異世界旅行者の転生記

第６章

さて、意気揚々と草原の中を移動している翼、地図通りに行くとこのままコンパスの通り南下すれば街につくはず。

地図によると草原は大きく街まで何日かかるのか不明なので食料も10日分は用意してアイテムボックスに入れてある。

そして移動中の翼は幸運なことにまだ魔物や野生生物には出くわしていない。それでも念のためバリアを円形に半径3mに張り巡らせて自分の周囲30cmには強固なバリアを張って移動している。

この1か月で翼は常にバリアを張って移動できるように、時間が許す限りバリアを薄く張ったり範囲を変えたり強度を変えたりの練習をしてきた。

それに加えてご先祖様から継承した薙刀も欠かさず鍛錬してきたので、体の動かし方や視線の向け方など感覚ではわかるようになってきているので無理をしなければ何があっても街にはつけるはずである・・。

それでもまだ１か月分の鍛錬しかしていないのでいざという時にどうなるかは不安であるということで、薙刀と電撃ラケットをアイテムボックスを使ってすぐに持ち変えられる練習も繰り返し、とどめにはならなくとも隙を作れるようにと無詠唱で素早く魔法が出せる練習もしていた。

何が出てくるのか本当にわからないし使える技は出来るだけ素早く繰り出せるようにしなきゃなぁ～。練習と本番は違うと思うし・・。

これだけ練習をしてバリアを張って、いざという時に身体が強張らないようになるべく力まないよう普通の歩幅で歩いている徹底ぶりだが、やはりちょっと不安はある。

狼とか出たりしないよね・・。できればスライムがいいな・・。

そんな都合の良いことを考えながら、大体10mくらいで立ち止まって耳を澄ましてみたり、周囲に鑑定をかけたりしてゆっくりと確実に歩んでいく。

そう、転移前の年齢もあるだろうが、翼は序盤から素材集めやスキル上げ等をじっくりとしながら進めるタイプなのである。

意外だけど草原にも薬草とかキノコがあるのね～。

芦とかススキの様に背の高い草が多いせいか目視では見つけづらいが、鑑定をかけてみるとちょこちょこ薬草を見つけることができた。

まだ魔物の骨や角とかは見つかっていないから（勿論人間のも・・）ここら辺は大丈夫そうね、後もう少し歩いたらお昼にしましょうかね。

少し開けた場所があったので翼は昼食をとることにした。

ふぅ。緊張したけどまだ何にも会わないわね・・。翼は歩く途中に見つけた木から採ったすっぱいりんごを食べている。

このすっぱいりんごは魔力回復300で嬉しいわ♪　味はすっぱいけど（泣）果物が久しぶりだからそれでも美味しい！

幸運（食料）が働いたのか、たわわに実っていたすっぱいりんごは20個程収穫できている。

後は乾パンとジャーキーでいいわね、まだお昼だし火を起こすのは就寝場所を決めてからと簡単にお昼ご飯を終えてまた歩き出す。

お昼休憩を挟んで1時間程したくらいだろうか、翼のバリアに初めて何かがぶつかった。

こ・・これは・・・

ぽよん　ぽよん　ぽよん

スライムちゃんだ・・・。

なんと本当に初めての生物？魔物？はスライムであった。

うーん・・外側の薄いバリアで入ってこれないとなると別に気にしなくて良い気がするんだけど・・。

念のため１０分くらい様子を見守っていたが、スライムはバリアにぶつかるだけで翼に接触は出来ていない。

どうしようかな・・。確か真ん中に見える核を砕くと消滅するっていうけど・・試してみようかしら・・でも、スライムって森の掃除屋さんともいうし・・食べもしない攻撃も当たらないのに無下に殺すのも何だかねぇ・・。

