第3話 闘うということ
「そこだ!ペルシャロ!また
「はい!ミトミル!『ファイヤフォーストライアングルアンニヒレイション!』」
『!!!』
ペルシャロと、ミトミルは、とりあえず<サボン>と言う街に向かっていた。そこには、この国最強と謳われる剣士がいると言われていたからだ。しかし、その剣士の名を、ミトミルも、ペルシャロも知ることは出来なかった。なぜなら、その剣士が、名乗ることをしない、と言うのだ。
それは、強き剣士の証だと街人に言われ、増々その名が轟いた…と噂では聞いた。<サボン>その街までの道のりでも、ペルシャロの占術は、いかようにも役にたった。
「た…助けてください…私は…この近くの町のモノ…。薬草を取りに行った帰り、魔物に襲われ、動けなくなりました…」
「…ほお…そうですか…」
まだ、魔物があまたいる森の中、夜を越さなければならなくなったわたくしたちの前に、一人の人間が現れた。周りに他の人気も魔物の気もない。
「ペルシャロ。なんだ。助けてはやらんのか?」
その人間は、酷い傷を負っており今にも息絶えそうだった。そんな人間を、ミトミルはそっと助けようとした。
「待ちなさい!ミトミル!離れるのです!」
「くっ」
『グリーム!!』
『グワ――――!!!」
ペルシャロの占術で、いきなりその助けを求めて来た人間が光に包まれ、叫び声をあげた。
「なんだ!?何が起こったのだ!ペルシャロ!」
『グググ…』
そう小さくこごもった息を残し、その生き物は、人間の姿ではなくなり、消えた。
「こ、これは…!?」
その人間は、スモデモンだったのだ。スモデモンは、ずる賢く、人間に化けるのが得意だ。そして、本物の人間を安心させ、眠るまで待つと、その肉を喰らうのだ。
「何故…分ったのだ?ペルシャロ」
「簡単なことですよ、ミトミル。人間はこの<ファーマメント>と言う薬草を手を加えず、咲かせるはずがないのです。しかし、天界にのみ開く花が、開いていました。それは、魔物がいると、天界の力で、必死にその花を咲かせようとするのです。初歩の初歩ですよ」
ミトミルは、あっけにとられている。ミトミルも、エルフの中では知識豊かな方だ。勿論、<ファーマメント>の特徴も知っていた。それならば、何故、ミトミルが見破れなかったのか…。それは、<ファーマメント>と<ライト>と言う薬草が、酷似しているからである。<ライト>も傷を癒す薬草だ。<ライト>は人間にのみ、花を開く。
「ペルシャロ、<ライト>であると言う可能性は無かったのか?」
「当たり前ではないですか。<ライト>を手に入れていたのなら、その場で傷を癒すはず。手入れをしなければならない<ファーマメント>だったからこそ、花が咲いていたのに、傷が癒えていなかったから、わかったのですよ」
「は!そう言われればそうか…。ムムム…ペルシャロ、お前はやはり賢いな」
「そんなことはありません。まだまだ、勉強不足ですよ」
ペルシャロは、クスリと笑った。その瞬間、ペルシャロの脳裏に、あちらの世界の記憶が浮かんだ。
そう。菫もまた、とても賢い子だった。成績は常にトップクラスだったし、何事にも興味を持ち、勇んであらゆる情報を知りたがった。しかし、どうしてもいじめを解決する術を知り得ることが出来なかった。
その答えが、こちらの世界に来て、やっとわかった気がする。
闘うことだ。唯、想像と妄想と夢と願いと憧れだけで…こちらの世界を望むばかりで、あちらの世界では今のように、闘おうとしなかったのだ。
たった一言、『やめて』で良い。『タスケテ』で良い。『仲良くしたい』で良い。それらの何かを言えたら、何か、変わっていたのかも知れない、と、ペルシャロは確信し始めていた。
「どうかしたか?ペルシャロ…」
焚火の世話の時間を代わっても、眠ろうとしないペルシャロに、ミトミルは尋ねた。
「ミトミル、わたくしは、闘います。魔界を滅ぼすまで、わたくしは、絶対に闘い続けます!」
キリッとした瞳で、その中に強い炎を宿したように、ペルシャロは言った。
「…そうか。もう良い。もう今夜は眠れ。ペルシャロ…」
「…ありがとう。ミトミル…」
ミトミルに見守られながら、ペルシャロは初めて、本当に闘うことを心に誓ったのだった。
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