第3章



異世界3日目の早朝




本日も晴天なり。




薄っすらと朝日が昇り始めた草原。テントの前で座禅を組んでのんびりと瞑想に浸っている翼。


体内の魔力をゆっくりと循環させ、下から順番に各チャクラを活性化させるように魔力を込めて掌に水球を浮かべる。同時に周りの空間を詳細に認識しながら気圧を操り扇風機(中)の風を送り出して昨日作った畑の畝をもう一度かき混ぜる様に動かしながら畝を作り直す。


端からみると怪しいことこの上ない様相をさせているが妖怪ではない翼の真面目な魔法練習である。




ふぅー。だいぶ魔法とやらに慣れてきたわね。約1時間程、妖怪のような動きを見せる魔法を練習した後、みそ汁をゆっくりとすすっている。


今日はせっかくの畑が出来たことだし、なんとか種を植えて一人でも農業が出来るようにしてみたいんだけどなぁ・・。


アイテムボックスを順番に眺めながら翼は本日の予定を組んでいく。


あっ!アイテムボックス欄を見ていると、種はなかったがなんと大豆×999のアイコンと納豆10パックが見つかったではないか。


これは・・・もしかして!!!翼はさっそく鍋を洗い流すと水を沸かして大豆を入れて煮ていく。






これがあればもしかしたら納豆を増やせるかもしれない!!






そう、元気の源。納豆を作ろうと決めた翼。さっそくg先生にお願いして納豆の作り方を調べる。




ふむふむ・・・納豆作りには藁が必要と・・・ここにあるのは芦だけだわ・・だけど私は諦めない!!






異世界序盤に作成するのはパンであるとかお米であるとか色々と突っ込みたい所ではあるが、翼は見つけた納豆を無下にはしたくない。


昨日集めておいた芦の山に向かうと少し枯れて茶色くなっている。でもまだまだね、もっと乾燥させましょう!


こうして翼は芦の山に向かって乾燥!と念じながら熱心に芦から水分が抜けていくよう魔力で綿密に芦の内部を見つめていく。




あるわ・・そうよここよ・・そうして用意した大豆が煮えてしまう頃には枯れて綺麗に茶色くなった芦の山ができあがっていた。




納豆菌と大豆は用意できるとして、問題は藁ではないこの芦もどき・・を鑑定してみると、その名の通り芦と名がついて特に毒なんかはついていないようだったので、どうにか藁にみたてるように束にして上と下を結んでそれらしいものを作ってみる。


後は寝かせる場所ね、40度くらいが丁度良いとg先生は教えてくれたけど、ちょっとそれで大丈夫なのか不安になってしまう。


でも千里の道は1歩からとも言うではないかと、昨日作った畝の一角を崩し、そこに穴を開けて乾燥させた芦を綺麗に寝かせていく。


次に、作った芦束に煮た大豆ともっていた納豆を丁寧に混ぜたものを詰めて穴に設置してその上にもう一度芦をかぶせていく。




どうか上手くいきますように!!


祈る翼。願うは納豆の作成。幸運(食料)を得ている翼であったが果たして成功するのであろうか・・。




ふぅ、とりあえず納豆は3日くらい後に様子を見てみることにしてと。今日は探索に出る前の自衛手段でも練習しておきましょう!




そう呟くと翼はどんな魔法が良いのかそれともアイテムボックスにある薙刀を使うのかを考察していくのであった。




確かゲームの序盤でいけば木の棒だったと思うんだけどね~


さすがに私の力がこの世界のどれくらいに設定されているのかもわからない状況でいきなり武器を振り回すのも意味がないと思うの・・。


だとするとやっぱり魔法??でも素早さはそんなにないと思うからまずは体の強化からしていきましょう・・。




えーっとまずは身体強化?バリア?ロック?小説やゲームの世界を思い出しながら瞑想中の翼は身体に魔力を循環させつつ身体から薄皮一枚隔てたところへバリアのようなものを意識して作成していく。


うーん、強度はどれくらいが良いかしら?魔力は沢山あるようだけれど、バリアの作り方なんてわからないわ・・・。そうだ!これは昔見た映画のように近くにきた銃弾がゆっくりとスピードを落としてイナバウアーの要領でかわせる様に空間を歪めてみたらどうかしら!


魔法は想像とはいえ、翼の想像力でできるバリアとは・・。


身体周辺の空間をじっくりと認識し、時間の流れを遅くなるように精神を統一しながら魔力を操作していく。そう、今ここにある空間は同じであって同じではないのよ・・時の流れの速さが違うの・・そう・・サングラスをかけたあの方のように・・華麗に避けてみせるんだから・・。


努力の方向が怪しくなってきた翼であったが、なんとか身体周辺の次元を歪めることに成功している!


すぐそばに落ちていた石を拾い、力の限り出来上がった空間へ投げ入れてみると、なんと石は翼が歪めた空間まで到達した瞬間に亀の様にゆっくりと移動していくようになったのである。




やっぱり何事も挑戦みたいね!でもこれだと薙刀を振り回すことに支障がでそうだわ・・。そう思った翼は、アイテムボックスから薙刀を取り出し、自分から薙刀の間合いである1メートル半程避けてバリアを展開するのであった。




いいわいいわ・・この調子ね!!


