第2章


ふぁ~~。良く寝たわね~~~。




薄っすらと朝日が見え始めた早朝に目覚めた翼はのんきにあくびをしながらテントで柔軟体操をしていた。




あ~五十肩ないって素晴らしいわ~~。すっきりとした目覚めなんていつぶりかしら~ん。




ランランと鼻歌を歌いながら少しずつ身体をほぐしていくと・・ぐっーとお腹もすいてきた。






うんうん。まずは初めにお湯を沸かさないとね!


ここが異世界という事に全く危機感を持っていないおば・・もとい翼ちゃん。


リュックからコンロと鍋をもってくると昨日したように瞑想を始めて5分程で鍋の中に水をためていった。




さて、ではこのコンロというものを使おうと思うのだけれど、ガスがこの世界にあるのかはわからないけれど、それらしいものはついてないようだしいったいどうやって使うのかしら・・。




うんうん悩みながらふと、鑑定というスキルを持っていたことを思い出した翼はこのコンロに鑑定をかけてみることにする。




鑑定・・鑑定・・鑑定・・・時間の感覚がおばぁちゃんな翼はまたもやゆっくりと時間をかけてコンロを見つめ続けながら「鑑定」と念じてみる。




うーん・・直ぐには使用できないみたいだけどどうしましょう・・。あっ!


昨日試したチャクラ!確か頭の方にもチャクラがあったはず!




今度は頭にあるチャクラの位置を昨日と同じようにゆっくりと温めて解放するように意識していく・・。


10分程かけて頭のチャクラを意識していくと、脳が覚醒したように視界が広がる。




これだわ・・。




翼はその状態を意識しながらコンロを眺めて鑑定・・と念じてみると・・




コンロを視界に収めたままゆっくりと赤い字が浮かび上がる。






^^^^^^^^^^^^^^^


魔道具コンロ




魔石を嵌めて魔方陣を組んであるコンロ


魔石に魔力を注入すると、調理可能な火が出現する。


つまみを回すと火力の強弱も調節可能。




^^^^^^^^^^^^^^^


あらーこの世界も中世並みといいながら便利じゃない!!


キラキラと目を輝かせながら下の方に見えている赤色の魔石に魔力を注入するとコンロから火が出て水を温めていく。




便利ね~。翼はにこにこしながら沸いたお湯をアイテムボックスにあった調理セットに入っていたお玉ですくってコップに移す。




お茶っ葉がないのは残念だけれど白湯をゆっくりとフーフーしながら飲む翼。




あ~~~温まる~~~~。




お腹がすいているので、乾パン1つとジャーキーを食べていく。




今までであれば顎と歯が直ぐにがたがたして疲れていただろう硬さであったけれど、若返った翼はなんなくたべきっていく!




若さって素晴らしい!!!




朝から2度目の若さへの感謝を空に捧げながら(本当に手を合わせて拝んでいる)水魔力を駆使して鍋とコップを洗ってテントのそばにある岩の上で乾かすように置いておく。






あぁ、素晴らしきかな若い人生!!






翼が目覚めてから1時間。若い身体であることにこれだけ喜べるのは中年を過ぎた人生を送っていたからであろう。


にっこにっこしながら、もう一度絨毯へ転がってみた。






時間もたっぷりね!!空気もとてもおいしい!!身体も若い!!!




贅沢とは若さである!!






うつらうつらしながら行儀が悪いけれど誰にとがめられることもないので、リュックに足を乗っけて昨日もがんばった瞑想をする。




神様達に感謝ね・・ここでどれだけの間私が生きられるかわからないけれど、充分に楽しいのよ。ありがとうございます。






それはきっともう、とても遠くにいるであろう地球の神様と研修中の神様に向かって感謝を思う翼であった。




異世界人生、悔いなし!!(いや、早いって・・・と地球の方から突っ込みを入れる言葉を神々がしていたのはまた別の話)










そうやって陽が真上にきそうな時間までのんびりと瞑想や魔法について思いを巡らせてたりうとうとと眠ったりする翼であった。






ピーヒョロロロ




どこからかトンビのような鳴き声が聞こえて丁度うとうとと眠っていた翼は目を覚ます。




くわ~~~。のび~~。そろそろ起きようかしら。




午前中をのんびりと過ごした翼は、岩の上にあった鍋を持ってきて乾燥みそ汁(神様からのプレゼント)を入れて朝の様に湯を沸かせる。






ん~~。おみそしるはお大根に揚げだわ~~おいしい。やっぱりお味噌汁は偉大ね!






