心霊スポット②


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 建物について教えておこうか。ホテルは全部で五階あって一階はロビーが主。二階は食堂、キッチンがあり、三階からは客室が中心ね。


 私が居た部屋は四階で、私の他に3体同僚が居る。各階には私らみたいなもんが住んでて、一階二階は無関心な同僚だからなにしても影響ないよ。三階四階は私のような人間観察やいたずら好きな同僚。五階は…ヤバイね。



 五階は気性の荒い同僚が何体か居るから大半のグループが五階でリタイア。


 五階に立ち入ったら、ミシミシ音はなるわ、部屋に入った瞬間物飛んでくるわだからね。よく心霊スポットで物荒らす人居るって聞くけど、これじゃあどっちが荒らしてるか分かんないよ。マジで。



 ま、人の住み家に勝手に入ってくるんだから、荒れたって仕方ないか。




 「なんかさー、部屋の扉開ける時って緊張しねえ?開けて何か居たりしたりとかさ」




 若者Cが部屋のドアノブを握りながら面白そうに言う。若者Bはビデオを回したり写真撮ったりしながら頷いた。




 「……」



 一方、若者Aは不安げな顔をしながら辺りをキョロキョロ見渡していた。時折私の方をちらちら見る。


 あれ?これマジっぽい?


 へえ、姿は見えずとも感じる方か若者A。でもあまりキョロキョロしない方がいいよ。憑く奴もいるからね。




 「ん?どうした」



 若者Cが若者Aのそんな様子に気付き、声を掛ける。若者Bも撮るのをやめ、若者Aを見た。若者Aは顔をひきつらせながら答える。




 「…何か俺らの他にもう一人居る気がすんだけど。あとすげえ視線感じる」

 「な、なに言ってんだよ…、俺ら三人しか居ねえよ」



 「なあ、もう帰らねえ?気味悪いここ…」

 「いや、一通り回ってからにしようぜ。霊を少しでも多くビデオや写真に納めてテレビに投稿すんだろ?映ってないまま帰ったらなんのために県外来たって話じゃん」




 帰ろうと話を持ちかける若者Aを、必死に止める若者BとC。若者Aは微かに涙目になっている。


 あれ?こいつもしかして霊怖いタイプ?最初はあんなテンション高かったくせにさ。じゃあ何で心霊スポット来たんだよ。やべ超面白い。吹きそう。




 思わず笑みが零れてしまい、その直後若者Aは肩をビクッと震わせたあとにキョロキョロ見回した。




 「あ……」

 「どうした、顔真っ青だぞ?」

 「い、いま…、笑い声が…。ひ、ひとの…」




 若者Aか震えた声で言った。若者BCが怪訝そうな表情で見る。と、隣から呻き声のような物が聞こえた。三人は顔を見合せた。




 「な、なに今の…?」

 「噂の呻き声…?隣の部屋からだな」




 あ、隣同僚の部屋だった。相変わらずいびきうるさっ。



 若者Cは隣部屋のドアノブに手を掛けた。と、呻き声が止まる。シン、と辺りは静寂に包まれた、



 ドアノブを回しバアン!と扉を開ける。

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