第4話 入学&孵化


 なんということでしょう。

 モブの俺、主人公たちと同じ学園に通うことになりました。


『フォルシティ魔導学園』。


 ダンプリの物語の舞台。

 巨大な学園都市。

 主人公たちが三年間を過ごす場所。


 そこはあらゆる魔法や技能を学べる。

 攻撃、回復、支援、錬金……。

 剣術、槍術、弓術……。

 コミュ力やリーダーシップなんかも。


 そして勿論、"モンスター育成"もだ。


 ここでの授業や体験を通して、主人公は能力値を上げていくシステム。

 ダンプリのコンテンツが集約される場所。


 それが『フォルシティ魔導学園』。


 しかし意外だよ。

 俺はてっきり、辺境でドラゴンを愛でながら一生を終えるモノと思ってたのに。


 ――まあいいか!

 もう一度あの三年間を楽しめるなら悪くない!

 モブとして、だけどな!


 そんなこんなで――


「おお……これが生で見る学園かぁ……!」


 馬車に揺られ、『フォルシティ魔導学園』の正門を越える。

 手にはケースに収められた”ドラゴンの卵”を抱えて。


 いやしかし、こうして見るとデカいな。

 学園都市って言われるのは伊達じゃない。


 北海道よりでっかいどう、なんつって?


 ……ごめん、嘘。

 流石にそこまでデカくない。


 馬車は絢爛な学生寮に到着。

 ドアを開けて降りると、謎の魔法生物が出迎えてくれる。


『お待ちしておりました! ノエル・リントヴルム様ですね?』


 まん丸の身体にケモ耳。

 しかもふよふよと宙に浮く魔法生物。


 あ、こいつ見たことある。

 チュートリアルで主人公が最初に出会う生き物だ。

 なんか懐かしい気分。


「うん、俺がノエルだ。今日からよろしくね」


『こちらこそ! ではお部屋にご案内します!』


 荷物と”ドラゴンの卵”を抱え、魔法生物について行く。

 廊下をしばらく歩くと、


『ここがノエル様のお部屋でございます!』


 とある一室に案内される。

 その中は――ダンプリで見た主人公の部屋とそっくり。


 そりゃそうだ。

 デザインの同じ学生寮なんだから。


 でもこの雰囲気……落ち着くわぁ。


『ご夕食は七時からです! ご用があればお呼びください!』


 颯爽と去っていく魔法生物。


 とりあえず荷物を置く俺。

 ケースから”ドラゴンの卵”も取り出し、日当たりのいい窓の傍に置く。


「ん、ここでいいかな」


 タオルも取り出して、卵を拭いてあげる。

 温度も適温。

 ヒビもない。


「早く生まれてくるんだぞ? 待ってるんだから」


 卵に向かって呼びかける。

 早く顔を見せておくれ、と。


 すると――



 ピシッ



「え?」


 ヒビが、入った。


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