心霊スポット

あずき

心霊スポット①



 「…あ」


 廃墟になった建物の中のとある一室。使い物にならなくなったベッドに寝転んでいると、"いつもの"を感じ取った。


 「来た…!」


 私は期待に胸を膨らませ、窓からこそっと下を覗く。



 (今回は三人か…)


 下に居た者は三人のみ。いかにも今時のイケイケ!な感じの若者だった。うーん…。少ないな。


 いつもはもっと別のグループもいるんだけど…。


 私は少し残念に思いながらも、今日もまた新たなグループが来てくれたので嬉しく思った。




 「へー!ここが今回の心霊スポットかー。またまた雰囲気やべえな」

 「ネットに載ってた情報によると、夜な夜な呻き声が聞こえたりするらしいよ」

 「まじかよっ!本当なのか?こりゃまた回りがいあるなあ。ビデオカメラ持ってきてよかった」


 あ、それ私の同僚のいびき。いつもうるさいんだよなあ~。もうちょい抑えてほしいよ。


 「まあ取り敢えず入ってみようか」

 「うぃ~」




 若者は私が居る建物に入っていった。私も部屋を後にする。



***********



 荒らされてボロボロになった階段の踊り場で私は若者を待った。次第に若者の騒ぎ声が下から上ってくる。


 「結局三階も何ともなかったな。つまんね」

 「ただの噂じゃねえのか?」

 「幽霊さーん?居ませんかー?」



 ふざけた感じで呼ぶ若者達。どうやら私の姿は見えてないらしい。私はひと安心した。と同時に笑いがこみ上げてくる。


 ――居るよ。こんな近くに、ね?



 でも教えてあげない。だって教えちゃったらつまらないじゃん?





 人間観察がね。









 若者達が踊り場に着く。私は口角を微かに上げ、足音を立てずに若者達の側にぴたりとくっついた。


 若者の一人が眉を潜め声を上げる。


 「おい、なんかさっきから寒気すんだけど。すっごい」

 「じゃあ近くに霊いるんじゃねえの?」

 「マジ!?カメラ回せ」




 若者Bとしておこう。寒気を訴えた若者Aの方をビデオカメラでまわした。


 お、勘いいな若者A!面白。でもねー若者B。そんなん回したって映るばっかじゃないんだよ?ビデオに映るのはごく少数の奴ら。思いが強い奴とかが殆んどを占めている。私は思いとかないからな。




 ただ、こいつら人間の観察をすることが好きなだけ。



 「なにも映らないな~。残念」

 「風邪引いたんじゃねえの?お前」 

 「そうかなー」

 「ま、こんなとこいつまでも居たって仕方ないし、さっさと四階行こうぜ」




 若者達は四階へと上がって行く。私も後へ続いた。


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