第9話 応援してます!


 ありのまま今起こったことを話すぜ。


 俺はモブなのに、メインヒロインの好感度を上げてしまった。

 

 なにを言っているかわからねーと思うが、俺もなにが起きたのかわからなかった……。


「頭がどうにかなりそう」


「きゅーん?」


 なに言ってるの?

 みたいな顔で見ないでくれ、スピカ……。


 でも律儀にネタに反応してくれるとか、なんていい子なんや……。


 ――にしても、さっきのアレはなんだったんだ?


 なんでロゼの好感度が上がるの?

 俺は主人公じゃないのに。


 モブがヒロインと仲良くなるとか、バグってレベルじゃねーだろ!

 

 わからん……なんもわからん……。


 混乱する頭を抱えつつ、俺は大講堂へと到達。


 講堂内は大勢の新入生でいっぱい。

 皆、各々が進む学科へ登録を行っている。


 そんな中で、俺は”調教師テイマー学科”の受付へと向かった。


「ようこそ! 学科の登録ですか?」


「はい、”調教師テイマー学科”へ進みたくて」


「それでは、まずこちらの書面にお名前を――」


 受付のお姉さんは淡々と作業を進めようとしていたが、スピカを見ると目を輝かせる。


「って、わあ! ドラゴンじゃないですか!」


「スピカっていうんです。ほらスピカ、挨拶して」


「きゅーん」


 くしくし、と恥ずかしそうに両手で顔をかくスピカ。


 どうやら人見知りしてるみたいだ。

 相変わらずかわいいなぁ。


相棒モンスターを連れていると申請が楽って聞いたんですけど……」


「勿論! 育成モンスターを準備する工程が省けますので、すぐに技能講習を受けられますよ!」


 よかった。

 やっぱりスピカと一緒に来て正解だったな。


 俺は書面に名前等を書いて申請し、手続きは終了。


 これで俺も晴れて調教師テイマー見習いだ。


「でも、大丈夫ですか?」


「え?」


「初めからドラゴンを連れてこられる生徒さんは珍しいです。飼うのが凄く大変ですから」


「それは、まあ……」


「十分経験を積んでから飼ってみたい、と言う人がほとんどですよ?」


 ……そりゃそうだろうな。

 俺だってダンプリで経験したから飼えるんだもの。


 最初の育成モンスターとしては、ドラゴンは難易度が高すぎる。


 まず餌代がバカにならない。

 まだスピカくらいの赤ちゃんなら気にならないが、成長すると極悪燃費へと変貌。


 それに気高い生き物なので、しっかり愛情を注がないと言うことを聞いてくれなくなってしまう。


 魔法を学びつつ片手間で育てよう、みたいな行為はNGなのだ。


 難易度が高い理由は他にも他にも……。


 だから、初心者にはまずおすすめできない。


 ――でも一応、俺は経験者だから。

 ドラゴン育成に1000時間を費やした男を舐めてもらっちゃ困る。


「大丈夫ですよ。俺は責任を持って、この子を育ててみせます」


「きゅーん♡」


 俺の頬に擦り寄ってくれるスピカ。


 やっぱり、この信頼を裏切るワケにはいかないよな。


「ふふ、ならよかった」


「あ、そうだ。調教場をお借りしてもいいですか? この子の実力を少し見ておきたくて」


「そういうことでしたら大丈夫ですよ。どうぞお使いください」


「ありがとうございます」


「あ――それと最後に」


「? はい?」


「あなたのドラゴンちゃん、とってもかわいいですね! 育成、応援してます!」

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