翼はゆっくりと神様がくださったお味噌汁を飲み干すと、食器類を水魔法で洗う。




そういえば、普段だったら乾燥機能がついた食洗器があったけれど、これも乾燥できるかしら?


翼は思いついた魔法を試してみることにした。




えーっと・・乾燥と言えば風魔法になるのかな??でも温風を当てる?それとも水分を飛ばす??どっちが良いかしら??


覚えたての魔法を試してみようとまずは温風がでるようにと風を意識して手を鍋にかざしてみる。




風よ~~風~~風風~~




魔力を手から出すイメージで風をだそうとするが出るのは魔力の塊のみ




うーん水魔法の時は分子を考えて~~




風はなんだったかしら??気圧の変化・・空気の重さね・・。






あっ!!!




そこでパッと手を下げて翼は思いついたことに声を上げる。




そうだ!!未入力の魔法よ!!




異世界の神様からもらった未入力の魔法。あそこへ今思いついた魔法を一つ登録できるか試してみることにした。






「ステータス!!」




昨日出したステータス画面が目前に開かれるとさっそく未入力であった場所へ手をかざして習得したい魔法を念じる。






~~~~~~~~ん~~~~~~~~~~






できた!!!!






名前:エン・ツバサ 


性別・種族:女・人間


レベル:19




生命力:3000(回復速度毎分10)


魔力 :1000000(回復速度毎秒100)


知力 :500(社会人歴30超)(母親歴30年超)


精神力:10000(オバタリアン並)


力  :50


素早さ:30


幸運 :500


魔法熟練度:130(禅)(魔力操作)(水魔法)(時空間操作)


装備:地球の服(劣化防止復元有)(素早さ+30)(温度調節(微)


地球のアクセサリー指輪:シールド機能・火・水・土・風・雷・電磁波・放射能(50)


地球のアクセサリーネックレス:各種精神攻撃無効・各種毒攻撃無効




スキル:1(グーグルン先生)2(未入力)3(未入力)4(未入力)5(未入力)




ボーナススキル:【アントニオの加護】異世界言語(インストール済み)・アイテムボックス(中)・鑑定(極上)・隠蔽(極上)


【日本の神の施し】幸運(食料)










そう、翼が求めたのは困った時のグーグルン先生である。鑑定があるのだから必要ないと思われるかもしれないが、やはり仕事の相棒として古くは95から愛用してきたノートパソコンを思い出したのである。


やっぱりね~~何でも自由に生活できるからと言って、知識を無限に覚えているわけじゃないからね!


本当なら神の叡智等にしておけば良いんだろうけど、それでは流石に万能過ぎてきっと生きていくことに飽きてしまうような気がする。


だったら今まで相棒だったノートパソコンが手元にあった方が便利であると翼は思ったのであった。




うんうん。良かった!私にはやっぱりこれよ!慣れ親しんだg先生スキルが習得できたことに満足しながら、空間把握の要領でパソコンを思い描いて魔力を手注ぐ。


すると、半透明の見慣れた画面が映し出されてその場で盆踊りのような小躍りをしてしまう翼。




あ~~やったぁ!!!よいっとなよいっとな!!






どこかの世界の神達ががくっとしそうな踊りで5分程盆踊りもどきから懐かしのパラパラまで踊りについやした翼はにっこにっこしながら空中にある画面を操作していく。




さーってとまずはさっき試していた風について調べましょうかね~~。




絨毯の上にまたもや寝そべりながら翼は検索バーに検索をかけていく。




風が起こる仕組みっと・・フムフムなるほど気圧の変化・・空気の重さと・・・。






翼は絨毯から起き上がりテントの前に座禅を組むと手を前に軽くかざして翼の周りの空間から空気の重さを操作するように魔力を流していく。


