第2話
「レン様。先程、侵入者有りとの報告が入りました。」
黒い全身鎧の騎士が、天蓋付きのベッドに向かい、片膝を突いてそう告げると、天蓋に透けて映った人影が上体を起こした。
「侵入者?またドラゴンか?」
「いえ、どうやらニンゲンの集団のようです。」
「へぇー、ニンゲンかぁ……はぁ!?人間!?」
勢いよく天蓋をめくり、一糸纏わぬ姿で飛び出してきたのは、黒髪黒眼の青年だった。
青年は膝をついたまま微動だにしない黒騎士の肩に掴みかかり、ぐわっと眼を大きく見開いた。
「ほっ、本当か!?本当に人間か!?」
「はっ。レン様から聞き及んでおります特徴とよく似た者達との報告が届いておりますので、おそらく間違い無いかと。」
青年——レンは、興奮した自身を落ち着ける為に、目を閉じて一つ深呼吸した。
「……わかった。一度、そいつらを見に行く。レイナイト、付いて来い。【
いつの間にか服を着てフード付きローブを羽織っていたレンは、自ら生み出した漆黒の渦の中へと入って行く。
レイナイトと呼ばれた黒騎士も立ち上がり、レンに続いて渦の中へと消えていった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「団長ー!簡易拠点の設営が完了しやしたぜー!」
船内に設けられた自室で報告書を纏めていたミカルドは、疲れた目を軽く解しながら部屋を出た。
甲板から海岸を見ると、テントや炊事場が整えられており、既に食事の準備が始まっている。
「簡易拠点の設営しか指示してないんですけどねぇ……」
ミカルドは漏れそうになる溜息を飲み込み船を降りると、装備のメンテナンスを行っている一団の方へと歩み寄った。
「皆さんは周囲の探索と安全の確保をお願いしますねぇ。一先ずはゴブリンの集落の発見と、もし近場でしたら殲滅を。」
ミカルドの一番近くにいた無精髭の生えた男は一つ頷き、他の面々へと視線を向けた。
「うしっ、みんな行くぞー。怪我すんじゃねぇぞー。」
男がそう言うと、男達は各々の武器を携え、森の中へと入っていった。
なんとも締まりの無い出発だが、彼等は冒険者と呼ばれる対魔物におけるプロ集団であり、ミカルド自身が冒険者ギルドに依頼を出し、自らの目で選んだ腕利き達である。
中でもリーダーを務める無精髭の男——ランザは、普段から研究に使う素材の採取などで個人的な付き合いのある冒険者であり、やる気の感じられない言動は兎も角、信用できる人物である。
それに、E〜Sまである冒険者ランクにおいて上から二番目のAランク冒険者であり、その腕も確かである。
ランザ達冒険者組を見送ったミカルドは、ポケットから取り出した魔素測定器に視線を落とした。
「やはり、魔素濃度が異様に高いですねぇ……。ここが既に
そうひとりごちたミカルドは、既に姿の見えなくなったランザ達が入っていった森の方へと視線を向けた。
その眼差しには僅かに心配の色が見て取れた。
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