翼は一生懸命ぽよんぽよんしているスライムをバリア越しに観察しながら迷っている。

取り合えず・・

気にせず歩くことにした。

まぁ・・まだ１匹だけだし・・あんまり数が多くならないのであれば・・いいかなぁ～。

そうして翼は

次の日の朝になるまでスライムをほっておいた。

ぽよん　ぽよん　ぽよん

まだいるのかー。あきらめないね。

仕方がない・・。

翼は日課の柔軟と瞑想をして薙刀を構えた。

精神を集中して目を開き、一直線にスライムの核を突く！

パシャン！！！

流石にスライムは薙刀で１発で倒せた。正し核は粉々になってしまった・・。

あちゃー確か小説とかではスライムの魔石だって少しのお金になったはず・・失敗したかな？？

こうして翼の初魔物退治はあっけなく終了したのであった。

仕方ない、これも鍛錬だと思って、今日は杖じゃなくて薙刀を持って移動しましょう。

昨日収穫したすっぱいリンゴを食べて翼はまた歩き始める。

そうすると今日はスライムが1時間に7匹くらいは現れるようになった。

ふぅ～動き回るスライムの小さな核を１発で仕留めるのは結構練習になるわね・・。

こうしてお昼ご飯になるまでに既に40匹以上のスライムを倒していった。

流石にスライムでレベルは上がらないようでステータスには然程変化がないが、これぞ王道！という最初のスライム倒しに翼は飽きることはなかった。

ふぅ、やっぱり草原は広かったのね。1日半歩いたけど街につかないわ・・。

翼は見つけた薬草。ヨモモギをアイテムボックスに仕舞いながらコンパスを見つめる。

磁場が狂っていなければ方向はこれであっていると思うんだけど大丈夫よね・・少し心配になりながらあたりを見回すと、遠くの方で何かがふよふよ浮いているのが見えた。

あれは・・。

鑑定！！

モスン：吸血する魔物　弱いが刺されると夜眠れなくなるかゆみが起こる。

子猫くらいの大きさもある大きな蚊・・・じゃない・・

眠れない痒みって・・いくら若くても刺されてぼこぼこになった顔で街にいくなんてありえない・・これは見過ごせないわ！

そう、こんな時にピッタリのアレを出した翼！

身体にぴったりと防弾ガラス並みのバリアを張り巡らした。

いざ！！！！

やぁ！　とぉ！　おりゃあああああああ！！！！！！！！！

パシーン！！　バチコーン！！！　　ベチベチーーーーン！！！

青白い雷をバチバチさせながら電撃ラケットで憎き蚊を蹴散らしす！！！

翼の通った後には粉砕された蚊がむなしく散っている！！！！

なんか・・これちょっと楽しいかも！！！

翼が危ない悦に入りかけている！！！　

こうして、総勢200匹程倒したくらいでふと気づいたら蚊は見えなくなっていた・・。

ふぅ・・これくらいにしておいてあげるわ・・。

流石に息が切れた翼であったが、モスンの核を鑑定すると、魔石（小）少しのお金になると出ていたのでしっかり回収して遅めの昼食にするのであった。

アイテムボックスにあったジャーキーも少なくなってきたし・・そろそろお肉の補充も考えないといけないわね・・。

こういう時の定番は角ウサギとかなんだろうけどどうかしら・・出てくるのかな？

そんなことを思いながら歩みを再開していく翼。

途中でまたスライムが何匹か出てきたけれど、薙刀を1発で核に当てる訓練！としてまた30匹程倒しただけで夜を迎えた。

ここは魔物がいるみたいだから無理はできないとささっとご飯をすませて、お湯を沸かして身体を綺麗にしたらバリアを気持ち強固に張ってすぐに就寝。

今日もレベルが上がらなかったなぁ・・まぁ焦っても仕方ない。身体を休めるのが先！

こうして翼は早々に意識を手放したのであった。

次の日の朝

いつもの鍛錬をしっかり練習して翼は考える。

バリアがあるけれど、街につくまでにどうなるかわからないからせめて清潔さはもう少しどうにかしたいわね・・。

お風呂やシャワーが宿にあるとは限らないし・・。

こういう時は魔法でクリーンをすれば良いと小説に書いてあった気がするけれど、クリーンってどんな魔法なのかしら・・

うーん。思いつくのは洗剤のＣＭでよく見る汚れを分解する方法だけど・・

万が一、傷ができた時なんかはクリーンで人の体に分解をかけるのは違うかもしれない。

それだと殺菌・・ってなるけれど、人体には必要な菌もあるし判断が難しいわね・・。

朝ごはんを食べ終えた翼は歩きながら考えている。

クリーン・・消毒・・・魔法・・想像・・・

あっ！そうだわ！！！

消毒はまだ使えそうにないけれど、汚れを分解する　→水で流す。でいいんじゃないかしら・・。

思いついた翼は、ＣＭで見た汚れの分解をイメージして溜めていた洗濯物をバケツにいれて水魔法でぐるぐる回す！

そこに付着している汚れを浮かせて分解するようにイメージしながら魔力を込めていく・・。

汚れ・・浮かす・・・分解・・汚れ・・浮かす・・分解・・

するとバケツの中の水が茶色く濁ってきた！よし、これを分解するように！！！むむむむむ

茶色の水と洗濯物をぐるぐるしながら１０分、ようやく水が一瞬光ったかと思うと、最初の無色透明な水にもどっていた！！！

できたわ！良かった・・・

翼の執念でやっと綺麗になった洗濯物を今度は乾燥機の要領で風魔法を温風にして綿密に操作しながら空中でぐるぐる回していく。

くっ・・ここで間違えれば私の下着は知らぬところへぽいーっと飛ばされてしまう！！

集中よ！集中！

一年中休みなく洗濯機を回してきた翼！洗濯機と乾燥機と私は友達！！とよくわからないことを考えて温かい竜巻（乾燥機）を根性で終わらせた。

できた（喜）これで毎日洗濯ができるわ！

そう、歩きながらバリアを張って下着をぐるぐると目の前で回している変なおばちゃ・・おねーさんのことを不審に思ったのか、この日夜まで魔物は翼に近づかなったのである。

夜ごはんを食べ終えて、乾燥機でコツを掴んだのか？今度は温かいお湯をイメージした水球を1mくらいの大きさで出すことに成功した！

よし、じゃあこれに顔だけ出して入ってみましょう（喜）

ちょっとぬるめだが、人の気配がないことをいいことに水球に入ってみた翼。

翼が入ると水球の形をイメージするのは難しいのであるが、なるべく崩さないように慎重に魔力を操作して洗濯をした時と同じように汚れを浮かして分解！を繰り返す。

丁度３度ほど試した結果、日本でお風呂を終えた時の様にすっきりとしてきたので今度は頭だけつっこんで同じことを繰り返す。

流石に髪の毛は汚れがたまっていたのか、５度ほど繰り返してやっとすっきりした。

勿論息継ぎをしながら・・。

ふぁーーやっぱりさっぱりするって大切ね！！

本当はかっこよくクリーン1発で終わらせたいけれど、きっとこれも練習しないと無理だろうから毎日やっていくしかないわね。

こうして、久しぶりに気持ちよい身体になった翼。まだ街は見えてこないけれど異世界にきてできることが増えてご満悦のまま就寝したのであった。