わたくしはこの世界ではものすごい賢者だった!!

第1話 こんな日々に終わりが来るなんて…

「うっっぎゃーーーー!!」


「うるっさー…こんなアイロンくらいで騒ぐなよ」


ヘアアイロンを腕にジュ~っと焼き付けられ、私はとんでもない悲鳴をあげる。しかし、そこに佇む5人はへらへら笑っていた。


その場所は、高校の放課後の体育倉庫。窓には黒いカーテンが閉められ、分厚い扉で隔てられたこの密室では、この悲鳴は誰にも届かない。


私、岩瀬菫いわせすみれ(16歳)は、小さな頃からいじめられっ子だった。体中、切り傷、青たん、打撲痕、火傷、私の体には、無数に傷跡が残されていた。それが、どうしてなのか…。思い当たる節…はない。皆無だ。いけないのは私じゃない。こんなの卑劣だ。こんなやつら、嫌悪と憎悪しか感じない。人間として恥ずかしくないのか…!私の怒りはいつも頂点だ。下がることは無い。なぜなら…。


いつもいつも、私はのだ。で。


(こいつら…倒すなら、だな。いや…か)


私は、小さな頃から本ばかり読み漁っていた。そのどれもが、『魔術』に関する物だった。私は、『魔女』になりたかった。なぜなら、最初に言った通り、ずっと、ずっと、いじめられてきたからだ。『魔法』『魔術』は絶対存在する。そして、いつか、自分が『魔力』を得た時には、いじめて来た相手をその『占術』で“瞬殺”してやるのだ。


そう思うと、私は、ドキドキ出来たし、ワクワク出来た。【いじめられてる人生】とは思えないほど、そんな生活を、私はと歩んでいくことが出来たのだ。


そんな、ある日のこと、菫はに洒落にならないいじめに遭わせられた。


放課後、まだ緑が残る校庭の桜の木を愛でながら、菫は帰路に着こうとしていた。幼い頃からずっと丁寧に手入れをしてきた、黒く、長い艶めいている髪の毛。その髪の毛が風になびいた。分厚いメガネに隠された美貌に含まれる瞳が、校門を出ようとした時、その者を捉える。その者は、“ブロロロロロロロ…ッ”とマシンガンのような音を立てて迫ってきた。大型のトラックだった。私は、当たり前に校門の出口で両足を揃え、そのトラックが通り過ぎるのを待った。後ろからくる5人に気付きもせずに…。5人は、ひっそりと抜き足差し足で私の背後に迫っていた。それと同時に、トラックも目前に迫る。


『ポン…ッ』


「あ…っ」          …!



その声は、大型トラックに呑まれ、消され、そして、その小さな体はズタズタになり、その道に転がった―――…。

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