。
徐々にハッキリした形になっていく。
これは
このチカラを扱える一族がかつては存在し『言霊使い』と呼ばれていた。
彼女はその末裔――ではない。
どうして
わからないが、事実使えている。
名前を宣誓し、問いかけた時点で強制的に呪いが発動するという代物だ。
そして、問いかけに応えるの場合を『真』、応えない場合を『偽』とし、その両方に『解』を設定できる。
今、
この場合、そこに居るはずの何かが、もしこの問いかけに応じず姿を見せなかった場合、存在が否定され消滅する。
対象を一瞬で抹消するほどの効果があるが当然リスクも大きい。
もし万が一、この呪いを破られた場合、
いわゆる呪い返しだ。
「も、
「黙ってて!
同じような『問いかけ』はこれまで何度も使用実績があり、視覚に影響する
しかし今回は何か違う。露見していく速度が遅い。
「お、大きい……」
遅く感じたのは、対象が想像よりもずっと巨大だったからだ。
ソレは2人の後ろには居たわけではなかった。正しくは、その更に後ろに建つ5階建てのアパートに絡み付いて居た。
8本か10本か、若しくはそれ以上か――ウネウネと動き回る触手はハイパーループの透明チューブを支える橋脚のように太く、長い。
触手の先端には鋭い鉤爪。その中の1つは、
触手の出どころ、恐らくは頭部と胴部はアパートが埋もれる程に大きく、グロテスクで、見るものを威圧する。
キィイイイイ!
空気を切り裂く鳴き声。
「く、
巨大な蛸の形をした空魚を見て
「光学迷彩の擬態に気配隠匿? そしてこの馬鹿デカさ! こんな空魚いるのね!」
「だからこその
「冗談だろ、こんな大きさ!」
「見えるようにしてくれたのはナイスだけど、早く離れないと……羽咋、頼む!」
「
散開した
「気持ち悪いかも知れないが我慢しろ! 『
そのまま
キキィイイイイ……
目の前から獲物が消えて少し驚いたような鳴き声をあげる
「出たり消えたりは、お前だけの専売特許じゃないぞ」
言いながら
「このホテルは30階以上の高さだったよな。ここいらで良いだろ」
そして左手を開くと、ホテルの屋上にパッと
「ナイス、『
「おう。しかし
「マジか。
「いや、なんというか……防がれたと言うよりは、弱められたような感がある」
「弱められた? それのが不穏だな」
「
「……あ、
涙声のようだった。
「――ごめん、そっちのフォローに回れる余裕は無さそうだ。丸投げして申し訳ないけど、
「
「……当然。任せて」
服の袖で頬を拭って。
「
「あ、ああ。任せるよ、
「……『
――真紅の炎が
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