15 魔女との思い出の話 3
◇ ちょっと久しぶりのご挨拶 ◇
つくもせんぺいです。
出会っていただきありがとうございます!
更新期間が飛び飛びで、お喋りの文体やらを忘れてるなぁと書き始めましたが、そもそもそんなものない闇鍋エッセイだったと読点押してすぐ覆す、やっぱりいつもどおりの
今回は、予告詐欺で後に後に回されていた魔女先生の授業のお話です。
早速始めていきましょう。
◇ 魔女の呪文 その2 ◇
【 心の柔軟体操 ―出題編― 】
さてさて、皆さまは書くことと読むことに、気持ちがどうリンクする方ですか?
冷静に設計されるから関係ない方もいらっしゃるのでしょうが、自分は気の向くまま目の向くままに突き進んでいくので、よく止まったり・落ちたり・壁にぶつかったり……おかしい、ポジティブさが出てこない(汗)
うん、楽しく書いてます(笑)
そんな今回は問題提起の出題編。
魔女先生曰く、文章でやる心のウォーミングアップ。
『柔らかい心、子供が捏ねたりまるめたりする粘土みたいなものを想像しても良いだろう。粘土がどのくらい柔らかくなるか』
狙いはこうあったと、今日このエッセイを書いていて知る弟子の自分です(苦笑)
まぁ毎度ながら、魔女先生は呪文を使われるので、提示された時に弟子たちは
コンフュとも言います。……伝わるでしょうか?苦笑
自分の時代ではRPGゲームの2大巨塔でした。
では、混乱呪文は打ち消して進めましょう。
今回の教材は以下のとおり。
見た目はお腹がぽってりした人物のシルエットが横たわっているような、そんな見た目の作品です(雑)
ちなみに現物はカラーの可能性ありですが、教材は白黒コピーでした。
作者の野見山氏は、なんと1920年生まれの100歳を超える、現代洋画家!
100歳を迎えた2021年以降にも活動を続けられている、魔女先生を超えた大魔法使いです。
余談ですが、自分が在籍中には御年80オーバーの日本文学講師が在籍しており、学生にはヨーダ様と
懐かしい(涙)
脱線もとい。そんな洋画家である野見山氏の教材は、版画。
……なぜ版画なの?
まぁ教材提示時には、作者名と作名だけだったので、不勉強な自分の事前情報は皆無でしたから関係なかったのですが。
「これを見て、どんな昨日のことを感じたか、物語にしなさい」
魔女先生の課題はいつも端的。
基本はショートショート、400~800字くらいで。
原稿用紙などは使わず、ルーズリーフに書いていくのですが……。
狙いについては次章で回収するとして、弟子たちは材料を渡されて、自身で調合を始めるのでした。
ちなみに書いてる間、魔女先生いませんw
途中確認一切なし。
書いたり、喋ったり、寝たり、トイレ行ったりお菓子食べたり、別の授業の課題したり(汗)……大体40分自習自作。
環境としては和気あいあいとしていた気もします。
ほら、魔女先生の弟子たちですもの(笑)
◇ 弟子達の創作呪文 ◇
そんなこんなで、なんだかんだと提出します。
ここで、魔女先生の上級魔法が発動。
「出来てなければ出席扱いにはならない」
ちなみにこの宣言は後出しで、講義後に提出しに行った弟子が居たのは秘密です(苦笑)
自分は……チョットキオクガナクテ(遠い目)
多分時間に間に合って出しました、ということにしましょう。
そんな弟子たちが創作した呪文、覗いていきたいと思います。
基本的に今回は、同じモチーフで弟子たちが何を創作したかについてスポットを当てていきます。
1つ目は、単純に自分が気になった作品から。
【昨日のこと 1例目】
――私の足元には黒い影。そう、これは昨日の私。熱いシャワーに洗い流された私の抜け殻。排水溝へ渦を巻いて流れていくわ。私はこれを毎日毎日見るの。私だけじゃないわ。世界中の人もみな見ているはずよ。この繰り返し。
と、一人目の弟子は横たわった人影のようなシルエットを、自身の抜け殻に見立てました。
――今日も外で戦ってきたわ。社会の波の中で、人や時間に揉まれながら、懸命に戦ってきたの。
段落が変わり、そのシャワーを浴びた人物が社会で仕事をしているということが見えてきました。中盤には、そこでの失敗や苦悩が女性の口語体で書かれています。
設定としては奇抜な物ではありません。割愛して、以下締めの文。
――今日も黒い影を見る。一心不乱に洗い流す。私が変わっていく瞬間。またこの抜け殻が、暗い排水溝の中へ渦を巻いて流れてゆくわ。私はいつもそれをじっと見るの。グルグルグルグル吸い込まれてゆく映像を目に焼き付けながら、昨日の私にサヨナラするの。忘れるのではなく、過去に刻んで。
そして今日の私にコンニチハ。
語りの締めにまた排水溝の描写を重ね、今日の自分との別れを書いています。
魔女先生は、この創作を読み、版画の背景の線が確かに水の様に見えてくる。その後の戦いの描写には、大学生でも多くがバイトを経験していることから、社会の厳しさを一端は知っており、切実さが表れていると評します。
なるほど、どうして女性の語り口調はこんなに読みやすいのだろう? 最後はなんでカタカナにしたんだろう? なんて全然違うことを考えていた自分とは、背景の汲み取り方がやはり違いますね!笑
自分が魔女先生の教えを受けていた時代、口語文やカタカナを用いた表現を使って読感を作者の実感に寄せることができたのは、女性が多かったような気がします。
続いては、はじめは迷文と称された一作です。
【昨日のこと 2例目】
――昨日、川に流れました。川はとても流れが速くなっていたので、私はどうすることもできませんでした。
さて、魔女先生はここで話を切り、迷文と称されました。
読まれている皆さんは分かったでしょうか?