まずはじっくりと瞑想を深めて・・・掴めたらそこから空間を認識・・範囲は私から5M×5Mくらいでと・・


次に空気の重さを意識しながら魔力を掌に凝縮していく・・。空気圧・・気圧の変化・・台風・・・はデカすぎるから扇風機くらいでと・・




ゆっくりと魔力を練って20分程・・やっと手から圧縮された空気から押し出されるように風が扇風機(中)くらいの強さで出てくるようになった。






やったわ!!!






翼は嬉しそうに風をもうほとんど渇いている鍋にあてながらにこにこである。


魔法楽しいなぁ~~。どんな時も新しい事ができるようになるのはうれしいこと。若さに続き、水を得た魚の様に習得できていく魔法に感謝をしながら翼は鍋が乾ききるまで風を送ったのである。


そうして翼は風魔法を使用しながらステータスを眺めている。毎秒100回復となっているが、どうやらこの風魔法は50/秒となっている様で魔力量については問題なさそうである。


うんうん。扇風機の風であれば問題なさそうね、これが終わったら別の魔法も使用できるように挑戦してみましょう。




水・風ときたら次はなにかしら?火は今のところ魔道コンロがあるしここは草原で危なそうだから川が見つかったらそこで訓練するとして、小説で考えてみるとー・・土でいいかしら・・


確か食料はアイテムボックスに入っていたけれど・・いつまでも続くわけじゃないからねぇ・・ここの場所を直ぐに移動できるとも思わないし(案外、この場所を気に入っている翼はまだ出発地点から動いてもいない)土魔法で畑とかできたりしないかしら~??とのんきにアイディアを練っているのである。




よし!じゃあ今度は土魔法として畑の畝を作ってみましょう!


魔物がいる世界でも平和な草原であることを良いことに、悠長なことを思う翼はさっそく畑に作る畝を想像してみようとするが、周りには芦に似た草が生い茂っている為、まずは鎌がないかとアイテムボックスをあさっていくことにする。




うーん・・鎌はないわねぇ・・包丁とダガーと鉈みたいなのと薙刀かな?は入っているみたいだけど鎌がないわ(泣)しょうがないからこの鉈を使ってちょっとテントの周りの草刈りしましょう!


そうブツブツと独り言をいいながら翼は掌に鉈を取り出すイメージを思いうかべる。


するとスーッと鉈が現れる。少し振ってみるとたいした重さも感じられることなく草はザクザクと切れていく。


これは良い鉈ね!よっしゃ!気合入れて刈りますよ~!


翼はお気に入りのジャケットを脱いでアイテムボックスからタオル布を取り出し頭にほっかむりの要領で装着すると腰を屈めて庭くらいの広さまで鉈をふるっていく。


いや~ん、これよこれ!孫ちゃんのお芋ほりの時でもすぐに腰が痛くなって休憩していたけど若い身体の今ならいくらでも草刈りできるわよ!そうやってあっという間に刈り終えた芦もどきを一か所にまとめて綺麗に刈りつくされた庭を眺めてみる。


うんうん。こんなに早く草刈りできるとはなんと素晴らしい身体でしょうか(歓喜)


全盛期の頃だってここまで早くはできなかったはずだもの!神様に感謝ね。こうして草刈りが上手くできる身体にしてくれてありがとうと空に向かって拝む翼。




さて、草刈りは完了したから今度は残った根をどうにかしないとね。汚れた鎌と両手を水魔法で綺麗に洗い流してから翼はテント周りにできた庭を眺める。


このまま自力で引っこ抜いてもいいけど、せっかく魔法を覚えたんだもの!土魔法を使ってみよう。




こうして翼は地面に両手をついてまずはしっかりと畑になった空間を認識する。それからまだ残っている草の根の一つに集中して土の中にある根っこに意識をもっていく・・。


空間把握能力を始めに覚えたからであろう、翼は土の根っこまで魔力を巡らせることに成功する。よし、ここからゆっくりと土を柔らかくして・・根っこに巡らせた魔力をかき回すように動かしていくと少しずつそこにある土が動かされていく。


