第10話 スピカの実力


 ――調教場。


 育成モンスターを鍛えたり、技を覚えさせたりする場所だ。


 だだっ広い芝生の中には、色々なモンスター用トレーニング器具が設置されている。


「よし、それじゃスピカ。ちょっとここで運動しようか」


「きゅーん!」


 わーい!

 と肩から飛び上がり、パタパタと周囲を飛行するスピカ。


 まだ生まれたばかりなので、過度な運動はNG。

 だが逆に全く動かないのもダメだ。


 初めての調教場だし、適度に遊ばせるくらいが丁度いいだろう。


 もっとも――ドラゴンの”遊び”は、他とちょっと違うけど。


「それじゃスピカ、このボールを見て」


「きゅーん?」


「今からこれを上に投げるから、ボールに向かって火を吹くんだ。できる?」


「きゅん! きゅーん!」


 やるやる! 面白そう!

 そんな感じでやる気を漲らせ、彼女は空中でクルリと回ってみせる。


「それじゃ――ほら!」


 ビュン!と腕を振り上げ、空高くボールを投球。

 すると、

 

「ぐるるる……ぎゅーん!」


 スピカの口内でメラメラと火炎が発生。


 それをピゴーッ!と撃ち出すと、上空のボールに命中。


 ボン!という爆発音と共に、ボールは一瞬で消滅した。


 まるでシ○・ゴ○ラのビームである。


 とてもじゃないが、生身の人間が食らったらひとたまりもないだろう。


「……やっぱり赤ちゃんでも、ドラゴンはドラゴンだよなぁ」


 今のはドラゴン種が使う基本的な技。

 炎属性の〔ファイア・ブレス〕だ。


 多くのドラゴンは生まれつきこの技を覚えている。


 個体や種によって威力はまちまちだけど、そこは流石ホワイト・ドラゴン。


 初っ端から十分過ぎる威力を見せてくれた。


「きゅーん!」


 えへん! どんなもんだい!

 と自慢気に鳴くスピカ。


 でもそんな姿もかわいい。


「凄いぞスピカ! よくできたね!」


「きゅん! きゅーん♡」


 撫でて撫でて!

 と彼女は再び俺の肩に乗ってくる。


「よしよし、かわいい奴め」


 思う存分、彼女の白い鱗を撫でてあげる。


 それにしても、スベスベで触り心地が最高だなぁ。

 このまま永遠に撫でていられる気がするよ……。


 まあ、そんなことしたらスピカのストレスがマッハなのでやらないが。



ピコン!



〔〔”トレーニング”成功!〕〕


〔〔経験値を取得〕〕


〔〔攻撃力が5上昇〕〕



 スピカの頭上にアイコンが出現。

 どうやらステータスが上昇したようだ。


 まだ赤ちゃんだから、すぐに上がってくれるんだろうな。


 この後、俺とスピカはもうしばらくトレーニングがてら調教場を遊び回る。


 そしてたっぷりと疲れて、満足気味に寮へと帰ったのだった。

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