第13話 アリウス家への来客
今日は水曜日。学園でみっちりと勉強したあと、帰宅しているところだ。
『人族の学校はやはり面白いな。遠見の魔法で全ての学年の授業を見ておるが、学年というもので分け、学びの段階に差を付けて基礎を固めていく。我の学校でも応用できそうな手法だ』
ルシアは先生目線で学園のいいところを学び取ろうとしているみたいだ。ルシアの世界の学校か。一度見てみたいな。
そんなことを考えたり、頭の中でルシアと話したりしているとあっという間に屋敷に着いた。
そう! 魔力の量が増えたから今までよりも速いスピードで楽々通学できるようになったんだ。片道90分だったのに、片道30分で走れるようになってた。頑張ればもっと速く通えると思う。
「ただいま帰りました」
扉を開けて屋敷に入ると、
「レンおかえり。帰ってくるのが随分と早いな」
なぜか返事をしてくれたのは、いつものように母上ではなく、仕事に行ってるはずの父上だった。
「父上、もう仕事から帰っておられたのですか?」
「そうなんだよ。いつものとおり王宮で仕事をしていたら、王よりアリウス家に来客があるゆえ、すぐに帰れと命じられてな」
「王様より直接指示があったのですか? どなたがお見えになるのでしょうか」
「それが分からんのだ。王にお聞きしたが、とにかく丁重にお迎えしろとしか言われないのでな。あと1時間ほどで約束の時間となる。レンもきれいな服装に着替えておけよ。母さんとリルはお迎えの準備をしているところだ」
「はい。分かりました」
自分の部屋に戻ると、すぐにドアがノックされる。
「レアンデル様! きれいなお召し物を準備してお待ちしておりました! すぐに着替えましょう!」
メイドのフランが服を抱えてやってきた。僕の帰りを待っていたんだろう。随分早く帰ってきたはずなのに、フランの準備は万端のようだ。
フランが準備した服に着替えさせられて、そのまま髪を整えられている。随分気合が入っているな。
「これで完璧です! どなたが来られても大丈夫! 自信をお持ちください!」
……僕に会いに来るわけじゃないだろうから、ここまでする必要は無いと思うけどさ。フランがすごく嬉しそうだからまあいいか。
そうしているうちに約束の時間を迎えた。ちょうどの時刻に玄関のチャイムが鳴らされる。
執事のセバスチャンが玄関を開けて、お客様を出迎える。
「どうぞ。お入りください。旦那様、お客様がお見えになられました」
玄関から入ってきたのは、長くて美しい赤い髪をなびかせ、透き通るような白い肌に、とてもグラマラスな体型をしたものすごい美女。年齢は30歳ぐらいかな。この人がお客様? 見たことが無い人だけど誰なんだろう?
すると、僕たちの一歩前にいた父上が大きな声で叫んだ。
「フレア様!! ようこそお越しくださいました! まさか王からお迎えするように言われたお相手がフレア様だとは夢にも思いませんでした。どうぞ、奥の部屋にご案内します」
「久しいなランバート。息災のようで安心したぞ」
父上が本当に驚いた様子で挨拶されると、自分で奥の部屋にお連れしていかれた。セバスやメイドたちが置き去り状態になってるよ……。
それにしても誰なんだろう? 父上がものすごく敬ったご様子だから、どこかの上位貴族か、もしかして他国の女王様とか?
僕たちも急いで奥にある応接室に行って、父上からフレア様に紹介していただいた。
「フレア様、こちらが妻のマリア、その隣が長男のレアンデル、その横におりますのが長女のリルフィーユでございます」
母上から順番にフレア様に挨拶をしていく。母上の様子を見る限り、母上も初めてお会いする方のようだ。続いて僕も挨拶をする。
「お初にお目にかかります。レアンデルと申します。よろしくお願いいたします」
「レアンデル、調子が良いようだな」
「はい? あ、ありがとうございます……」
えっ? 調子が良いって何のこと? よく分からないままありがとうとか言っちゃった……。
フレア様からかけられた言葉に慌てて変な返しをしてしまったけど、フレア様は微笑んでる。失敗じゃないみたいで良かった。
続いてリルも挨拶を終え、全員がテーブルの席に座った。こちら側に家族の4名、向かい側の中央にフレア様が座っている。こうやってじっくり見ると、本当に信じられないくらいの美人だな。それでいて何か計り知れないものも感じる。
「それでフレア様自らが来られるとは、何があったのですか? こんなことは聞いたことがありませんが」
「ランバートに話があるのだ。私の分身体を置いて来ているから安心せよ」
「そうなのですか……分かりました。それで話とは一体何でしょうか?」
「レアンデルをしばらくの間、自由にさせてもらいたい」
えっ? 僕の話?
「レアンデルを自由に……ですか? 恐れ入りますが、もう少し分かりやすく教えていただけないでしょうか?」
「私が敬慕する古き友人が、そなたの息子であるレアンデルと旅に出たいと言っている。その旅は少しばかり時間がかかるであろうから、父親であるお主に許可をもらいにきたのだ。ライアンには話を通してあるゆえ安心するがよい。どうだ?」
「ちょっと待ってください!」
僕は思わず口を挟んでしまった。でもどうしても聞きたいことがある。
「父上、フレア様とはどなたなのでしょうか?」
「おおっ、そうか。お前たちに説明をしていなかったな。フレア様とは我が国を加護し、我が国の民が敬愛して止まない火龍様だ」
母上もリルもメイドのみんなもビックリしている。流石、セバスは冷静だな。
「やっぱりそうなのですね! 火龍様は女性だったのですか。僕はてっきり男性だとばかり――」
「フフッ。レアンデルよ。龍族にも男もいれば女もいる。龍の姿のときは人族には男か女か分からんのだな。まあよい。それでランバートの答えも聞いておらぬが、お主の答えは決まっているのか?」
「僕の答えですか。……そうですね」
僕は父上の方を向いて、自分の気持ちを素直に伝えることにした。
「父上! 僕が旅をすることをお許しいただけないでしょうか。お願いいたします」
父上が突然の展開にビックリした様子で僕に尋ねる。
「レアンデル! お前、もしかして火龍様と会ったことがあるのか? そして旅をしたいと言っているが、何の旅をしたいと言っているのだ? 教えてくれないか?」
『それについては我が答えよう』
ルシアの声が部屋の中に響くと、目の前が光ったと同時に、美しい金髪と金色の肌を持った美青年であるルシアがみんなの前に姿を現したのだった。
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