ちなみに自分は、前出の例文が同じく水を発想しており、自己解決してしまっていて最初は気づきませんでした。
そうです。正解は、「主語」でございます。
明かしてしまえば単純な話ですよね。
だろうねという声が聞こえてきますが、捻りを加える技量はないのでスルーです(汗)
言われてみれば、流れたのが何かさっぱりです。
――私はそこから助かりたくて必死で何かをつかもうとしたのですが、なんせ川は増水しているものですから、何もつかめませんでした。
この文で、流されたのが自分であるということが分かります。
魔女先生はこの場合は本来、流れました、ではなく流されましたと書くものだと。
ただ魔女先生は、この言葉選びにより、わたしが何とも不憫でいじらしい哀愁を含んでおり、悪文・迷文には独特の効果、愛嬌があるとご機嫌でした。独特(笑)
――私は体中にが不安になって、おなかのあたりに穴が開いたようでした。その穴は私の体をどんどん浸食し(中略)
不思議な書き出しから一転、急に不穏になりました。
――このまま流されてたどり着くのは、海。(中略)考える前にこの水の流れを止めなければ。……本当に? 本当にこの流れは止めなければならないもの? 海って大きくてきれいだから、そのまま行っちゃってもいいんじゃない?
不穏と思いきや、海。ただ、魔女先生はこう言います。
「ただの海ではない」
……ホントに? ただ、流されていることと不安なことを柱に、物語は文字通り流れていき、結びを迎えます。
――それから私は必死にもがき、どうにか岩につかまり、浜辺で今日という日を迎えています。
私は昨日、川に流れました。とても流れの速い川で、私の力ではどうすることもできないと思っていましたが、そこから抜け出したいと本気で願った時、助かることができました。流れることも、助かることも、海にたどり着くことも、海に向かわないことも、私によって決まっていくのだと、私はそんなことを考えました。
「書き出しと、最後の5行がいい」
魔女先生はそう評されました。……あれ、迷文評価は?
この弟子の呪文のポイントは、最初と終わりに「川に流れました」を2回使ったことにあります。迷文かと思われた出だしの言葉が、意図を持って選んだのだと力が籠るのです。
ただの海ではなく、海は作者の思念の本流。
「流れることも」から繋げた物語の終わりは迫力を持って閉じられた。そう、ため息をもらしました。
こうして水の呪文を唱えた弟子たちは、今回の授業でも無事にランクアップを果たしました。
◇ 前半終了! と、次回予告 ◇
と、言うわけで!
【 心の柔軟体操 ―出題編― 】
はここまでにしたいと思います。
千切れ千切れで自分の編集能力を嘆くばかりでございますが、お付き合いいただきありがとうございました。
引用使うと文字数がかさみますね(汗)
次回は、
【 心の柔軟体操 ―解読編― 】
をお送りします。
その他のモチーフをイメージした弟子たちの簡単な紹介と、魔女先生がなにを考えていたかが紹介できればいいなと思っております。
短めに、サクッと。
言って出来た例がありませんが(泣)
何かしらこの思い出話でふーんと思っていただけたらいいなぁ。
と願うばかりです。
それでは、
誰かの何かになれることを願って。
ではでは(^^)
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