3-2 雷神炎帝
「やぁ、『
また後ろから声を掛けられた。全身の毛穴から、汗が出るような気がした。
――
例の『学園の敷地内は飛泳禁止』という規則を守ろうしているわけではなく、
それを整える為に、少し物思いに
それに、慌てて追い掛けなくても、
「まあ、すぐ追いつけるし」
その独り言がまた気泡のように消えた頃、不意に後ろから声を掛けられた。それ自体が珍しい事では無い。
しかし、その声――
心臓が拍動を倍にする。
「……
なんとか平然を装う。
「珍しい? いや、そうじゃねぇだろ。お前がチグハグなことしてるからだろう? そうでなきゃ、
少し長めのミディアムボブらしき髪型、ナイフのように鋭そうな眼光、
揺ら揺ら揺らめいて、よく見えない。
ユラユラ、ジリジリ。チリチリ、ヂリヂリ――熱い。
口を開けば、肺まで焼かれてしまいそうだ。
「規則だからね、それは」
「規則? はっ! 世界のルールから、とうに外れてる私達が、他に何のルールに従う必要があるっていうのさ」
自分が超越者であるかのような、その口振りに嫌気がさす。
「お前だって、めちゃくちゃ外れているだろう?」
まるで突沸のように、脈絡無く
ジリ――
「お前はさぁ、
ジリジリ――
「こんなセコセコとした、チワワがもつれたみたいなオママゴトに付き合ってねぇで。秒で片付けて、ちゃんと国防に使えよ、お前のチカラは」
チワワとは何だ。何かのギャグなのか、
「敷地内の飛泳禁止だって、守っているのは上辺だけじゃねぇか。この1年半、1度たりとも
また1歩。
「『
更にもう1歩。
ダメだ、もう耐えられない。
「……
その瞬間、
◆◆◆◆◆◆
「やれやれだな、
焼夷のような溜め息を吐いた
居ないようにしか感じられない。もしかしたら未だ声の届く距離に居るのかもしれない。
でも、何も感じない。
何処へ行ったのか、どうやって行ったのか、何の痕跡も追えない。
うっかりすると、今の今まで会話していた事が夢か幻だったんじゃないかと思えてくる。
「使いこなせてないなんて嘘だろ……やっぱりお前のがよっぽど外れているよ」
バチバチ、バリバリ――
見計らったかのように炸裂音が
しかし
ケラケラとした笑い声が残響の隙間から聞こえて来ると、世界が少し緊張した
「――ははは! 何だかとても珍しい足音が聞こえたから、コッチ戻ってきたけど……綺麗に逃げられてんじゃん」
「はぁ……何しに来た。
「それはこっちのセリフだよ、
「何時から、何処から見てんだよ。ストーカーなの? 過保護になり過ぎんな、
「は? 逃げる? 私は見えているよ。
勝ち誇ったように
「敵性判定か。それはそれは、光栄だね」
「ふふふ。なんかー、負け惜しみにも聞こえるけど……どうしちゃったのさ。ストーカーなのはそっちでしょ。随分とお熱みたいね?
熱風が上昇気流を生み、
「……私達には不戦条項があるから、仲良いフリしてるが――あまり調子に乗るなよ、『
「だから。それはこっちのセリフだって、『
ゴウっと、
気付くと辺りから、空魚が消えていた。
「あのチカラを
「私のおかげで飛躍したんだろ? いつもツメが甘いんだよ、
「焦れて、急かして、あっちもこっちもぶっ壊しそうになっておいて、それでも未だ懲りていないの?」
「でも壊れなかった。それに、壊れたらそれまで。その程度だったってことだ」
「それは結果論じゃん。はぁ。全く……人としては好きなんだけどな、
「私は、『
世界の緊張が少しだけ緩んだ。
「もう。何しに来たんよ」
「高みの見物。私の研究室さ、もっとこう、ドンパチ出来るのかと思っていたけど……全然。存外、暇なんだよ」
両手の平を上に向けて肩を竦めるようなポーズをする
「何それ、全然可愛いないよ? つーか、
「それは私の気持ち次第だろ? だからこうして私たちの2人の小競り合い程度で済んでいるのさ」
「だからそれも結果論だって!」
「別の選択肢を持ちながら、逃げを選んだ
「嫌だよ、もう来んな!」
「……はぁ。やだやだ。寿命が縮まる思いだわ」
「何だか、嫌な感じするな」
左頬を伝う汗を拭いながら、
「
「……ほらみろ。凶兆だ」
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