第5話 キミの名は――


 ピシッピシピシッ


「――! マジか!?」


 来た!

 ついに来た!

 この瞬間が!


 “ドラゴンの卵”に次々とヒビが入っていく。

 そして遂に――


 ピシッ――パキン!



「きゅーん!」



 卵の殻を突き破り――ドラゴンが現れた。


 白色の鱗。

 後ろにちょんと伸びる二本の角。

 短いながらも立派な翼。

 先端が僅かに膨らんだ尻尾。


 そして――額に浮かぶ特徴的な☆マーク。


 この子、まさか……!


「ス、〈ステータス〉!」


 確認のため画面を開く。

 そこには、



==========


名前:???

種族:ホワイト・ドラゴン

性別:めす

年齢:0歳

レベル:1


体力:25

攻撃力:10

防御力:5

素早さ:15

知能:20


属性レベル

〔炎〕Lv:1

〔水〕Lv:0

〔風〕Lv:0

〔土〕Lv:0

〔光〕Lv:1

〔闇〕Lv:0


親密度:0

魅力:30


性格:甘えたがり


==========



 ――やっぱり、ホワイト・ドラゴン!

 ダンプリに出てくる竜の中でも上位種族じゃないか!


 俺は歓喜に震える。

 ホワイト・ドラゴンは非常にレアな存在。


 卵を入手するだけで数十時間、

 ステ調整しながら育てるのに数百時間、

 理論上の最高性能にするには数千時間――


 なんてネットで言われるほど、入手も育成も大変な個体。


 その流線的な姿からプレイヤーからの支持も抜群。

 同じ上位種族のブラック・ドラゴンと人気を二分していた。


 俺はかつてホワイト・ドラゴンを入手できずブラック・ドラゴンを育てていたから、これは嬉しい。


「きゅーん?」


 生まれたばかりの彼女は、不思議そうにこちらを見つめる。


 幾らゲームで見慣れたとはいえ、竜は竜。

 間近で見ると迫力あるな……。


「え、えーと、おはよう……?」


「きゅーん!」


 パタパタと翼を動かし、彼女は俺の周りを飛行する。

 俺を親だと認識してくれたようだ。


「アハハ、もう飛べるんだ! 凄いな!」


「きゅきゅーん!」


 手を差し出すと、ちょんと手の平に着地。

 まだ手の平サイズってのがかわいいなぁ。


「そうだ、名前をあげなきゃだよな」


「きゅーん?」


「幾つか候補はあったんだけど、キミの☆を見て決めたよ」


 彼女の額に浮かぶ☆マーク。

 それを人差し指で撫でつつ、俺は言う。



「キミの名前は――”スピカ”だ」

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