第2話 私が、転生!?
「…ロ…シャロ…ペルシャロ…起きるんだ。ペルシャロ!」
(ぺ…ペルシャロ…?誰のこと?)
そこは、広い草原だった。ザザ―――ッと柔らかい風が吹き渡った。その風が顔を過ぎると、私は瞳を開けた。
「やぁ。ペルシャロ。目が覚めたか」
そこに居たのは、見たこともない生き物だった。虫?イヤ、鳥?イヤ、哺乳類?…んー…、イヤイヤ…何者だ…?
羽が生え、耳は三角。でも、何とも愛くるしい…、
「あ!エルフ!!」
「あぁ、そうだ。私は草原の精霊、エルフ・ミトミル。ペルシャロ、お前を迎えにきたんだ」
「ペルシャロ?私の名前は…な…名前は…」
思い出せない。なぜだろう?確かに、私には何か別の名前があった。そして、それにまつわる、記憶らしい断片が、頭を駆け巡る。しかし、思い出すことが出来ない。
「戻りたいか?ペルシャロ」
「戻る?何処に…」
「ふふふ。そうか。そうなんだな。お前は、記憶を消したのか。転生したものには珍しい」
「て…転生!?」
私は、思わず大声を上げた。それを嘲笑うかのように、ミトミルはこう続けた。
「しかし、ペルシャロよ、お前は思い出さなければならない。転生する前の記憶をな…」
「な…何故…?」
「お前が、培ってきた知識だ。その知識が無ければ、お前がここに転生した意味は何処にもなくなる。どうだ。できるか?」
「え…でも、何も…思い出せない…」
そこに、また風が吹く。髪の毛がビューッと風にさらわれて、微かにあの風に似ていた。
そこに、怒号ののような地響きを立て、何かが迫ってくる。
「な!なに!?」
真っ黒で大きな体。鋭い角が3本。20匹くらいの『魔物』の群れが、土煙を上げ、山からペルシャロを襲うべく…なのか、どんどんこちらに迫ってくる。
「ど、どうずれば…!?」
ペルシャロと呼ばれる私は、必死で考えた。
『あ!』
私は、ある記憶が頭の中で鮮明に蘇ってくるの分かった。それと同時に、私はある『占術』を口に出した。
「
咄嗟に、私は、そう叫んだ。
『ブヲヲヲヲヲォォォォ――!!!!』
もの凄い炎が『魔物』を包み、悲鳴をあげながら、一瞬でその姿を消した。
「ふぅ…。よかった。ペルシャロ。どうやら、この世界は救われるかも知れないな」
「私…わたくしは、転生したのですね。わたくしが信じ、憧れ、夢見続けて来た、この世界に…」
「そうだ。菫…と言ってもわかるか」
「えぇ。わたくしのかつての名は、確かに菫。しかし、もう関係ありはしませんん。わたくしはペルシャロ…そう言うのですね?ミトミル」
「ふふふ。そうだ。ペルシャロ。お前の名は、オーテコート・ペルシャロ。この世界では『占術者』だ。しかも、飛び切り優秀な、な…」
「そうでしょう。わたくしはあちらの世界で、こちらの世界のことを調べ、研究し、考え、学び、それに関するフィクションであっても、読み漁りましたからね。こちらの世界のことなら、むしろ、あちらの世界より詳しいかも知れません」
「よし。まずは、ペルシャロ、お前がともに闘う者を見つけに行くのだ。そのために天界から遣わされたのが、俺、ミトミルということなのだよ。ペルシャロ」
「そう…ですか…。しかし、わたくしも驚いているのすよ?ミトミル。だって、この世界が本当にあったなんて…。私の学んできた『魔術』が本当に使えるなんて…。唯々、あいつらを殺してやりたくて、覚えた『占術』が、こんな風に使える日が来るなんて…」
菫…イヤ、ペルシャロは、思わずその涙を隠した。
「ペルシャロ、お前はあの世界では確かに弱く、闘うことをしなかった。それが本当は一番よくなかった、とお前は気付いているか?」
「…闘う…ことをしなかった…?」
(そうだ…私は、いつだって妄想の中でしか闘わなかった。どんなことをされても、どんな罵声を浴びせられても、やり返すことも、言い返すことも、誰かに助けを求めることさえしなかった…)
「ペルシャロ、闘うのだ。この世界で、お前は素晴らしい『占術師』になれるに違いない」
「ミトミル…」
「泣くな!ペルシャロ!お前はこれからともに闘う者に出逢い、そして、最強の占術師となり、『魔界』を滅ぼすのだ!」
「はい!ミトミル!わたくしはこの世界で闘います!最強の占術師として!!」
こうして、菫…イヤ、ペルシャロと、ミトミルの旅が始まった。
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