3-4 なし崩し的に
下之宮市内に点在する
「……確かに。薄らだけど、
事故現場には規制線が貼られている。その規制線は当然、人に対してであって空魚に対しては何の意味も無いし、効果も無い。
「今思い出してみるとこれまでの3ヶ所も、規制線内にはほとんど空魚居なかったね。うっかり見逃しちゃった」
この事に最初に気付いたのは
「仕方無くね?
「うん、それに1・2ヶ所だと統計取れ無いしね。ただの偶然で、その瞬間だけ空魚が居なかったなんてことも可能性としては有り得るから」
「キュウちゃんと
頭を上げた
「……だいたい半径5メートルくらいかな。空魚が避ける空間」
「
「いやいや、全然気にしないで」
駆け寄る
「それで
「そうだね、ここは発生から1週間以上経っているから、それで5メートルも残っているとすると……攻撃性が高くて、人の背丈と同じくらいの大きさで……まあまあな危険度だと思う」
「だよね。思ってた以上にヤバそうだな、これ」
時間が経っても空間に残る程の威圧感を持った空魚の存在。
そしてそれは誰にも気付かれず市内に居て、あまつさえ大々的に移動しているという事実。
「明らかに、ここで何かをした。だから強く痕跡が残ってる。そしてその後、確実に移動している筈なのに、その痕跡は見当たらない……まあ、このヤバい空魚が複数居るってんなら話は別だけど」
「いや、それのがもっとヤバいでしょ」
「ナイスツッコミ、
「……う、うん……どうだろうね」
「何かをしたって言うなら、状況的に見て……つまりこの墜落事件の原因ってことなんだよな?」
「まあ十中八九そうなるだろうけど……どしたん、キュウちゃん」
「
「だったらどうする?」
「
上がった呼吸を少し整えて。
「先輩方を信じられねぇって事じゃないけど、もし更にその上で有耶無耶にされる可能性が少しでもあるなら、そのプロセスに乗る前……つまり今の俺らのフェーズで、根本的な解決まで目指すのも有りだと思っている。取っ掛りなんて
「有耶無耶にされない為の情報集めをして欲しかったんじゃない?」
「ちょっと情報が増えたくらいで有耶無耶にならないなら、元々ならない。『もう少し情報あったら動きます』なんて――動きたくないのを、体よく
「
「分かってる! そんなこと――分かってる」
「キュウちゃんの気持ちは理解出来なくないし、私は全く別の理由……単なる功名心で、このバケモノを追いたいとは思っちゃっているんだよね。こんなチャンスなかなか無いもの」
パンキッシュな見た目のまま、そのまんま。ギラギラした野心。
「
「うーん……」
相変わらず歯切れの悪い
「ははは。なんか、珍しいものを見てる気分だよ、
しょうがないなという雰囲気で、
「めちゃくちゃ前向きなのが
「んー? ああ、どっちでも良いよ! 僕は!」
「ありがとう、
「一人称の調査だったのかい? ちなみにどうせなら下の名前、
「了解。こはちゃんね、メモメモ」
「俺の一人称は『俺』だ。宜しく」
「いや、違うよ?
「うん、勿論冗談さ。俺は
本気か否か分かりにくい、微妙な小ボケがライフワークの
功名心も向上心も強い。そして密かに(あるいは明らかに)好戦的。そんなメンツの集まり。
寧ろ、その位の気概が無ければ『黄金世代』などと呼ばれることはなかっただろう。
しかし――
「ま、そうなるよねぇ。
「判断を委ねられているとはいえ……ちょっとこういう時は
「だけど?」
「いや、それが、電話繋がらないんだ。メッセージも既読付かない」
「
「ほんとよく知っているな、
挫折や失敗が無いわけではない彼らだが、都度それらを乗り越えてきている。乗り越えてきてしまっている。
つまり困難に直面しても解決できる自負があり実績があり、自信がある。
悪く捉えれば勝ち癖が付き過ぎている状態。
一歩間違えると、直面している危機の大きさを見誤ったり、慎重に判断する機会を逸してしまう可能性もある。
「乗りかかった船だし、あと2ヶ所で終わりだし……このまま行こうか」
なし崩し的に、方針は決まった。
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