23 魔女との思い出の話 5
◇ ご挨拶と趣旨のご説明 ◇
つくもせんぺいです。
出会っていただきありがとうございます!
さて、今回の喋くり後夜祭は次回予告をいたしました、自分が大学時代師事した魔女先生こと、
村田喜代子 先生
の、ゼミで長く扱った題材のお話。
参考の呪文書及び記録は、
先生の著書「縦横無尽の文章レッスン」・大学時代の教材・つくものあやふやな記憶(苦笑)です◎
今回から3~4回くらいに分けて、
テーマ【2000年間で最大の発明は何か】をお送りいたします。
早速参りましょう。
◇ 真っ直ぐな、素直な文章ばかり書いていないか? ◇
【2000年間で最大の発明は何か】
出版社:草思社
編 者:ジョン・ブロックマン 氏
翻 訳:高橋 健次 氏
今回の題材は、上記の書籍の紹介から始まりました。
編者としているのは、この教材が、インターネットを通じて当時の有識者にタイトルのような質問を投げ、その答えを一冊にまとめたからに由来します。
魔女先生も紹介で、著書ではなく、アンケートの回答集と表現されました。
魔女先生が何をやらせたかったのかは、小見出しの問題提起をご覧いただければご理解をいただけるかなと思います。簡単に言うと、
「荒唐無稽な発想でも良いから、己の理屈で論破してみなさい」
と、いうわけですねw
一見論文のような課題ですが、創作においても自身の発想の説得力は、自身で組み立てて読者の方に提示しなければなりません。
実際にこの課題は、弟子たちの論をピックアップではなく、全員発表させたと記憶しています。
魔女先生の教えにおいても、一つの大きな山だったわけですね。
提出条件はシンプル。
字数制限なし。
2・3行でもいい。
やってみせなさい。そんな新米魔法使いである弟子たちの成長をテストするような挑発的な課題でした。
まずは弟子たちの課題の話題に入る前に、今回は教材で触れられた発明についてご紹介したいと思います。
識者の回答出したら、後半見劣りすんじゃないの?
そう思われるかも知れませんが、王道な回答もあれど、自分としては文化圏が違っているのであんまり気にならないだろうなと思いました。
タイトル・理由・魔女先生の考察。
この3点で簡単に進めていきたいと思います。
◇
⑴ 「空飛ぶ機械」
わたしが票を投じたいのは、空飛ぶ機械である。それはわれわれの神話の中心部に近づいていく発明である。先史時代の人類は、炉と舟と車輪を発明することによって、火と水と大地に打ち勝つ方法を見いだした。大気の征服は、二十世紀に入ってようやくはじまった――空飛ぶ機械によって。
というわけで、ひとつ目の紹介は、発明の王道たる飛行機です。
魔女先生の記録においても、この発明を最初に提示しています。
題材としては文句なし。
なら創作の理屈としてはどうなのか?
魔女先生は、こう語りました。
――ちょっと懐古調でもったいぶった文章の雰囲気は、こういう論を張るにはなかなか似合っている。「飛行機」とあっさり言ってしまわずに、わざわざ「空飛ぶ機械」という。そして神話という言葉に、古典劇のセリフのような趣がある。 ……と。
実際にここから先の本文では、飛行機と書かれます。
そしてこの論のもう一つの骨子は、空を飛ぶ機械という発明は、人間の進化論の外にあるということが論じられるのですが、そこは割愛しますw
上記のような展開で、あと二つ今回は紹介して終わるのですが、上記の論においてつくも自身が感じることとしては、やはり文化圏による思考展開の違いです。
打ち勝つ・征服。
この単語を冒頭の説得性に用いる思考は、あんまり日本人には見られないものかもしれないなと思いました。
自分だけかも知れませんが、発展や共存・助力といった用語を使用する論調が多いような。選挙やらの演説を聞いていてもそうです。
一人のカリスマよりも、多くの共感
それが日本の国民性だとも思います。
どちらが正しいではありませんよ?
ただ、創作する人間の喋くりエッセイの視点で語るなら、時には耳触りの良い優しい論調だけではなく、人間のエゴによる言葉も必要であると思いませんか?
と、いうお話です。
⑵ 「乾草」
この2000年におけるもっとも重要な発明は乾草である。古代ギリシア・ローマにも、その前のすべての時代にも、乾草はなかった。気候が温暖で、冬のあいだも馬が食う草が生えている地域でしか文明は存在できなかった。
(中略)こうして乾草は、ウィーンやパリやロンドンやベルリンを生みだし、のちにはモスクワやニューヨークを生みだした。
と、いうわけでふたつ目の紹介は乾草です。急にミニマムスケールな発想にも感じるかも知れませんが、軽んじるなかれ。
この機知比べのような提唱は、実際に後述の都市の緯度が北海道よりも北に位置していることからも、具体的な根拠と考察に基づいた提唱になっています。
乾草という、多くの日本人からしてみればピンとこない物も、その環境と歴史を識る人にとっては革新的な発明だったりするということですね。
魔女先生も、その論拠付けの堅さを、特筆すべき点としていました。
ちなみに同様の論拠で、「馬の家畜化」というのもありました。
移動の迅速さがなければ、文明は消失していたというもの。
「ルールを無視して6000年前だゼ☆」というジョークも含めて面白かったのですが、乾草という言葉のインパクトに負け、割愛ですw
とまぁ、まだまだあるのですが、有識者の回答は次で終わります。
次は単純に、自分が好きだったものです(笑)
⑶ 「消しゴム」
消しゴム。そのほか、コンピューターのデリート・キー、文書の修正液、合衆国の修正箇条など、われわれの犯した誤りを訂正できるしくみのすべて。
いちどつくったものを抹消し、もとにもどって訂正することができないとしたら、われわれは科学理論のモデルを確立することはできなかっただろうし、政治、文化、倫理を発展させることもできなかっただろう。消去装置はわれわれの罪の告白を聴いてくれる司祭であり、罪を赦してくれる法官であり、われわれのタイムマシンなのだ。
と、いうわけで3つ目の紹介は消しゴムでした。
……ヤバw
この理屈の広がりを読んだ際、自分はニヤニヤしました。
ちなみに上記で全文です。短いのにデカい。それが凄いなと。
魔女先生も、後から修正すること、一度消して再び作り上げること。この回答の結びに、最後の結びの「消去装置は~」からの部分は絶品と評しました。
◇ このような雰囲気でお送りします ◇
さて、【2000年で最大の発明とは】の第1回はいかがでしたでしょうか?
弟子たちの条件は、ここから年代という縛りが外れているので、自由度が高い物でした。
参考文献の有識者の回答は他にも、
・インド―アラビア計数法
「0」という記号が生みだしたもの。
・椅子と階段
人間の高さの空間の理想化。
・読書用メガネ(老眼鏡)
人間の活動期間の延長。40歳未満の若者に世界を支配されるのを防いでいる(笑)
十人十色ありました。
そんな識者の例を学び、創作ゼミの魔女の弟子たちが、自身の世界の理屈を押し付けるアイテムに何を選ぶのか?
次回からはそんな感じでお送りします。
お付き合いくだされば幸いです(^^)
今回はこの辺で。
誰かの何かになれることを願って。
ではでは!
◇ 次回予告 済 ◇
イエス。
忘れないうちにお会いしましょう~。
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