17 魔女との思い出の話 4

◇ 気がつけば8月のご挨拶 ◇


つくもせんぺいです。

出会っていただきありがとうございます!


とろけるというよりも蒸発しそうな夏。

書くよと言いながら、1週間に1話更新以下の連載に苦しんでおりました(苦笑)

やっと魔女先生の授業のお話です。


前回覚えてますか?

中身はないので大丈夫です。

簡単に。



【 心の柔軟体操 ―解読編― 】



魔女先生曰く、文章でやる心のウォーミングアップ。


『柔らかい心、子供が捏ねたりまるめたりする粘土みたいなものを想像しても良いだろう。粘土がどのくらい柔らかくなるか』


前回は、そう言われた魔女先生が、下記のような課題を出しましたよというお話。


野見山暁二のみやまぎょうじ 氏

版画はんが【昨日のこと】

見た目はお腹がぽってりした人物のシルエットが横たわっているような、そんな見た目の作品。

作者の野見山氏は、御年100を超える洋画家! しかし版画です。

この野見山氏の作品で、を創作しなさい。


んで、今回は何が狙いだったのかね?

と、いうお話です。



◇ 弟子たちのインスピレーション ◇



さて、解読の前に、同じ版画課題でどれくらい思考が分かれるのか、ちょこっと他の弟子たちの創作呪文を冒頭だけでも紹介したいと思います。


検索で簡単に出る作品なら良いのですが、現状版画の画像は見つかってません(汗)

絵画の方は画像がありましたので、おおよそのイメージは掴めるかと……。



⑴ 希望

 時々、故郷の木を思うことがある。味噌のかめ置場と井戸の隣に立っている大きい柿の木だ。茂んだ落ち葉が落ちてしまって、やつれている枝のまま立っている初冬の柿の木は、野原の電信柱とともに、冬の冷たい風が一番先に飛びかかるものである。



――はい。こちらは海を渡り、韓国から魔女先生の魔法を学びにやって来た弟子の作品、の導入です。

「茂んだ落ち葉が落ちて」というような、学せ……弟子らしいおぼつかない部分もありますが、木の枝をと表した感覚に、魔女先生は注目しておりました。


この呪文、故郷を想い、厳しい冬に希望を持つにはということが全編通して書かれたもので、課題を「冬の故郷」に見立てたものだったわけです。


では、次に行きましょう。



⑵ 4・9・4・9

 覚えていることは、自分の名前、年齢、それと何故だかわからないが「4・9・4・9」という番号。

 わかっていることは、自分がどこかで横になっていること、身体の感覚がないこと、それなのに先程から鼻先がかゆいこと。かゆくてたまらないのに指一本動かせない。なんて居心地の悪いことだ。



――はい。この呪文はから詠唱が始まるわけですが、きっと察しの良い読者の方、昨今のファンタジーに慣れた方はお察しでしょう。

 この後転生する魔法陣を展開する呪文です。

 ……正確にはその手前まで。

 これは焼きついた光景をタイトルにして、それを徐々に紐解いていく、ショートショートでは慣れ親しんだ形式かもですね。

 当時は、まだなろう系なんかは出始め? テンプレではない時代の使い方ではあります。


 先生は、課題においてフィクションを指定したわけではない。

 大半が自己に着眼点を置く中で、フィクションを選択したことを特筆すべき点として挙げられました。


 「車に跳ね飛ばされた自分」に見立てた。と、いうわけですね。


では、最後にもう一つ。



⑶ カラス

 番号札84番でお待ちの方はどうぞー。

 カァ、おはようございます。僕はさっき人間に殺されたカラスです。なぜかって? 知りませんよ、そんなこと。いきなり電気棒でビリリッですもん。たまりませんよ、実際。



――はい。せ、説明要りますか(^^;?

これはのっけからゴリゴリのフィクション。それどころか人ですらないという、メタモルフォーゼの呪文です。

死後面接に訪れたカラスが、自分のやっていた餌探し(ゴミ漁り)の様子と、家族が待っているから死ねないと、死後の世界の神様(職員?)に訴えるというもの。

結末は説得に成功し、家族のもとに戻れるハッピー?(一度は死んでるし) エンド。


先生が言及していた点は、場面転換のテンポの良さ、カァやビリリなどの、呪文に合った効果の組み込み方でした。



◇ 魔女先生の呪文のない教科書 ◇



ここまで、前回の3と合わせて5つの弟子の創作呪文をご紹介しました。


・シャワーに流れる過去の自分

・川に流される自分

・故郷の冬の大地とやつれた木

・跳ね飛ばされる自分

・死んだカラス


並べてみると、模範なんて存在しないことが分かります。

同じモチーフからのはずが、一つとして同一の呪文は生まれていません。


では、魔女先生は何が狙いだったのか。

って、なんぞ?


先生の言葉はこうです。


「面白がって、自由に、大胆に、冗談まじりに、好きなようにやってみよう。間違っても、しかめつらしくならないで」


あくまでも、授業である。教えである。

だから出た言葉かもしれません。生業を志すなら別の話をされたかも知れません。

ただ、自分たちが学び舎で掛けられた言葉は、正当を示すものではありませんでした。


もう少し掘り下げるために、魔女先生の手記を紐解きます。



◇ 一人前の魔法使いたちの会話 ◇



「どうして船ってこんなに美しく見えるのかなぁ」

「水鳥の足が水中に隠れて見えないのと同じじゃないですか」


 船も水鳥のように浮いているのだ。鋼鉄の大きなかたまりなのに、大きな船ほど静かに夢のように浮いて、海の上をしずしずと滑っていく。


 窓の前をちょうどタンカーが入ってきた。まぢかで見る船体はペンキが剥げて錆びているのに、それでも船は腰を海水に深く浸して、エレガントな女性のように白波のスカートの裾をレースみたいに引きずって行く。


「船ってどんなに剥げちょろけでも、進んで行く姿はみんな慎み深い淑女みたいですね」


(中略)


 上手な泳ぎ手は水飛沫を立てない。

(中略)

 しばらくしてプールから上がった彼女は、もう七十歳をだいぶ超えた片足のやや不自由な人だった。だぶだぶに肥満してお尻や太股の肉が垂れ下がっていた。私が驚きを隠して、彼女のクロールを褒めると、


「ええ、水の中だけ、あたし、自由になれるんです」


 とにっこりした。





時系列としては、この授業期間に魔女先生が記録した手記です。

不肖の弟子たる自分が感じたこととしては、



見えない部分をどう補完するかは、個人の自由だよね(*'▽')!



です(笑)

うん、結構まじめにそう解釈しています。


今回ご紹介した教えは、授業期間のまだはじめの辺り。

自由に、のびのび、可能性を潰さず模索していくことを重要だと、先生は考えたのかも知れません。



◇ 心の柔軟体操の回、おしまい ◇


これにて、魔女先生との授業の思い出話、心の柔軟体操編は終了です。

編集、前回よりはマシか?

いやそもそも3と4の期間が空きすぎて、忘却の彼方ですね(苦笑)


根気強く読んで下さっている皆さま、本当に感謝です。

ありがとうございます!


では、次の回でもお会いできたら良いなと思います。

……次回、あると良いなぁw


誰かの何かになれることを願って。

ではでは(^^)



◇ 次回はありますか? ◇



次回は、拙作【竜と長耳族と青いリゲル】の懺悔室を建築いたしましたので、

そちらを更新予定です。

雑談回はまたその内◎


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