翼はそのまま薙刀を相手の喉元に目掛けて素早く突き出せるように、上段、中段、下段とえいやえいやと素早く突きを繰り出す練習をしていくのであった。




難しいことなんて私にはできない!でもそうね、今日はこのままバリアを展開させながら仮想の敵に突きが決まるように素振りを1000回しましょう!!




こうして異世界3日目はへとへとになるまで飽きることなく薙刀を振り回して終了したのであった。


あーっ今日も良い一日でした!日課の神様への感謝も忘れることなく身体を綺麗に拭いてご飯を食べたらステータスの確認っと




名前:エン・ツバサ 


性別・種族:女・人間


レベル:19




生命力:3000(回復速度毎分10)


魔力 :1001000(回復速度毎秒100)


知力 :600(社会人歴30超)(母親歴30年超)(グーグルンの恩恵)


精神力:10000(オバタリアン上)


力  :55


素早さ:35


幸運 :500


魔法熟練度:400(禅)(魔力操作)(水魔法)(時空間操作)(土魔法)(風魔法)


装備:地球の服(劣化防止復元有)(素早さ+30)(温度調節(微)


地球のアクセサリー指輪:シールド機能・火・水・土・風・雷・電磁波・放射能(50)


地球のアクセサリーネックレス:各種精神攻撃無効・各種毒攻撃無効




スキル:1(グーグルン先生)2(未入力)3(未入力)4(未入力)5(未入力)




ボーナススキル:【アントニオの加護】異世界言語(インストール済み)・アイテムボックス(中)・鑑定(極上)・隠蔽(極上)


【日本の神の施し】幸運(食料)




うーん、魔法系の上昇は効率が良いみたいだけどやっぱり力や素早さなんかは少しずつしかあがってないなぁ~。


もしここの草原を抜けて人里へ降りていくとすると野宿するのは魔法でどうにかなりそうではあるが、やはり魔物が心配である。




ステータスを見ながらアイテムボックスより地図を取り出して一番近い所にある街を見てみると【オットート街】という城壁に囲まれている街の絵が載っていた。


城壁があるということはやっぱりこの街の近くには魔物やもしかしたら山賊なんてのも出没しそうだわ、やっぱり街に行くにしても準備が出来ていない状況だと色々と恐ろしいからねぇ・・


せっかくの人生だもの。街に出て慣れたら世界中を見て回れる自由な旅人になりたい!その為には今できることをしっかりと準備するのが一番だわ。




どうしようかしら、このまま魔法だけでいけたら良いのだけれどやっぱり自衛くらいはしておきたいし・・でもそこまでの才能が・・あっ!


そこで考えついたのが未入力のスキル!翼は早速スキル画面に嬉しそうに入力していく。




スキル:1(グーグルン先生)2(遺伝子の記憶継承)3(未入力)4(未入力)5(未入力)




フフフフ・・もうすぐ暗くなろうかというテントの中で翼は不敵な笑みを浮かべている・・。


そうよ、私がだめでもご先祖様は無数にいるのよ!確か家の祖父の家系が地方の武士だったはず。それにもっともーっと昔、縄文時代なんかだと獣と戦った記憶だってあるかもしれないじゃない!




遺伝子にどれだけの記憶が残されているのかはわからないけれど、武術や戦闘術のように修練が必要なことはきっと役に立つはずよ。


なんともご都合主義なスキル・・でも翼は下手に剣術等をスキルとした所でそういった環境に育っていなければ意味がないと思っていたのだ。


だったらそういう時代を生きたご先祖様の経験や技術を継承できればとふかふかの絨毯に力を抜いて大の字に寝そべり、夢で逢えるように熱心に祈りながら眠りについたのである。






夜も更けて辺りが完全に暗闇に包まれた頃、あさっての方向にスキルを使い始めた翼のことを心底不憫に思ったのか一人の女性が翼の夢に現れた。




ーこれー ーもしそこなおなごよー




気づいたら昔の小さな山城の庭に翼は立っていた。




「あれ?ここは・・」




ー夢の中じゃ。お主が望んだであろうー




目の前にはあずき色の袴姿で薙刀を構えている女性が立っていた。




「もしかして・・ご先祖様でございましょうか?」




ーうむ、おぬしの要望に誰が行くかあの世で話し合ったのじゃがな・・わらわが一番適任であろうと・・・ー




「そうだったんですね!ありがとうございます(泣)ご先祖様・・私・・才能ないんです・・」




ーあ・・まぁそれは何となくわかっておるわ・・なれど・・おぬしも立派な子孫ではないか・・武の道は毎日の積み重ねじゃ・・ー




「はい。ご先祖様・・私の不得手は毎日の努力で精進してみせます。」




ーそうじゃ、良い心がけじゃ。今からおぬしにわらわの記憶を継承するでの、直ぐに上手くならなくても毎日続けていくこと・・それを忘れないようにな・・ー




そう言うとご先祖様は翼の頭に手を当てて温かい光になって翼の中へ入っていった。




ーわらわも父が戦で負けてあまり長生きできなんだでな、翼が自由に世界を回る姿を楽しみにしているからの・・負けるでないぞ・・ー


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