よーし、これでちょっと根っこがグラグラしてきたわね。でもこれだとただ根っこを動かしているだけだわ・・・土そのものを感じないと!!




根が真面目な翼は土の中をもっと細分化して認識しようとする・・まず土とは・・教えてg先生!・・この状態から先生に祈る翼・・すると頭の中に言葉が浮かんでくる。強い願いに使い慣れたノートパソコンちゃんが答えてくれたのだ!


土壌には・・ケイ素、アルミニウム、鉄、カルシウム、カリウム、ナトリウム、マグネシウムの順で多く含まれ、これらが酸素と結合した形で存在し、無機成分全体の99%を占める。その他マンガン、リン、硫黄、チタンを含めて土壌の主成分元素と・・。


ありがとうございます!g先生。実はアイテムボックスにはこの世界の初級魔法本が入っているのだが・・翼はそこに全く気付いていない・・。でもなんとかなっている・・。詠唱?魔方陣?そんなことに慣れていない翼!それこそ普通にこの世界の魔法使いと言われる人々より綿密に魔力と知力をフル活用しているのであった・・。


よし・・きっとこれがケイ素・・これがアルミニウム・・鉄・・そしてこれは魔力の元・・小説で言うところの魔素かしら・・?と次々に畑の土の成分を認識していく。すると最後まで詳細に認識したのが功を奏したのだろう土が翼の魔力に反応し始めた。


出来たわ!そうこのまま・・根の周りを私の魔力で押し上げて・・根がグラグラと揺れていく!そうして5分程うんうん魔力を巡らせていた翼・・ついに根がポンっと綺麗に抜けていったのである。


やったわ!!土魔法で根っこが抜けたわーーーー!!!とったどーーーー!!!




お孫ちゃんとのお芋堀りで、でっかい薩摩芋を掘り当てた時を思い出して薄っすらと涙を堪えて翼は魔法で掘り起こした根っこを隅に置く。


こういて根っこを一つずつ抜いていきながら真面目社会人であった翼はステータス画面を確認する。何事も一つずつ丁寧に検証していくことが肝心ね!労力とコストはきちんと把握しておかないとね!


根っこを1つ抜く毎に50程の魔力を使用しているがまだまだ回復の方が早い!


神様がくれたこの身体は本当に便利ね!と想定200程あった根っこを全部抜き終えた翼!満足がいったようにうんうん頷いて畑の前に立っている。


よし、じゃあここに5列程の畝を作っていこう!一度掴んだ土魔法の操作でゆっくりと空気を含ませてかき混ぜるように土を動かしながら畝を作成する。


もこもこもこと焦ることなく丁寧に作成された畝が1時間程かけて5つ出来上がっていた。




さてと、これでなんとか土魔法の感覚も掴めたわね・・。畝が出来たけれどまだ植えれる種はもっていないようだし、明日はどこかで種を採取できるようにちょっとは動いてみようかしら?


でもまだ身を守る術がないし・・どうしようかしらね~・・と汚れた服を脱いで水魔法とコンロで沸かしたお湯を使って布で身体を拭いていく。


髪の毛も洗いたいけれど・・どうせ人に会うこともまだないであろうと地図に載っていた広い草原を思い出して翼は水を手の先から出して手櫛でマッサージ洗髪をしていく。


昨日から来ていた服はアイテムボックスに入っていたバケツにいれて水魔法の練習として洗濯機のように渦を描くように水流を起こして側に1本だけ生えていた木の枝にかけておく。


まぁ、私には心強いg先生がいるからね!その内自作で石鹸を作って見せるわ!人に会う機会があったらだけど(苦笑)と夕日に染まった草原で手早く乾パンとジャーキーを食してアイテムボックスに入っていた替えの下着にひざ掛け毛布にくるまってふかふか絨毯に寝転んだのであった。




今日も魔法が少しずつ使える様になったし、庭には小さいけれど畑が出来た。もうすぐ還暦になりそうだった私に新しいことがどんどん増えていってとても充実しています。ありがとうね、神様達。


寝る前に感謝を忘れずにして翼はあっという間に寝息をたてていたのである。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る