第9話 出発
「ヒロイドケイス!あれは、ピルバグです!貴方なら、一瞬であの大軍を消滅させることが出来るはず!やるのです!」
「し、しかし…!優に300を超えるぞ!!」
「いいえ。今の貴方なら、可能です!!貴方は勇者!何が何でも民を守るのです!!」
「解った!!民を頼んだ!!」
そう言うと、ヒロイドケイスは一人、馬に跨り、押し寄せてくるピルバグの大群に向かって行った。そして、ピルバグの群れを30m目前に捉えると、馬を降り、スッと<ワルツ>の切っ先をピルバグの大群に向けた。呼吸を整え、未だかつてない大群を前に、焦る気持ちを抑え、構える。
≪ドクンッ!!≫
(来た!!)
「はぁああああ!!<タランテラ>!!!」
グオ―――と言う風切る音がピルバグの悲鳴を消し去った。一発で、300匹ものピルバグの大群を、ヒロイドケイスはかき消した。
「…」
あっけにとられるヒロイドケイス。自分でも、半信半疑だった。昨日の今日で、<タランテラ>を習得出来ているのか…。もしも、出来ていなかったら、街の民がやられていたかも知れない。そう思うと、ドキドキしたが、それと同時に、たまらない高揚を感じた。
「これが…今の俺の力…」
「そうです。ヒロイドケイス。貴方は剣士として、今、この街の民を救ったのです」
空を仰いでいたヒロイドケイスに近づいてきたペルシャロは、そう言った。
「…ペルシャロ、君は、本当に素晴らしい占術師だな。この俺が、たった6日でここまで強くなった…。俺は、最強と言われ、天狗になっていたかも知れないな。ここを離れることも出来ず、ここを守ることで精一杯だったのだから。俺は、弱かったのだな…」
「ヒロイドケイス、誰しも、弱いのです。わたくしの話をしましたね。わたくしは闘うことをしなかったと。しかし、こうして、闘うことを知り、自分の能力がこれほどまでに役に立つとは思ってもいませんでした。わたくしだって、弱かったのです。2人で、魔界を滅ぼしましょう!」
「あぁ!ペルシャロ、君となら魔界を必ず滅ぼすことが出来るだろう!!」
―次の日―
「ヒロイドケイス様、ペルシャロ殿、ミトミルさん、お気をつけて…」
「ありがとう。長老さん。わたくしのお教えした占術、<ストロンゲストバリア>が、魔物の侵入を防いでくれるでしょう。もしも、それでも、襲われそうになったら、<フリージングレイン>で魔物を凍らせて、結界の外には絶対に出ないでください。魔界を滅ぼしたら、すぐに帰ります。そうしたら、もしも、結界の外まで魔物が来ても、退治しに戻りますから!」
「はい。ありがとうございます。ヒロイドケイス様、すべては、お任せします。どうか、ご無事にお戻りください」
「あぁ。大丈夫だ。俺を9000vlまでパワーアップさせてくれた、占術者であり、最高の賢者でもある、ペルシャロがいてくれる。必ず、良い土産話を持って帰って来よう!」
「ヒロイドケイス、私の存在も忘れないで欲しい」
ミトミルが、三角の耳をへにょっと垂らし、ヒロイドケイスに言った。
「あははは!もちろんだ!ミトミルよ!お前は、ペルシャロをここまで連れて来てくれたのだ。感謝しているさ。そして、これからも頼りにしている!」
「うん!」
「ふふふ」
3人は、少し微笑み合うと、その次には、スッと天を見つめ、右手を掲げ合い、誓いの言葉を発した。
「我々、ヒロイドケイス!」
「ペルシャロ!」
「ミトミルは!」
「「「魔界を滅ぼし、この世界に平和と幸福をもたらさんことを、ここに誓おう!!」」」
「「「出発!!!」」」
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