2-3 眩し過ぎる7人の後輩
つまり、一般人から
ライセンスを持たない学生が、まぐれでも受かるような試験科目が1つとして存在しないため、入学時のライセンス保有については敢えて言及してはいない。
ただ、学園のレベル的に入学時点で、クラス2の上位くらいでないと普通にやっていけない。
ライセンスの「クラス」は、数字大きくなるだけの単純な構造ではなく、2と3、3と4などの数字の間に、アルファベットのAからFのサブグレードが設けられている。
例えばクラス3なら3Fが一番下で、3Aが頂点ということになる。3Aの上は4F、という具合だ。
クラス4の壁は高く、分厚い。
そんな中、ここ1・2年は粒揃いで、二回生にして既に3上位に到達し、このペースで順当に伸びればクラス4の上位は固いと言われている者が数名居る。学園が手潮に掛けている金の卵。
その面々が、どういう訳か今、
「
眩しすぎる返事って、頬を思いっきり叩かれるのと同じくらいの衝撃があるんだなとか
「
綺麗に並んだ7人の二回生。その中でどうやら筆頭らしき男子学生が挨拶をした。
「おいおいおいおいおい。
高等教育機関の頃から、どこの大学へ進学するのか注目されていた超新星である。
それに合わせて、健康的で爽やかな印象を与える栗色のミディアムヘアーが揺れる。
初めて見た時から『俺の上位互換みたいな子だな』と思っていた。
白と薄青のストライプシャツの襟元から、薄手の白タートルネックが見える。
ボトムスはセンタープリーツが綺麗な濃紺のクロップドデニム。そして恐らく素足で、黒檀のローファーを履きこなす。
『俺が同じコーディネートするともっと嫌味っぽくなる気がするんだよな……流石、理想の後輩ランキング第1位の男――』
そんなランキングは勿論、存在せず
そんな
「アンタだって、クラス5の超有名人でしょうが。何ビビってんの」
肘で
「いやぁ、事故原因の調査なら……これ、俺必要かね?」
「要るよ、当たり前だろ! アンタ大好きな規定よ、規定」
「えっと、『二回生以下が学外で実習等の活動を行う場合には、四回生或いは四回生から依頼された三回生が同行し、監視指示を行うこと』です、
「
サラッと補足をする
「そ。そういうこと。それにね、
「ほお」
それは
古典的な物理学の世界においては超能力なんて呼ばれていたらしい。
「確かに。
「
一般的に『
「なるほどね……」
見透かされて、思うように転がされている感じがして、あまり良い気分はしない。
「実際のところ。墜落事故の犠牲者はさ、だいたいクラス4か或いはそれ相当な
「う、うん……?」
まあまあなのか、結構なのか、ちょっとなのか……ツッコミたい気持ちは、なんとか抑え込んだ。
「クラス4っていう上位の
「アンチは基本的に知識不足だし、ディスれりゃ何でも良いんだろ。この前なんか、流行り風邪の新型が現れた理由すらも
「そ。何でも良いんだが、
「1年半前みたいに
何せ、伝説的な存在が目の前に居るのだから。
その輪に臆することなく入っていく
「……
「ま、まあ……でも、本人達がこちらに来るわけではないですからね」
「ウワサじゃ首席の息子の入学式にも来てないらしいよ? ふふふっ……そりゃ、なかなかだぜ」
「お前も何でもかんでもネタにするな、
「いやいや、ちょっと待て! 今の話の流れ作ったのアンタだろうがっ」
「――で。この墜落事故の原因は、能力喪失じゃない別の線も勿論、有るんだよね」
少しだけ意趣返しをした気分の
「お? シカトこいたなコイツ。後で覚えとけよ……確かに、もう1つ墜落の原因になりうるものがある」
「き、危険性空魚……ですね」
「君は……
「は、はい。
「知っているともさ。最近発表した『人の記憶を主食とする危険性空魚の発見と、その生態について』の論文は面白かったよ。よく見つけて、捕獲まで成功したよね」
「よ、読んでいただいてるんですね! 重ねて嬉しいです! まだ捕獲しただけで、食べられてしまった記憶の抽出や回復方法などは、まだまだ研究段階ですが」
「それにしたって大発見だよ」
「――おい、
「はあ? 何故そうなる?
「いらねぇわ、気持ち悪い! 記憶を食べる空魚にお前の頭ん中全部食わせるぞ」
足先から頭へ向かって、舐めるように。そして通り過ぎた視線が、胸元に戻る。
「……む。Fいや、まさかのG? その細さでか!」
「あ、いえ! 私、一応Bです。クラス3のBです。クラス3Bは、今私だけになってしまったので『学園内唯一』って所で
ちょっと次元が違いますが、と付け加えながら真っ直ぐと
「ち、違う! ライセンスの話じゃない! そもそもGなんてランク無いだろうが! くそ……その容姿に加えて、ド天然か。全部乗せじゃん」
「いや、待て。このエロガキ。一体、何の話をしているんだ」
溜息交じりの
「あ、
「
「出さないよ。もう、後輩の前でさっきから何なんだ。申し訳ないね、
「あ、いえいえ。全然、大丈夫です。それに、私は嫌じゃないです」
「……」
「……」
『ちゃん付け』されるのが嫌じゃないという意味なのか、手を出されるのが嫌じゃないという意味なのか、どっちとも取れるように曖昧で、そして地雷っぽい
多分、他の二回生の面々も。
「あ、あぁ……そ、そう? そうか、じゃあーまあいっか。なんかーごめんね、
そうして、
「えっと、取り敢えず、僕らはどうすれば良いですか?」
「おー……
シャンとし直して
「墜落事故の原因調査を依頼したいわけだけど、あくまで大学の課外活動の一環。その範疇を超えることはないと認識してもらって良い。原因の特定や解決を望んでいるというよりは、取っ掛かりを見つけて欲しい。それで合ってるよね、
「この手の事件事故は、時勢柄が土地柄か、誰も本腰入れて調査されないまま有耶無耶になって、そして忘れられていくことが多い。でもそこを拾っていくのが
「……うい、そこは任せなさい……ま、アンタにも手伝わすけどな、
「で、首席の
隊長と副隊長を暗に指名する。同格が多いグループでは、こういう人選は上から決めてあげた方がいい。
「…………」
ただ、
そもそも大した違和感でもない気がした。
「俺は基本、引率っていうか後衛で、やり方に口出しするつもりもないし、きっとその必要も無いと思う」
寧ろ自分から離れていた方が解決に近い筈だ、という台詞はギリギリ心に留めて。
「――とは言っても、危険の判断や管理はこの三回生にさせるから。だから心置き無く、のびのびと自由に、好きなように、諸君らの才能を披露してくれ。それを見るのも、今回の目的の内だからね」
良い自信だ――
この子達にはこれまで培ってきた努力や実績に、自信と誇りがある。
『天才』と呼ばれることも少なくない彼らだが、一夕一朝でこの雰囲気は生まれない。
「眩しくて、直視出来ねぇ……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます